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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第3章 寺子屋経営
16/414

16話 相談はしてみるに限る

 あけましておめでとうございます。今年も引き続き少年 ツネタロウをよろしくお願いします。


 当主の交代でツネタロウは殿であるマサズミに書状を持ち込み指示を仰いだ。指示は、寺子屋の師範を育てよ。育てられるのか。

師走しわす


 ツネタロウがこの時代に来て丸1年。目まぐるしく変化があり忙しい日々を過ごしている。慣れないことが続いている。猫の手も借りたいほど忙しい。今までは、父に助けられながらだったが、今は、当主になり家族を養わなくてはならない。そこへ、師範になる人材を探し育成させなくてはならない。

 ゆっくり暇な時間に書物を読んでいたあの時期が懐かしい。冬の収穫も僅かながら増えつつある。少しずつ少しずつ変わっていく。


 そんな中父ツネオキが危篤きとく状態へ。年末真っ只中のこの時期に、家族が一堂に集まる。この日だけは、養子に出ていたジロウ・サブロウも来てくれた。ジロウは、ヒタチの国シシド藩のイイダ家養子となり魚の干物を土産として。サブロウはシモフサの国サクラ藩のウスイ家養子となりうなぎを二尾。養子に出されて半生はんせい養父ようふとの日々の方が多くなったが、実の父のことは忘れていない。精のつくものを土産にした。


 ツネオキの意識は時折見せるもののもはや人を認識できていないでいる。声を掛けても反応しない。

 ツネタロウは、初見の次男・三男にも兄のように振る舞った。次男・三男は知らない兄の姿を見ることに困惑しつつも見舞いに間に合ったことを喜んだ。


 しかし、土産を口にすること無くツネオキは、労咳ろうがいにより息を引き取った。


 葬儀そうぎの翌日から寺子屋へ。休むことなく働く。寺子屋の収入は微々たるもの。


 暮れには、給金を支払う。カメに2500文。ヒコザに3000文。年給だ。




元和3年正月下旬


 殿から登城とじょうせよと言われた。


  マサズミ「よくぞ来た。ツネオキの葬儀に顔を出せなくてすまぬ」


  ツネタロウ「とんでもございません。そのお言葉だけで十分でございます」


  マサズミ「今日呼び立てたのは、先日伝えた育成の件はどうなっておる」


  ツネタロウ「はい。二・三人ほど絞っておりますが、外から浪人ろうにんを迎え入れようかと考えております。育成になっていないので殿のお考えとは違います。ではなぜ、浪人を迎えるかと考えたのは、大人が一人は必要だと考えたからです。責任を持って取り組んで欲しいのです」


 殿に対し物怖じせずに、案と理由の説明をした。きもわり当主としての心構えが出来つつあるようだ。


  マサズミ「なるほど。だが浪人を雇うとなると赤字になるのではないか?お主のろくでは家が苦しくなるであろう。いかがいたす」


  ツネタロウ「現在寺子屋に通っているのは、元服前の子供たちです。せめて元服していれば任せられるのですが。短期間に見つけるとしたら浪人かと考えました」


  マサズミ「であろうな。浪人を探すにも時間かかるぞ。それに浪人は一時いちじしのぎで飯のタネ程度にしか思ってない。最低でも一年は勤められる者が良いだろう。教わる子供たちの事を考えると短期間で変わると学びに身が入らないだろうな」


 寺子屋人事に頭を悩ますツネタロウ。


  マサズミ「では、こうしてはどうだろうか。ツネタロウに期待しているのは事実。よし!ツネタロウに五十石こく加増かぞうとする。あわせて百五十石にする。そこで、浪人を召し抱えれば辞めんだろ。ただし、召し抱えた者がなんらかで、離れることがあった場合、五十石減俸げんぽうとする。家臣かしんを持つことを許可する。これでどうだ」


 思わぬところで加増を言い渡され、目を丸くするツネタロウ。


  ツネタロウ「。。。うけたまわります。早急そうきゅうに対応します」



 家に戻り報告―


  ツネタロウ「母上、五十石の加増を受けました。ですがこれは、家臣を雇うことになります。家計はこのままでお願いします。浪人を一人雇います。あと、ヒコザはこのまま下人として雇い、あと一人私の供として雇います。それらで余ったのは、百姓の為に使います。色々と研究に使いたく思っております。申し訳ございません」


  トラ「良いことです。私たちの暮らしは以前と同じで充分なのです。良い人材が見つかると良いですね」


  ツネタロウ「はい。それで、新たに抱える浪人は、当家の屋敷に住まわせます。離れを使おうと考えてます」


  トラ「それで良いでしょう。良い人材が見つかることを願っております」


 父ツネオキが息を引き取った離れに新たに家臣を住まわせる。女中のカメが掃除を再開する。


【人物解説】

 ホンダマサズミ


 殿であるホンダマサズミを紹介する。

 この作品を書くにあたり短編小説を書いた後までのホンダマサズミは、キレ者ではあるが、欲に目をくらませ愚かな人物という印象できてました。しかし、図書館通いをするうちに、ホンダマサズミという人は、欲に目が眩んだ愚か者ではなく、人情味のある人間性が時折見えたので、作品でのマサズミは賢い者には正当な評価をする人物にしています。今回の100石→150石に加増したのも本来なら加増するほどでは無いのだが、賢いツネタロウを見て支援したくなったと思ってます。きっと、本物のマサズミも正当な評価のできる人だったんじゃないかと思ってます。

 歴史での評価は、低めに見積もられやすい人物。それは、大殿のトクガワヒデタダも同じ。凡庸ぼんような人物として描かれガチですが、ヒデタダは将軍の割に日本各地を気軽に出かけてます。エドから出ずに政治だけしてたように思われがちですが、思いのほか北へ西へと奔走ほんそうしてるんですよね。少年ツネタロウでのヒデタダ像やマサズミ像をお楽しみいただけると嬉しく思います。


 次回は、『募集』

 2日です。

 正月は小説読もうぜ

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