130話 褒美は2つ
オヤマに戻ってきたマサズミから労いの言葉と褒美を与えられる。
マサズミ「それとは別に、ツネタロウに褒美をやろうと思う」
手を叩く。しばらくすると家老のヤマダがやってくる。
マサズミ「ヤマダよ読み上げよ」
巻物を広げ読み上げる。
ヤマダ「一つ、先日の内乱をよく収めた。一つ、エドの民のために私財をはたきよく助けた。これらに関する褒美を与える。旧サンドウ領を治めよ。サンドウ領二百八十石の内二百石を与える。これまでの三百石を足し計五百石を治めよ。サンドウ家は解散しているため旧臣らを家臣とするもよし。好きにいたせ。これからもオヤマ藩のために励むよう」
知行地がさらに広がった。飛び地ではあるが、サンドウ家解散により一時的にマサズミの領地としていたが、先のエドの疫病に対する動きの速さによる終息を秋前に治められたことを褒美として、サンドウ家の領地の一部を除き与えた。端数の八十石は、ヤマダに与えられた。
ツネタロウ「過分な褒美に驚いております。ありがたく頂戴いたします」
マサズミ「そうだ。断らずにもらっておけ。ホマレダの所領は家老のヤマダに次いでの所領だ。この際だ、役職が無いままでは格好がつかない。侍大将ではどうかな」
エド時代初期ということもあり藩の役職がまだ戦国時代を引きずってると思われる。エド中期頃には、番頭職が侍大将の代わりの役職に相当する。ここではわかりやすく侍大将とします。
ヤマダ「良いかと思われます。戦経験はまだありませんが、家中に適した者もおりませぬ故、良い機会ではないかと思われます」
ツネタロウ「侍大将はどのような職でしょうか」
ヤマダによる詳細を伝える。大まかにいうと、藩の軍を仕切る者としての身分となる。平和な時代には、軍としての仕切りはまた別のこととして働くことになるが、常に人員を確保しておく必要があり、戦になればその力を発揮しなくてはいけない。力を示すことでこれまでは人を率いてきた側面があったが、これからの時代は、求心力で人を率いることが必要とされる。これまで、郎郎団の設立などの経験からも侍大将の座は適任であったともいえるだろう。
ツネタロウ「そのような大役をこの若輩者に。これもまた過分の褒美にに感謝します」
マサズミ「過分ではないぞ。それだけ力をつけ実を結んだ。充分人をまとめる力を備えた。これからは、オヤマ藩の中心人物としてヤマダと共に支えてくれ」
ツネタロウ「恐れながら。おそれながら、イマヒラタダキヨ様を奏者番に置かれてはいかがでしょうか。かの者は、舞に優れております。もちろん、舞うだけの仕事ではないことは存じ上げております。家中から掌握するには、何か役職が必要かと思います。ですので。イマヒラタダキヨ様に役目をお与えください」
ふたりは目くばせし大きなため息をつく。
マサズミ「ツネタロウよ。分かってると思うが、イマヒラは藩に反逆した家柄だ。その家になんの役目を与えなかったものを代替わりしたからと無かったことにはできんのだ。こう言ってはなんだが、イマヒラの家が潰れようがどうでもよい。これ以上藩に楯突くのであれば家を取り潰すだけだ。まとめられないのはタダキヨの責任でもあるのだ。家を護れるかどうかはこちらには興味がない」
ツネタロウ「ですが。ですが」
ヤマダ「ホマレダ様は懇意にされてるのでなんとかしたいという気持ちはわかります。家さえも守れないものに役職は与えられません。まずは、家をまとめた後に役職をというのならば。いかがでしょう。殿」
少しの可能性が出たことで顔色が明るくなる。
マサズミ「うん。そうだな。では、イマヒラの家がまとまり忠義に励むことを誓う誓約書を書かせよ。イマヒラ家家臣全員分だ。それが出来なければ無職のままだ。よいな」
ツネタロウ「マサズミ様!話を聞いていただき感謝いたします。タダキヨ様の励みにもなるでしょう」
ヤマダ「分かってると思いますが、本人には言わないように。誓約書の件は、こちらから伝えます。またホマレダ様が手伝うことの無いように。タダキヨ様が己の力で家を守るのです。それが条件です」
ヤマダを再度下がらせる。
マサズミ「久しく話してないだろ。先日のエドでの謁見でもあまり話せなかった。今日はゆっくりと話していかれよ。そなたの話は面白いからな」
ツネタロウ「ではどこから話しましょうか。手習道場での話でよいでしょうか」
チヨが編だした石や木片に漢字の一部を切り取り組み合わせた遊びを話す。
マサズミ「それは面白そうだな。次回、会うときに持ってくると良い。オヤマ名物にもなりえるだろう。日の本に広められるかもしれぬな」
漢字の偏と旁で遊ぶものは存在すれど、細かく分けたのは少ないと思われる。
ツネタロウ「たとえば、川に架ける橋ですと、木に呑むに同じを組み合わせて橋とする。というような遊びです。なるべく細かく分けて尚且つ普段使う文字にすることで当てはめやすく誰でも遊べるものとなってます。また、石は丸く触り心地のよい河原の石を採用してます。手など体にケガをしては意味がありません。また石ですと、洗えばまた別の文字が書けます。木片は軽く積み重ねやすいので収納や持ち運びに便利ですが、消しにくいのが難点です。どちらも安価で手に入れられるので、誰でも作れます」
マサズミ「うんうん。そういうのだ。そういう遊びながら学ぶ。面白いものを考えたな」
ヘイジの頭の中にあるものをチヨが具現化させたことを話す。
マサズミ「よい弟子を持ったな。他にこれまでになにかあったか」
【あとがき】
大出世ですね。戦経験のない侍大将もいただきました。あらぬ誤解を受けてしまいそうですが。時代背景から侍大将にしましたが、分かりやすくていいかなと思い侍大将にしました。
番頭だと商人にも見えますからね。
某小説というか漫画というかアニメというか。鬼のお兄さんで赤い人も軍事担当で侍大将を任じられてますし、番頭よりも理解が深まりそうな気がします。ぷにぷにの配下のあの方です。なので、ツネちゃんの仕事もあのような感じの職務だと思ってもらえたらいいのかなと。
とはいえ、戦の無い時代なので、何もしないわけにもいきませんので別の仕事をします。お楽しみに。




