164話 セタカツヨシ
手習道場3か所で出来の悪い城兵を送り込む。しかし、出来の悪さは一朝一夕では改善できないらしい。手習青空道場ではいくらかマシな城兵が送り込まれたそうだがどうなったのか。
手習青空道場では
いくらかマシな番隊を一般の人と交えて参加させた。寒空の下でたまに開くだけの青空道場。開くのを見て子供2人と大人2人。うち大人は、旅人である。そこへ、城兵ら15人参加。日本語の通じる城兵らではあるが、庶民と共に学ぶことに違和感と屈辱感を初めから食らう。
郎郎団の武士が派遣された。礼儀を教えるため。郎郎団からは、ヒラワタイラと旧イマヒラ家臣団からセタカツヨシが参加した。セタカはイマヒラ家重臣であり、旧家臣団からはセタカの行動に身を委ねている。セタカを向かわせたのは、ツネタロウきっての頼みである。
ヒラワ「久しくこの場所は使っていなかったが特別に今日は現役の武士の方々に来ていただいた。本日の勉学は、礼儀である。苦手な者がいるだろうが、武家の礼儀を知っていればこれからの生活の役に立つこと間違いない。そして、現役の武士であるセタカツヨシ殿挨拶をお願いいたす」
浪人でいながら郎郎団の訓練の長として働くヒラワタイラ。
セタカに挨拶を求めた。
セタカ「おはよう。私は、ホマレダ様預かりの旧イマヒラ家臣のセタカツヨシという。今回は、武士の礼儀を教えてほしいと言われこちらに来た。多くの武士が参加しているが、なぜこのような場所にいるのか理解できているのか?武士のほかに、一般の方が参加されている。一般の方の迷惑にならないよう本日の勉学に努めていただきたい」
受講する武士の面々は、目を伏せる。ふたりの師範代がいるということで、ヒラワ組とセタカ組に分かれ礼儀作法を教える。ヒラワ組は、一般向け。現代でいうビジネスマナーのようなもの。セタカ組は言葉遣いから基本動作。特に、目上の人に対する対応の仕方。相手が自分より年下や出来の悪い目上への対処法を教える。
出来の悪い上司でも目上であることに違いはなく、正しい対処法で接することが必要とされる。それらをセタカは厳しく教えたという。
セタカは出来の悪い上司の下で働いた経験がある。イマヒラタダキヨという出来の悪い者の下で働いた。なんとか方向修正をしようとしたが、本人が自滅したため家から放り出されてしまい今に至る。これらの経験を活かせるとして急遽抜擢された。イマヒラ家を支えてきた自負がある。適材適所な人事が行われた。
寒空の下、礼儀作法を教わる。
ヒラワ組は、時々笑いが起き楽し気にしている。一方、セタカ組は厳しく行うためヒラワ組の子どもが委縮することも多々見られた。
ヒラワ「ああいう大人にならないようにしっかり覚えて帰るんだぞ」
小声で且つ武士たちに聞こえるように話す。
寒空の下ということもあり、昼前に武士が一礼して帰るのを見て手習青空道場は終わる。
ヒラワ「なにか役立ちそうですか?」
行商人「武士の礼儀作法は我らのような商人とはまた違い、今後の武家の方々との交渉にも役立ちます。またこちらに来た時には参加させていただきたいですね」
こども「たのしかった。なんかおとなになったっぽくておとうとおかあにじまんするんだ!」
上々だったようだ。
ヒラワ「セタカさま。だいぶご苦労されてましたが進捗はどれほどでしょうか」
セタカ「ヒラワ殿。もう一人いてくれないとまとまりません。ですが、幾人かは学ぶ意識を感じました。残りは、屈辱からの反発する者もいますが、概ね一割程度の前進でしょうか。まだ、口答えする者もいますし理にかなわない発言をする者たちもいます。一体どうしたらそのような考えが出来るのかと頭を悩ませます。今夜、持ち帰り相談してみたいと思います」
ヒラワ「それが良いですね。ホマレダ様とはあまり話してませんが、筋の通ったお人です。まだお若く経験がこれからというのに、視野が広い。あの視野の広さは、落ち着きのあるお人なのでしょう。でなければ、そこまで目が届きません。是非、相談してみてください。明日も頑張りましょう!」
僅かな間に、人物評ができるほどヒラワタイラはツネタロウに注目しているようだ。
屋敷に戻り、ツネタロウとその家臣を待ち夕飯前の会議をする。
ツネタロウ「セタカ殿。急遽向かってもらい助かった。しばらく青空道場でお願いする」
セタカ「いえ。お役に立ててうれしく思います」
ツネタロウ「心強い。頼もしいお方に指南されるあの者たちの成長を楽しみにしてよう」
セタカは今日の勉学の内容と問題点をいくつか挙げ改善するにはどうしたらよいか尋ねる。
ツネタロウ「ご苦労でしたね。いくらかマシなのを向かわせたのですがまだ厳しいですね。セタカ殿がこれならなんとかなりそうだ。と思った者を城に戻してください。他は、明後日から夕方前の七つまで粘ってください。ヒラワ様にも手伝ってもらうように明日伝えに行きます。問題の武士たちは、自前で食事をするように伝えましょう。それと、少しの休憩を挟み再度教えるようお願いします」
クニアキ「やる気のない者が明後日もし居たとしたら、帰らせるようにしてください。そうでなければ、他の武士たちの示しがつきません。厳しくお願いします」
スミエ「帰らせたい武士が居ましたら、名前を聞いてから帰らせていただけますか。名前はこちらで帳簿に記録してあります。そこから、我が殿からヤマダ様へと伝わることで、扶持を減らすことが出来ます。本格的な締め付けが出来るということです」
セタカ「そこまでするのですね。その心意気を確認できただけでも充分相談した甲斐がありました」
ツネタロウ「我が家臣たちでは、とてもそこまでの指導が出来ません。家臣ではないセタカ殿の経験と活かしきれなかった無念をぶつけていただきたい。いっぱしの武士に育て上げていただきたく思う」
セタカ「なるほど。面白い」
一同「??」
セタカ「実は、終わった後共に青空道場で教えていたヒラワ殿から聞いていたのです。ホマレダ様は、広い視野をお持ちだと。今の話でその広い視野が見えているのだと確信しました。そこでなのですが、無事あの者たちを無事城に戻せましたら」
ツネタロウ「戻せたら?」
セタカ「是非、ホマレダ家の末席に加えていただきたい」
一同、顔を見合わせる。
ふっと、笑みがこぼれる。
ツネタロウ「セタカ殿の心がまとまったらで結構です。目標を持つというのはとても大事なこと。是非、全員を城に戻してもらえるよう願います」
その笑顔に、家臣たちとセタカは胸を熱くした。
ツネタロウが他3つの手習道場で聞いたことを3人に報告。進捗状況はまだ少しも進んでいないことを伝え、青空道場の出来次第で、青空道場へ送ることを検討。なんとか、如月に大殿が戻られるまでに仕上がるようにしたいという目標を共通認識とした。
セタカツヨシ(永禄10年~元和7年頃)51歳 旧イマヒラ家重臣
政務78 武力52 知力67 統率77 魅力59 運45
イマヒラ家に長年重臣として仕えた。現在は、ホマレダ家預かりの身。わずかな給金と郎郎団での収入。いきなり放り出され路頭に迷うところをツネタロウに拾われる。重臣として振る舞いを買われ、城兵の統率力を上げるために急遽召喚。預かりの身として実力を発揮する場がなかったが、新たな目標を見つけまい進する日々を送る。高齢ということもあり老い先短いという設定ではあるが、活躍次第では寿命を延ばすことも考えられる。




