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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第15章 内政
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日曜短文 オヤマ派遣隊報告会 9

公衆浴場の帰り。

郎郎団団長のサンタに紹介されひとっ風呂浴びた。貴重な体験もした。

公衆浴場という概念がまだ乏しい時代。

 昼間の風呂のおかげなのか、公衆浴場から宿まで移動するだけで汗を掻く。

 途中、めしやに寄り軽く食べることにした。


  両替商「店主なにか冷たいものをいただけますか?」

  店主「でしたら、甘雨かんうなどはいかがでしょう」


 とりあえずよくわからないが注文してみた。乾物屋は聞いていたがどんなものかまでは知らず。

 ほどなくすると


  店主「お待たせしました。甘雨にございます」

  乾物屋「これが一昨日言われてた甘雨にございますか」

  店主「ええ。またお越し下さりありがとうございます」


 箸ですくうと暖簾のように。しばらく持ち上げていると滑り落ちる。

 ぷるぷるしていてつかみにくいからなのか四角い角のある箸を使う。


  乾物屋「おっ。これは甘いですな」

  両替商「うん。程よく冷たい」

  米問屋「ちゅるっとしてますぞ。初めての食感ですぞ」

  宿屋手代「これは、どことなくほうとうのような。ほうとうを細くしたような」

  乾物屋「ほうとうとはカイの国で食されてるとか」

  宿屋手代「ほんと乾物屋さんは博識だねぇ」


 茶碗に入った甘雨をつるりと飲むように食した。


  乾物屋「はぁ。噛まずに飲めるな。うん。これは美味かった。是非またいただきたい」

  店主「それはようございました。是非またのお越しを」


 ちょうど旬の食材。今年もイズの国から仕入れている。

 漁師たちはちょっとした小遣いになると喜ばれている。


 そうして宿に戻ると女将から


  女将「お早いお帰りで。いかがでした?郎郎団は」

  乾物屋「礼儀正しく爽やかな青年でした。街案内してもらったんですよ」

  女将「それは良かった。サンタは百姓の出ですが、言葉遣いは商人そのもの。人懐っこい性格なので誰からも頼りにされるんです」

  乾物屋「ええ。本当にそのとおりですね。オヤマに人が集まるのも納得です」

  女将「ちょうどよかった。今来ましたよ。用心棒さん」


 まだ早いが用心棒は早めに入り睨みを利かせる。


  女将「ちょいとあんた。少し話を聞かせてほしいとこの方々がね」


 喋るのをあまり得意としてないのか遠慮させてしまう。


  宿屋手代「そう長くはかけませんので。少しだけお願いできませんか」


 渋りながらも女将に言われ許可してくれた。


  宿屋手代「ありがとうございます。では、用心棒ということですが、今現在は浪人なのでしょうか」

  用心棒「そうだ。路銀のために」

  宿屋手代「そうでしたか。ご苦労さまです。路銀ということですが、行く宛はあるのですか?」

  用心棒「無いが、エドに向かえばそれなりになにかあるだろうと」

  宿屋手代「そうですよね。大きな街ですから。仕官先もありそうですね」

  米問屋「そのヒゲは本物ですか?」

  用心棒「なんだ?なにを疑う!?」

  宿屋手代「ああいえ。そのようなつもりはございません。ただ、睨みを利かせられるなと思い」

  用心棒「験担げんかつぎだ。仕官が叶うまで伸ばしておる」

  宿屋手代「それがまたよくお似合いで。やはり腕に覚えはあるということですか」

  用心棒「まぁ無ければ出来んだろう」

  宿屋手代「なるほどなるほど」


 あらかた、郎郎団で聞いている手前芯を食った質問ではなくこの日の用心棒の今を聞く程度。


  用心棒「もう良いか?」

  両替商「もう少し。ええと。そう。オヤマに来る前はどちらで?」

  用心棒「そのような出身など答えん。貴様には関係なかろう」

  両替商「ひっ!質問が悪かったですね。すみません。路銀稼ぎとありましたが、ある程度溜まったら旅立つということでしょうか」

  用心棒「うむ。清貧でありたいからな。だが、この町は居心地が良い。つい長居したくなる」

  女将「それならしばらくいたら良いではないですか」

  用心棒「女将。。だが、稼ぐために生きるのではなく、人のために」

  両替商「良きお考えですね。私は両替商を営んでおりまして、金を貸すことも商売の一つ。清貧でありたい人のためにという御仁は借りたとしても逃げずきっちりとお返しくださります。人を見る目は確かなつもりですが、なかなかうまいこといかないことがあります。なので、素晴らしいお考えで嬉しくなりました。もし、エドへ向かう際には、サッテにお寄りください。たいしたおもてなしは出来ませんが、我らはサッテの商人。何かの縁です。助けになれるかもしれません」


 両替商の言葉で質問は終わる流れに。乾物屋はなにか言いたげだったが、話下手の用心棒にいつまでも質問を繰り返すのは失礼であろうと早めに切り上げた。


 まだ外は明るいが早めにごろ寝と決め込んだ。


この時代の冷蔵は井戸水で冷やす程度。ところてんな甘雨ですが、ぬるいとあまり美味しさを感じにくいと思います。井戸水で冷やして提供しています。季節は立夏手前。じんわりと汗を掻く季節。冷たいものが欲しい。

夜になると冷酒が幅を利かせる。飲みやすいからついつい飲みすぎて。


ではまた来週

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