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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第13章 エドへ出立

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287話 仲間

拾二日目仏滅②

六日前の仏滅にカンダ明神へ行った時に、割安で買い物ができる仏滅市を開いてはどうか。

と話し意気込む禰宜と古着屋。

短い期間でどうなったかと見に行くと。

大変な賑だった。

ドン


  キヌ「痛た。ごめんなさいよそ見してました」


 以前よりよそ見の多いキヌ。またやってしまったと謝るも。

 周りを見るとぶつかったであろう人物は見当たらない。

 キョロキョロと見て回る。

 少し離れたところで男の叫び声が。


  男「痛えって!なにしやがる!!」

  コウキ「それはお前が持って良いものではない」

  男「何いってんだよ。俺のもんだ」

  コウキ「お前が思ってるようなものはそれにはない」

  男「痛えっつってんだろ!!」


 騒ぎに同心とツネタロウが駆け寄る。

 コウキにより取り押さえられ腕を背に回され身動きできない。

 同心によって男の腹にチラっと見える女物のソレが見え取り上げる。


  同心「確かに男が持つようなものじゃねえな」

  男「嫁のだよ。嫁のを盗まれないように代わりにだな」

  同心「わかった。わかった。これは中を改めさせてもらうぞ」


 袋から出てきたのは、箱に入ったべにがいくつか入っていた。


  同心「お前さんの嫁はこれをどうする気だったんだい?」

  男「し。知らねえよ。男にわかるかよ」

  同心「何が入ってるのかも分からずに嫁のを持ち歩くのかい」

  男「。。」

  同心「まぁいい。これは詳しくは別のところで聞くとしよう」


 男は北町奉行所管轄の番屋へ連れられていく。

 無事取り戻せた。


  ツネタロウ「コウキすまなかったな」

  コウキ「それより奥方の方へ」

  ツネタロウ「なにが?」

  コウキ「いいから。こちらは構いません」


 首をひねりながらキヌのもとへ。


  キヌ「驚きました。それでぶつかった人は大丈夫ですか?」

  ツネタロウ「それよりこちら落ちてましたよ」


 盗まれた小袋を渡す。


  キヌ「あら。いつの間に。おかしいわね。変なの。うふふ」


 わからないようでなにより。

 小袋から取り出し紅がいくつか入った箱を開けてみるとどれも無事だった。


  ツネタロウ「では、一緒に見て回ろうか」


 見て回っていると出店の商人から声をかけられる。


  商人「お侍様!先日言われた通り持ってきました。飛ぶように売れて素直に驚いております。どうです?いくつか手にとって見ていきませんか?」


 声をかけたのは、六日目の日に出会った古着屋の店主。先程の禰宜ねぎとは既に離れているためツネタロウの素性すじょうを知らずに「お侍様」と声をかけたようだ。


  ツネタロウ「言われた通り『応相談』の立てふだ用意されたのですね」

  古着屋「それがよ、言い値でみんな買ってくれるもんだからよ。この立て札は今のところ使ってねえんだ」

  ツネタロウ「それはよい。良いものは正当な価格で売買ばいばい出来るのが双方ともに幸せであるからな」

  古着屋「そうです。なんだか商人(仲間)と話してるみてえですね。ははは」

  ツネタロウ「どれ。これなんてどうですか。返しもキレイですし丁寧な仕上げでこの価格。なにより柄が美しい。キヌに合うのでは?」

  キヌ「旦那様がそう言われるなら」


 照れながらの返事。


  古着屋「なんだい。お侍様本当に商人(仲間)なんじゃねえのか?返しとあるが、この着物は元々大名家の奥方の着物だと言われている」

  ツネタロウ「それで。どうりでね。しかし、奥方様はなぜ手放したのでしょう」

  古着屋「それがな。昨年末に亡くなられたそうでな。いやいや、その着物はちゃんとやくを落としてある。大丈夫。行方ゆくえ知らずの古着ではないのだが、なかなかさばけなくて困ってたのだ」

  ツネタロウ「大名家の奥方の着物でしたか。陪臣ばいしんの私のところに嫁に来てくれたキヌにせめて良い着物くらいは着せさせてやりたいのでな。これをひとついただこう。良いか?キヌ」


 こくんとうなづき足で文字を書きそうな勢いで照れる。


  ツネタロウ「ところでキヌ。先程紅をいくつか持ち歩いてたようだが。あんなにどうするのです?」

  キヌ「忘れてました。この後、小間物こまもの屋さんに戻ってよいですか?」

  ツネタロウ「ああいいよ。と、その前に、店主よ。一つ頼みたい。捨てても良い着物や生地きじがあれば安く譲っては貰えんか?」

  古着屋「どれくらい必要ですか?」

  ツネタロウ「そうだな。綿生地めんきじでまだまだ使えるが多少の虫食いはあっても良いので。十人前以上で探しては貰えんかな」

  古着屋「ピンキリですが、今はここにはありませんので明日以降準備できるかと思いますが」

  ツネタロウ「では、店に直接向かおう。そうすれば屋根もあるし安心だろう」


 謁見から2日後の旧暦5月1日の大安の日に受け取ることとした。屋号は、古狸ふるだぬきという。古着を良いものに仕立て直して化かすことから古狸と名乗っているようだ。店主はまだ若く四十前の気さくな男。

 

 先程の小間物屋へ戻り、紅を買い足す。量り売りである。

 箱に入れていたのは、女中たちへの土産として、普段使う紅の種類として預かっていたようだ。

 そうして楽しく見て回り、五平餅ごへいもちをひとつずつ手にして楽しんだ。




夕餉


  トシマサ「聞いてはいたが、初回から大変な賑だったのだな」

  ツネタロウ「はい。楽しゅうございました」

  トシマサ「ははは。それはよい」

  ツネタロウ「とりあえず次回より四ツから九ツ半までとなりました。その間だけ同心を何人か宛てていただきたいのですが」

  トシマサ「ふむ。さすがに日が暮れるまではできんが、昼過ぎくらいまでなら交代させながらで見回りができるだろう」

  ツネタロウ「それが良いでしょうね。禰宜さまがなぜか震えてらっしゃいましたが。まぁ寒かったのかも知れませんね」

  トシマサ「そうか?今日は暖かったぞ」

  ツネタロウ「そうですね。じゃあなぜ?」

  ヨウ「冷めますよ」


 ヨウの冷めたひとことで食事を済ませる。


仏滅市というのはフィクションですが、在庫処分市だと認識してます。

売れ残りをいかに安く買ってもらうか。商人と庶民のせめぎあいがこの先発展することでしょう。

周知がほとんどされてない状態で賑わうとしたら好奇心旺盛な民の影響が大きいと考えるのが筋でしょう。

約40万人の大都市ですからね。その中の200人でもくれば大盛況です。


またみてね

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