366話 紡ぐ
あまり出入りしてない手習道場。エドから戻ってから2度目。
尻取りに頭を悩ませた。その褒美に思う存分遊びなさいと。それはただの休憩である。
飛んだり跳ねたり転んだり。
頭を使う遊びのあとの自由に遊ばせた。
外で遊ぶ子やお喋りに夢中な子、お絵描きをして楽しむ子らに発する。
コウキ「休憩終わり!戻って!」
この日のコウキはツネタロウ夫婦がいるため家に戻らず残る。
その傍らにヘイジが居るがすることなく掃除を始める。
ツネタロウ「では、次にちょっとした遊びをしますよ」
子供たちは遊びという言葉に胸踊らせる。
ツネタロウ「言葉紡ぎをしましょう」
ルールは、ひとり一枚ずつ短冊を配る。短冊に〇〇は〇〇と短い言葉を書く。一言で伝わるような言葉が条件。〇〇の間に入る、「は・も・で」などを用いて言葉にする。ただし、「でした・です・だった」などの締めの言葉は入れてはいけない。
机の人たちで一つの詩にする。どうしても合わないと思ったら、一度だけ書き直しができる。朱書きで訂正するように。ひとつの言葉をすべて訂正はデキないとする。
はじめに誰の相談無く短冊に書き、持ち合わせて文章にする。訂正しつつ作り上げる。
ツネタロウ「練習にコウキ先生とキヌ先生とヘイジ先生とわたしで作ってみたいと思います。参考にしてくださいね」
お題は、「昨晩寝る前に思ったこと」
コウキ「夜空の星が煌めき」
キヌ「めしやの甘雨美味い」
ヘイジ「日記を書き忘れ」
ツネタロウ「まっすぐ眠れるは良いもの」
ツネタロウ「出揃いました。ここから文章にします」
「日記を書き忘れ」「まっすぐ眠れるは良いもの」「めしやの甘雨美味い」「夜空の星が煌めき」
ツネタロウ「と並び替えてみました。しかしこれでは今ひとつわかりにくいので少し訂正します」
「日記を書き忘れ」「まっすぐ眠れるは良いもの」「めしやの甘雨美味く」「夜空の星が煌めいた」
ツネタロウ「こうすることで、昨晩寝る前に思ったことが一つの文章になりますね」
ツネタロウ「日記を書き忘れたとわかりつつもまっすぐに眠れるは良いものである。めしやの甘雨の美味さを思い夜空の星が煌めく美しさを詠った詩になります」
幼い子供たちには、短冊に文字を書くだけ。あとは集めて並び替えや訂正はお兄さんやお姉さんに任せる。最終的に詩にするのは、先生たちに任せる。初めての遊びなため全員で作り上げる。
文章や詩に出来たことを楽しむのが目的。なんとなくで作った言葉が詩になることを楽しめたり喜べることができれば、今後の勉学にも励むことが出来るだろうと夢の中にでてきた遊びを実施した。
昼になり皆食へ。コウキが特別に雑炊を作る。
テマリも一緒にいただくことに。テマリとキヌにも振る舞う。
子供たちが率先して準備しロの字に机を寄せ皆でいただく。
「いただきます」
ツネタロウ「テマリさんは慣れないと思いますが、こうして囲むことで顔を見合わせて食べることが出来るんです。そして、手習道場では食べながら話しても良いことにしています。もちろん、口にしたまま話すのはご法度です。しかし、口に無い状態で話す分には汚くありません。大人になれば、宴などで食べながら話す機会が増えます。その練習のようなものなのです」
キヌ「当家ではこの食べ方なんですよ。ね?旦那様?」
ツネタロウ「ええ。あくまでも我が家に限りますが、それを広めるつもりはありません。しかし、この食べ方をすると楽しいと評判でして」
慣れないことばかりで母テマリはツネタロウたちの思考に悩む。
テマリ「あの。こちらに住まわせていただくにおいて何もせずにはおれません。ですので、雑炊づくりでもなんでもいたします。働かせてはいただけませんでしょうか」
コウキ「願ってもございません。ですが、娘さんと同じところではどうでしょう。川を挟んだ北側の手習道場ではいかがでしょう。私は巡回しております。昼前に顔を出すことにしましょう」
テマリ「ですが、娘が心配で」
コウキ「ご安心ください。皆どの子供たちにも目を配っております。偏りのないように気を配っております。御母上さまが一緒では思う存分楽しめないかもしれません」
テマリ「それはそうですが」
コウキ「そのうち裁縫や作法なども指南していただければ」
テマリ「そうですね。わかりました」
コウキ「となれば、お一人で歩かれるのは危ないでしょう。手習道場までは郎郎団に頼みます。帰りは、手習道場に通う武家の子にお頼みしましょう」
皆食が終わると少し遊び仮眠。
仮眠が終わると、テマリは先に戻るように促した。
コウキ「ご安心ください。マリさんは送り届けます。迎えのない子らのために武家の子らに送るようにしております。皆で並んで帰るのでそれもまた楽しいと評判です。ご安心ください」
テマリは少し過保護になっていたのかもしれない。エドで嫌がらせを受けて泣く娘のことを案じて自然と過保護になってしまったのだろう。
短冊に簡単な言葉を書いてそれを一つの文章に。と夢の中で見て起きてすぐにスマホのメモ帳に書き殴って。今の今編集していて思った。短歌の五七五七七を5人でひとつずつ連歌風に読んだものみたいですね。いいアイディアだと思ったのですが、冷静になるとそうでもありませんでした。ただ、なにを書いたか分からないところは連歌とはまた違う遊びになるかなと。
では次話にて
お会いしましょう




