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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第13章 エドへ出立

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271話 別人のよう

八日目赤口

昨晩、キヌと少しでも語り合いたいとし、キヌの膝枕で横になるとそのまま疲れから寝てしまう。キヌにとっては、楽しいひとときであった。

八日目赤口


 朝は少し冷えている。目が覚めると布団で寝ていた。いつの間にか膝枕から布団に移動したのだろう。記憶にない。振り向くとキヌがスヨスヨと寝息をたて眠っている。厠へ。


  コウキ「おはようございます」

  ツネタロウ「早いな。もう起きたのか」

  コウキ「昨晩は早々にお眠りになられたとか」

  ツネタロウ「そうなのだ。キヌの膝枕でつい」

  コウキ「それはよかった。朝餉が済みましたら少し舞いましょう」

  ツネタロウ「よろしく頼む」


 朝餉が出来るまで、外で身体を解し軽く運動。井戸で顔を洗うと部屋に戻るとキヌ起床。

 そのまま朝餉へ屋敷へ戻る。


 朝餉には、前々日に頼んでいたミョウガの古漬けの刻んだものと炊いた混ぜご飯。塩漬けのためミョウガから出た汁も一緒に炊いてある。これと汁物があれば何も要らないと朝からたくさん食べる。


  キヌ「豆腐の上の薬味も美味しかったですが、炊き込みご飯もまた美味しいですね。一度火が入っているからかあのシャクシャクと音はしませんが、香りと苦みが僅かに残っていて朝から箸が止まりません」

  ツネタロウ「皆様。美味しいですよ。元気が出そうな朝餉に感謝です」


 女中たちは顔を見合わせて喜ぶ。すっかり、厨房の女中たちは婿殿の虜である。


  トシマサ「うむ。朝餉から満足だ。良い仕事が出来るぞ」


 女中たちは、ふたりの旦那からの言葉に満足し膳を下げてからも喜びの声があがった。


 膳を下げると別邸に戻り舞の練習を始める。


  コウキ「良い動きです。では、ウルシマ様の前と想定して、手拍子なしでやってみましょう」


 無音のまま舞う。舞で覚えた足運びは、足音を立てずに指先に力の入った動きへ。指先で姿勢を整えるため無駄な動きを減らすことが出来る。知らぬ人が見ればきっと「まるで舞っているかのようだ」と思うほど。実際に舞っているのではあるが。


  コウキ「だいぶさまになられました。これで、ウルシマ様の見る目も変わることでしょう」

  ツネタロウ「すまなかったな。コウキが居てくれたおかげで期間短縮ができそうだ」

  キヌ「旦那様のような身体の大きな方だともう少し着物で風を切りそうですが、そういったことが無くしなやかな動きに見えました」

  コウキ「そうです。勢いよく手足を動かせば、風を切り無作法と呼ばれてしまいます」

  ツネタロウ「では、準備して下屋敷へ向かうとするか。キヌ。あまり無理はするなよ」



ウルシマの待つ下屋敷


  ウルシマ「では昨日の続きの前に、おさらいをしましょう」


 朝の練習の成果を遺憾なく発揮。急な上達に背を反るほど姿勢を正す。昨日の腑抜けなツネタロウとは別人かのように感じ入る。


  ウルシマ「尋ねたい。どうされたのだ。昨日とは別人のようになったではないか」

  ツネタロウ「そうですか。ありがとうございます」


 ただ一言返すのみ。尋ねている答えになっていない。


  ウルシマ「答えよ。昨日は何度言っても分からぬそなたにイライラさせられた。しかし、今朝になって別人のように動けているのはどういうことか。今できるならなぜ昨日デキなかったのだ。私を苛立たせるためにわざとなのか?」

  ツネタロウ「いえそのようなことは」

  ウルシマ「であれば問いに答えよ」


 少し困った顔をして僅かな間を取り答える。


  ツネタロウ「ウルシマ様は、上達することをよろしいことだと思われないのでしょうか。私とて習ったことを自分なりに振り返りどこで指導されたのかを思い返すことでさらなる上達をと。考えることの何が問題なのでしょうか。ウルシマ様は本来誰かに指導することにけたお方ではないと見受けます。マサズミ様より頼まれたことを懸命にこなされているに過ぎません。本来の職務とは関係のないことをされています。ですので、その煩わしさを少しでも軽減できるようにと考え、供の者からウルシマ様の動きを真似、屋敷で覚え直しておりました。供の気心知れたものから教わるのとウルシマ様から教わるとではまた見え方が違います。上達したのであればウルシマ様の要らぬ仕事が減りお互いに良いことだと考えますがいかがでしょうか」


 下屋敷でのウルシマの立場は、中で働く者たちへの指導監督するという立場。それをほとんどひとりでこなすためついつい口汚く罵ってしまうことがある。しかし、ウルシマの配下ではないことと武士ではないことなどで、受け流している。そのクセが出てしまい、配下でもない同等か少し上の状態であるホマレダツネタロウに対し口汚く罵ってしまっていた。

 世間一般では、オヤマ藩内では家老級の扱いになるツネタロウ。

 ツネタロウの言葉は、身分のことは触れないにしろ年下ということもあり下手に出た発言と教わるという立場も加味しての発言。また、元は子どもたちに教育者として指導していたこともあり、他人を指導するためにどういう言葉遣いが正しいのかを理解している。ウルシマにはそれらが欠如しており慣れてない仕事を多くさせるのは申し訳ないという気持ちを乗せて伝えた。


  ウルシマ「はぁ。ふぅ。それは済まなく思う。昨日のそなたとは別人のようでつい聞いてしまった。私のことなんぞ考えていただけてるとはつゆしらず。供の方。どうやって振り返り指導し直したのかをお教え願えるだろうか」

  コウキ「良いですが、ウルシマ様が納得行くだけの礼儀作法を殿に身に着けさせてください。その後でもよろしいでしょうか」


 順番が違うと暗に伝えた。

 バツの悪いウルシマは、言われるまま指導を再会。細かな部分を指導しその日の昼前には終わる。


  ウルシマ「明日を最終とする。一度持ち帰り細かな部分まで作法を見直すように。今日はこれで終わりとする。また、明日も同じ刻に待つ」


 無事解散となった。

 そのまま、別邸へ向かう。


八日目赤口①

まだ八日目が続きます。まだお昼前。


また見てね

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