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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第4章 成長
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30話 襲撃

 寺子屋に不届き者が侵入した。被害額は微々たるものだったが、赤字経営の寺子屋にはかなりの痛手。中はめちゃくちゃにされてしまった。

 どうやらその一部には、ヘイロクも関わっているのかもしれない。

ーしばらくー


 ぴーーーーーぴーーーーーーぴーーーーー


 御用だ!御用だ!御用だ!!


 出たのである。盗人ぬすっとが出た。そう。この寺子屋へまた空き巣が入ったのである。前回、書物を盗まれるも獲得できなかった金目の物。今回はその金目の物を盗みに入ったのだ。


 だがしかし、あっさりと包囲され盗人は捕まる。空き巣は所詮空き巣。盗人の能力もあまり高くなく手練てだれはいなかったのは幸いだった。




ー10日前ー


  クニアキ「ツネ様。なんとか我らで捕まえたいですな」


 口火は、クニアキが切る。


  ツネタロウ「そうだな。ヘイロクには悪いが、ヘイロクを利用させてもらうとするか」


 チヨを手招きして呼ぶ。


  ツネタロウ「おチヨさんよ。少し手伝ってはもらえんだろうか。明日からしばらく昼にヘイロクの店で手伝ってきてはもらえんだろうか。雑炊の方はクニアキか私のほうでやるからな」


  チヨ「それは良いのですが、手伝うだけで良いのですか」


  ツネタロウ「恐らく探りを入れてくる時期だ。きっと同じように聞いてくる客が出て来るはずだ。その客は、寺子屋・売上・繁盛している。この三つのどれかを聞いてくるだろう。そこで、ヘイロクの間に入りこう言うんだ。『寺子屋の下に壺に入れているのを見たことがある』と言うんだ。恐らくヘイロクのことだ. 止めに入るだろう。止めに入ったらそれで終わったらよい。周りの客を笑わせるくらいにしておきなさい」


  チヨ「笑わせる。ですか。難しいですね」


  ツネタロウ「難しければ、少しヘイロクと言い合うところを客に見せておけば人はいろんなことを思うから適当なところで終われば良い。私とおチヨさんの掛け合いなんて、傍から見れば面白いと思いますよ」


  クニアキ「要は、冗談のように振る舞えばよい。勝手に勘違いしてくれますからね」


 チヨはそれでもよくわからないという表情。


  クニアキ「それで私は何か手伝えるのでしょうか」


 ツネタロウは、今か今かと焦るクニアキに手で待ての仕草。


  ツネタロウ「順を追って話してるところだ。まぁ待て。クニアキ殿には働いてもらわないと困るのでな」


  チヨ「どのような事か分かりかねますが、明日からヘイロクさんのところで手伝ってきます」


  ツネタロウ「よろしく頼む。客が食いついたところで、手伝いは終わって良い。その報告を頼むよ」


 ひとまず理解したようだ。そのままクニアキにも伝える。


  ツネタロウ「ではクニアキ殿。指示があるまでいつも通りに過ごしなさい。その時が来るまで待っていてください。必ず必要としますからね」




―寺子屋のぞうすい―


 ヘイロクの店にチヨが来た。準備を手伝うチヨ。


  ヘイロク「チヨちゃんどうかした?」


  チヨ「先生に言われて手伝いに来たよ。どんなもんか見ておいでと言われて」


  ヘイロク「へぇそうなんだ。助かるよ。じゃあお椀とお箸の準備してもらえる?」


 チヨは言われたとおりに準備をする。たらいに水を張りその場でお椀や箸を洗える準備をする。


  チヨ「今日も暑いね。いつもどれくらい人が来るの?」


  ヘイロク「暑いね。暑い時に暑いというと余計に暑くなるから言わない方が良いってさ。お客さんは日によって違うからね何とも言えないけど、開店したよと伝えたら並ぶくらいは来るかな」


  チヨ「そっか。今日もたくさん来ると良いね」


 ヘイロクは雑炊が出来上がる少し前で暖簾のれんを出し開店を示した。そして声を掛けた。


  ヘイロク「皆さんお待たせしました!寺子屋のぞうすい開店です!今日は看板娘もいるから寄って行ってね!」


 その声に釣られて常連客がやってくる。


  常連客「おおっ!今日は可愛い子が来てるな!どれ。一杯杯貰おうか!」


 チヨが接客をしヘイロクはお椀に雑炊を入れチヨに渡す。チヨは代金を頂き、箸をつけて渡す。それを繰り返す。


  常連客「いいね。いつもヘイロク一人だからな。可愛い子がいるだけで味が違うように思うよ」


 まわりも笑いながら食べる。


  常連客「ずっと看板娘として働いてくれたらおっちゃん嬉しいんだけどな」


 看板娘にばかり目が行くようだ。確かに開店以来初の事だから分からなくも無いのだが。


  ヘイロク「看板娘がいなくてもうちの雑炊は美味いんだよ!」


 通行人も笑ってる。

 今一つ盛り上がりに欠けるので、呼び込みをする。


  ヘイロク「腹は減ってねえか?小腹こばらが空いたらどうする?ごまかすのに寝るか?だがこうも暑くては寝ても居られねえ。だったら小腹を満たしてやったらどうだ。小腹を見たしたらどうする?そうだ。昼寝だ。昼寝をして働くとどうだ?頭がえるんだ。冴えた頭で残りの仕事をしてみろ。はかどる捗る。捗らせるには雑炊をたべる!まぁいいから食って見な」


 テンポよく歌うかのように、独り芝居を見ているかのような小気味こぎみ良いノリで呼び込みをする。行きかう人たちが聞き耳を立てる。興味を持った客は、集まり食べてみようかとやってくる。思いのほか量があり腹が満たされた気分になる。すると眠くなる。木陰で仮眠をする者たちが増える。まさに、呼び込み通りの流れになる。

 その流れを見てチヨは感心する。



ーそれから3日後―


 いつものようにチヨは昼だけ手伝いに行く。ヘイロクとのやり取りが上手く行き長年共に働く者のように、全てを語らずとも通じ合う。

 看板娘ということもあり客もそれ目当てで足を運ぶ者たちも出てきた。ヘイロクもこれは良いと考えるようになって来た。看板娘を雇うことも視野に入れるようになった。

 たまに来る男がヘイロクに聞いてきた。


  男「主人よ。今日も偉い賑わってるな」


  ヘイロク「ええ。皆様のお陰です」


  男「これだけ売れてたらお師匠さんも潤ってることでしょうな」


  ヘイロク「ええ。まぁ。そうですね」


 この流れはとヘイロクは瞬時に思うも根っからの正直者。顔に出てしまう。チヨは助け船を出しヘイロクを奥に追いやりチヨが応対する。


  チヨ「そうなんですよ。私たち寺子屋の子供たちなら誰でも知ってます。この売れた雑炊の一部をお師匠さんに渡してるんですよ。十日に一遍寺子屋に顔を出して。そしたらお師匠さん喜んでくれて。そのお金を畳の下に壺があって。そこに入れてるんですよ。ほら。畳の下なら盗むのはせいぜいネズミくらいなものでしょ」


 チヨは笑いながら話す。それを聞いたヘイロクが飛んでくる。


  ヘイロク「ははは。チヨちゃん。もうそんなこと大きな声で言って。はしたない」


  チヨ「え?だってホントのことじゃないですか」


  ヘイロク「ホントかどうかは私は知らないよ。だとしてもそういうことは大きな声で話すものではないと」


 焦るヘイロク。チヨは周りを見渡し笑顔で言葉を返す。


  チヨ「やだ。みんな見てるじゃないの。はずかしい」


 チヨは奥に隠れる。と言っても露店ろてんなので隠れようがない。それを見た通行人や客たちが笑う。チヨはこういうことなのかと理解をした。


 売り切れて店は閉店。


  ヘイロク「どうしたのさ、いつものチヨちゃんじゃないみたいだったけど」


  チヨ「楽しかったです。今日でお手伝い終わりになります。ヘイロクさんありがとうございました。先生に今日までのことを話せます。非常に勉強になりました」


  ヘイロク「チヨちゃんにいくらかでもお給金払わないとね」


  チヨ「いいですよ。勉強させてもらっただけですから」


  ヘイロク「いいや。ボクも勉強になりました。看板娘の必要性を。気づかせてくれたので、お給金貰ってください。少ないですが」


 手渡したのは60文。今の貨幣価格にするとおよそ1500円。僅かではあるが、雑炊2杯分を手渡した。


  ヘイロク「少ないけど取っといて。チヨちゃんには感謝してる。ボクも楽しかった」


 チヨは一礼して寺子屋に戻る。


【ヘイロク】


 準レギュラーになってるヘイロク。当初はここまで出すつもりはなかった。販売の許可だけで終わる予定だったが、話の展開が一本調子だったためサイコロ振って出た出目が『襲撃』になった。でもそこでも、ヘイロクが登場する予定はなかったのですが、ヘイロクの性格を以前に設定を見直したら『正直者』があったので、じゃあ、ヘイロクが一枚噛んでもらおうかと思った感じ。

 そこへ、チヨを派遣し看板娘にすることで、面白くなるかなと。チヨちゃんの成長がなんか凄まじくって。ヘイロクの成長も凄まじくってこれから出演回数が増えそうな気がします。



次回は、『大捕り物』

18日です。


また見てね

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