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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第3章 寺子屋経営
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19話 家臣

 クニアキの提案を受けて即日実行。素早い対応に目を見張るクニアキ。あっさりと家臣にした。

 帰宅し早速報告する。


  ツネタロウ「ただいま戻りました。母上、今日より当家家臣となったクニアキ殿です。さ、挨拶を」


  クニアキ「お初にお目にかかります。ササキクニアキと言います。歳は二十一です。よろしくお願いいたします」


  トラ「そうですか。ツネさんより六つ年上ですか。ツネさんはまだ世間をよく知りません。ですので、いろいろとツネさんに教えて差し上げてくださいね」


 母は嬉しそうに口元を抑える。


  トラ「部屋は、離れにあります。布団は今お持ちしますね」


  クニアキ「わかりました。布団は渡して下されば、自分で運びます」


  トラ「カメ。布団の場所を教えて差し上げて」


  カメ「はい。奥様。こちらです。クニアキさまは、武芸向きなお方ですか?」


 女中が、武士に対して軽々しく声を掛けたものでは無いのだが、長年仕えているためか少し出しゃばったふしが見られる。良く言えば、親しみ深い人物ともいえる。


  クニアキ「よくわかりましたね。どちらかと言えば、武芸に励んでいました。布団はこれですね?よいしょ」


  トラ「カメ。部屋を案内して。終わったらこちらに来るよう伝えてください」


  カメ「はい。こちらです。部屋へご案内します」


 暗い中、部屋へ案内する。灯りは無く月明かりで進む。


  カメ「きゃっ」


 なにかにつまづいたようだ。転びそうになったカメをクニアキが助けた。クニアキは咄嗟に、布団を投げ捨て、カメを助けた。カメは無事ケガなく助かった。


  クニアキ「大丈夫ですか?おケガはありませんか?」


  カメ「はい」


  クニアキ「良かった」


  カメ「それより、布団は?どうされたのです?」


  クニアキ「あ。そうですね。すみません。汚れてしまいましたが、ひとまず明日朝に叩けば落とせるでしょう。今夜は軽くはたいて寝ます」


  カメ「申し訳ありませんでした。私が転びさえしなければ」


  クニアキ「仕方ありません。暗いのですから。それより先ほど躓いたのは、木片もくへんのようですが、薪能たきぎですかね」


  カメ「なるほど。それなら、ヒコザが落としたのでしょう。明日とっちめてやる」


 2人は再び屋敷に戻る。


  トラ「カメ大丈夫だった?クニアキさまどうしたのです?汚れてるではないですか。今、ツネさんが風呂に入ってるので一緒に入ってきてはどうですか?その間に、寝間着ねまぎを用意しておきます。着物の汚れは、明日までには乾きますよね?カメ」


  カメ「はい。すぐにでも」


 トラは、良い兄が出来たと思い一緒に風呂に入れることにした。一方、カメは家人かじん以外の男性の着物を持っていたためなのかどことなく微笑ほほえんでいるに見えた。


  クニアキ「失礼します。一緒に入れとのことで」


  ツネタロウ「どうぞどうぞ。一緒に入りましょう」


 初日から共に風呂に入る仲になった。


  クニアキ「その火傷痕やけどあとはどうされたのです?」


  ツネタロウ「見えますよね。普段、着物で見えないようにしているので。この火傷は子供の頃釣りをしてる時に落雷で腕が上がらなくなりました。ですので、刀が扱えないのは不便なことです。もしよければ、私の腕になってもらえませんか?襲われることはそう無いとは思いますが、クニアキ殿が守っていただけると助かります」


  クニアキ「ようやく私の腕が役立つのですね。これは稽古けいこをおろそかにしてはいけないという暗示あんじですね。分かりました。本来の私の出番です」


  ツネタロウ「頼もしいですが、そのようなことは今のところ無いので安心してください。けものに襲われた時は、石などで応戦してますので」


 獣に刀は通用しない。だが、今後何があるか分からない。腕の立つ用心棒ようじんぼうを安く雇えたのであれば助かる。まぁ襲われないように注意するだけだが。


  カメ「お湯加減はいかがですか?」


  クニアキ「少し熱くしていただけますか?」


 カメはクニアキの声を聴き熱が入る。


  クニアキ「あの。もう。大丈夫です」


 カメは聞こえてるのか


  クニアキ「ホント。もう。もうだいじょうぶ」


  ツネタロウ「おカメさん、もう十分ですよ。ありがとうございます」


 さすがに、当主の声はわかりその場を離れた。


  ツネタロウ「いつもはこんな感じじゃないんですけどね。どうしたんですかね」


  クニアキ「少しのぼせそうなので先に出ます」


  ツネタロウ「ハハハ。また一緒に入りましょ」


 二人で入れる広さでは無いため、のぼせてしまったようだ。湯につかり一息ついてツネタロウも風呂から出た。確かに湯がいつもより熱い。


  トラ「シマも手伝ってるんですよ。クニアキさんよく似合ってます。夫が使ってたものです。少したけが短いですが、明日直しておきます。今日はそれで勘弁してください」


  クニアキ「何から何までありがとうございます」


  ツネタロウ「では、夕食を皆で囲むか。我が家では、皆と話ながら食事をする。クニアキ殿も気軽に話されよ」


 家の説明などを食べながら説明する。元々農家の出だったことや最近家督かとくを継いだのかなど出来る限り話した。女中も一緒に食事をするというのは、武家としては珍しい。元農民だったというだけのことはある。分け隔てなく皆で食事をし会話を楽しむ。武家としてはあり得ない食事だった。


  ツネタロウ「シマもそろそろ寺子屋に通っても良い頃合いでは無いか?母上。次回から連れて行きたく思います。いかがでしょうか」


  トラ「そうですね。いつまでも幼いままでは嫁に出せませんからね。ご縁が遠ざかってしまいます。次回から三人で通ってください。シマ。いいですか。ただ勉強するのではなく、色々と気を回しながら接するのですよ。これまで教えてきたことをしなさい。いいですね?」


  シマ「わかりました。あにうえよろしくおねがいします。あと、クニアキさまよろしくおねがいします。あにうえといっしょにかよえてうれしい」


  ツネタロウ「母上それと、次回よりおむすびを1つ多くお願いします。私とクニアキ殿に持たせてください」


  トラ「どうしました?1つずつ多くですか?そんなに食べれますか?」


  ツネタロウ「いいえ。寺子屋の子供たちに食べさせます。かゆにすれば全員に振る舞えます。おむすび二個ずつであれば足りるでしょう。子供たちと食事を囲もうと思います。せっかく、身分の分け隔てが無いのですから皆と一緒に食べとうございます」


  トラ「そうですか。それは面白いですね。わかりました。あしたは三つずつ包みます。カメもいいですね?これからは三つずつですよ」


  カメ「はい。ツネさまはいつも面白いことをお考えになる」


  ツネタロウ「いえ、この案はクニアキ殿の考えです。その案に乗っかっただけのことです。クニアキ殿は面白いことを考えてくださる」


 カメはどこか誇らしげに話を聞いている。


  クニアキ「いえ。たまたま思ったことを言っただけです。それをんでいただいたのはツネタロウさま。すぐに行動に移されて心強さを感じます」


  ツネタロウ「箸はいくつか余ってませんか?余っていれば、次回持って行きとうございます。私たちが使うのもそうですが、忘れた子に貸すことが出来ますので」


  カメ「客人用ですので。今は余分なものはございません」


  ツネタロウ「そうですか。では、また買い足しておきましょう」


 楽しい会話は、あっという間に過ぎ、眠りに着いた。




―翌朝―


聞き慣れぬ音がする。ブン。ブン。ブン。


 早く起きたクニアキが刀を振っていた。まだ、は昇っていない。薄暗い中、鍛錬たんれんはげんでいる。久しぶりに満足のいく風呂と食事を得、より一層元気になった。


  ツネタロウ「クニアキ殿は気合が入ってるようですな。ですが、刀は危険ですので、木刀を使ってくだされ。私が以前使っていたものです。腕が上がらなくなり木刀さえ振れていません。このまま布団叩きに使っても良いのですが、せっかくなのでクニアキ殿が稽古に使って下されば木刀も喜ぶでしょう」


  クニアキ「ありがたく頂戴いたします」


  ツネタロウ「我が家は狭い。満足に刀を振ることもできないくらい狭い。カメやまだ幼いシマもいます。満足に鍛錬させれず申し訳ないが、木刀で鍛錬してくだされ」


  クニアキ「いえ。いつも刀で鍛錬してたもので。ありがとうございます」


  ツネタロウ「ちょっとついて来てもらってもいいですか?」


 クニアキは着物を直しついて行く。そこは畑だった。まだ如月きさらぎで畑は準備期間ではあるが、草むしりが行き届いている。


  ツネタロウ「当家はまだまだ小さいので、畑仕事もしながら寺子屋で教えてもいます。これを私1人では難しかったのです。もちろん、百姓の方々もいますが、人手は1人でも多い方が良い。クニアキ殿は少しずつで良いので、覚えていただけると助かります」


  クニアキ「なるほど。経験が無いので、わからないですが、教えていただき覚えて行きます」


  ツネタロウ「ありがとう。ここで作った米や野菜は、私たちも手伝ってできたものです。昨晩食べたものはここで採れたものです。米一粒まで大事に食べたいですね」


  クニアキ「そうですか。体力だけはあるので、手伝わせてもらいます」


 陽が昇り高くなる頃には、家に戻り朝食を食べ、報告のための準備をする。クニアキは、布団を干すのを手伝う。木刀で叩く。汚れはだいぶ落ちたようだが、カメに後で取り込んでもらうよう頼んでいる。


 ツネタロウはクニアキを連れ、ギオン城へ向かう。マサズミに挨拶に行くためだ。マサズミは新たな師範代を雇えと指示をしていた。浪人を雇うことにしたことで、50石の加増をしている。本来なら家臣を増やしたくらいで報告しなくても良いのだが、気にかけて加増までされた。報告する義務はあるだろう


【人物紹介】

 カメ


 女中のカメさん。あまり出番の無いカメさんの暴走はしゃぎ気味なのを描きたかったので、クニアキさんに感謝。若いオトコは誰でも好物ですよね。わかります。一緒です。

 ツネタロウが生まれる前から仕えてくれてる。母トラの遠戚にあたる。

 ツネタロウにオバさんに見えたようだが、実はまだ20代。見た目老けている。

 1章23歳、2章24歳、3章25歳←イマココ

 母トラの侍女的な感じ。家格が小さいから女中になっている。


 前編後編とは書いてませんが、そのような感じで見てもらえると良さげです。

 

 次回は、『新たな門出』

 お正月の三が日が過ぎたので、また週2に戻します。(というか、ストックが少ないので)

 7日の13時です。


 また見てね

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