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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第15章 内政

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日曜短文 オヤマ派遣隊報告会 10 最終日

 もう大方のことは見て回れた。全体を個人個人で歩き回る日とした。最終日である。

 集合時刻は、12時前(九ツ)にめしやに集合。


 朝から狭いオヤマの町中を歩き回る。

 どうも滞在中には感じない異様な雰囲気が垂れ込める。


 噂話をしている人に尋ねた。


  派遣団「いかがしました?」

  噂好き「いやね。ホマレダ様が捕まったというのさ」

  派遣団「なぜ。なにがあったのです」

  噂好き「いやそこまではわからないんだけどね。昨日、馬で道場に着けて慌ただしくしてたってうちの子が言うんだ。手習道場に通ってるからさ。そしたら、今日になって捕まったと言うんだよ。ホントかどうかわからないけどね」


 なにがあったら捕まるようなことがあるのだろうか。派遣団たちは考える。何度も一緒に酒を酌み交わした関係。とてもそのようなことは考えられず。信じられない気持ちで気づくとめしやの前で集まっていた。


 なにやら怒号どごうが聞こえる。これは異常な事態だ。喧嘩なのか火事なのか。

 自然発生した一揆である。考えることは皆同じ。一人二人と集まると一揆を起こして訴えよう。


 思い思いの武器となりそうなものを片手に行進。

 進んでいくと徐々に人が増えていく。

 めしやの前を通る頃には、一揆に参加する民が集団となる。


  派遣団「店主。これは」

  店主「ああ。皆顔に見覚えがあるな。お。おう!サクベエ。どうした?」

  サクベエ「どうしたもあるか。我らのホマレダ様をとらえた不埒ふらちな者がいる。だが、お殿様はなにもしてくれねえ。見殺しにする気なのか。見殺しにするなら刺し違えてでも」

  店主「気持ちはわかるが、見殺しにするようなお方じゃないだろ。やめとけ。一族皆殺しになるぞ」

  サクベエ「そんなのは承知の上だ。ホマレダ様のお陰で我らの生活がいくらか良くなった。恩を返すのは今こそなのだ!」


 店主の引き止める言葉も聞かず行進に戻り城へと向かう。


  派遣団「なんと。命に換えてでも救いたいとは」

  店主「私だって同じ気持ちですよ。ですが、ヤマダ様がそのような御仁ではないことは知ってます。このオヤマにはなくてはならないお方を見殺しにするわけがないでしょう。無事戻ってくることを願います」


 派遣団が店を出ようとすると店主に引き止められ


  店主「巻き込まれては困ります。サッテに無事に戻ってもらわねば。ですのでしばらくここで。二階で見届けてはいかがでしょう。上は広いのでごゆっくりと」


 この日のヘイロクが営む雑炊売りは、城の近くでは販売しないこととした。一揆と城兵らによる鎮圧に巻き込まれてはいけないとして。ヘイロクはシノが率いる未亡人たちの雑炊売りの販売位置を変更するように手配。売上は見込まれないが、待ってる人はいるだろうと開店準備。


 程なくして、一揆は鎮圧というか話し合いで終結した。

 ヤマダ率いるオヤマの武士立ちと共に一揆勢も横に並び歩く。

 その様子は、二階からよく見える。


  店主「派遣団の皆様。もう安心ですのであの者たちのあとを追いかけられてはいかがですか?」


 準備して降りる。上から見るよりも下から見るとよく分かる。

 ヤマダたちと一揆勢は武器を持たずに談笑しながら歩む姿。


 一件落着


 だが、あの者たちはどこへ向かっているのか。気になった派遣団は街道方面に歩む者たちを追った。


 街道沿いにある宿の反対側にある小さな舞台と広場。


  ヤマダ「皆に伝える。ホマレダツネタロウは、クリハシの関所にて囚えられ牢に入れられた。このことは昨夜までには伝わっている。おそらく今頃エドのホンダマサズミ公にも伝わっている頃だろう。今日明日では解決しないかも知れないが、必ず助けに動く。我らに出来ることは無い。すまない。だが、ホンダマサズミ公を信用し待つことしか出来ない。ここはひとつ心ひとつにし、信じて待とうではないか!」


  クニアキ「我が殿への心配のあまり一揆という形で我らに意見を申し立てられたこの者たちに罪を言い渡す!!」


  ヤマダ「ホマレダ様は捕らえられたが、乱暴を加えられることは無いから安心せよ。また、救出に全力を上げている。心配する必要はない。いつも通りオヤマのために働いて欲しい」


  ヤマダ「この言葉を一揆を企てた者たちはオヤマのひとりひとりに言い伝えよ。誰一人漏らすことなくだ。いいな。それがそなたたちの今できることだ。わかったら今直ぐ伝えまわれ!」


 この裁定に誰一人文句を言わず喜び、一揆に加わってない者たちまでもが言い伝えて回った。


 それらの様子を見た派遣団たちは


  乾物屋「いい町だな。活気のある町な上に人に優しい町だ」

  宿屋手代「ほんとうに。我らが共に酒を酌み交わしたお方はとても民に愛されてたのですね」

  両替商「オヤマの民だけでなくここに来た者たちまでもが集まり喜ぶ。面白いですね」

  米問屋「それだからこの町は活気が絶えないのでしょう。我らもこうありたい」


 思い思いに感慨深い思いを胸にし、オヤマを去るのであった。


一部本編とリンクできました。他者からの目線でツネタロウ救出に動いてほしいと願う一揆勢を描きたかったので無事書けたことにホッとしています。


オヤマ派遣団はこれで終わりです。

次回は、クリハシ関所へ向かう若者の目線を数話見ていきたいと思います。

お楽しみに


また見てね

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