表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第2章 歴史始まる
14/412

14話 ギオン参上

 寺子屋前でウロウロする怪しい男。の者はいったい何者なのか。

 父上の容態ようだいかんばしくない。

 ツネタロウは、城へ呼ばれた。理由は特に聞かされていない。不安な気持ちと、父上の職場でもあるギオン城に呼ばれたのだ。不安と期待が入り混じった何とも言えない気持ち。


 ツネタロウは謁見えっけんの間で待つ。時間がつのが早く感じる。初めての謁見。ここの城主は、ホンダマサズミ。この年4月に大御所おおごしょのイエヤスを失い、先月6月には、マサズミの父マサノブが死去しきょしたばかり。これらに何かしらの不満でもあるのだろうか。


 殿が来る。平服するツネタロウ


  マサズミ「表を上げて楽にするが良い」


  ツネタロウ「はは。ホンダツネオキの嫡男ちゃくなんツネタロウと申します」


  マサズミ「うむ。作法さほうも出来ておるな。よいぞ」


 独り言にしてはに響く声。


  マサズミ「今回呼んだのは、ツネタロウのことを知りたくてな。良かったら少し話していくと良い」


 ツネタロウの思い過ごしであった


  マサズミ「緊張しておるようだな。まぁ仕方ないだろう。お前の身分ではなかなか入れる場所ではないからな。では本題に入ろうか。お前の父ツネオキからも聞いていたが、以前のツネタロウと違うと評判だ。人は簡単に心を入れ替えるのは難しいことだ。勉強はあまり得意では無かったとも聞いている。なにがあって変わったのだ?良かったら話してはくれんか?」


  ツネタロウ「私は、目覚める以前の記憶がございません。気付くとホンダタロウでした。ですが、頑丈がんじょうな体は、元のタロウのお陰ということもあり、生活の変化に戸惑いながらもこうして今があるのは、父上のお陰です。寺子屋に通うまでの間に本をいくつか借り何度も読み直してるうちに、自分の今の生活を見返すことが出来ました。心の入れ替えはしてません。素直に話を聞き素直に思ったことを口にしてる。それだけです」


  マサズミ「そうか。記憶が無いのか」


 少しためらいながらも続ける


  マサズミ「おかしな質問をするぞ。時折おるのだが、お前は転移てんい者ではないのだな?」


  ツネタロウ「転移者?とはどういうことでしょう」


  マサズミ「一度死んだ者が、過去や未来から来た者を指す言葉だ」


 戸惑いながらも考えてみると合点がてんがいく。なぜ私はメイジからエド時代の初期にいるのか。不思議に思いながら今日まで過ごしてきた。そうか。あの夢に出て来る男は、私をこの時代に飛ばしたのか。そんなこと言ってたな。でもまさか、殿がそのようなことを言われるとは。


  ツネタロウ「転移者かどうか確証かくしょうはありませんが、もしかしたら私も転移者なのでしょうか。夢の中に出て来る大きな男がいるんですが、その男によると私は、二百九十年後からこの時代に来たようなのです。こんな突拍子もないことは誰に言っても信じられないでしょうからここまで言わずに過ごしてきました。しかし、マサズミさまに言われて、もしかしてと思い」


  マサズミ「うんうん。これは良い。過去の転移者ならあまり意味が無いから話を聴くのはこれっきりにしようと思ってたが、二百九十年後の未来から来たならばその後の未来も知ってるかもしれんからな。そうか。それはよく言ってくれた。それで、エド幕府はあと何年続くのだ?」


  ツネタロウ「いえ。信じてもらえただけでも充分です。今の私は混乱してます。こんな突拍子とっぴょうしもない話を受け入れていただけたのですから。ですが殿。私は、歴史にはうといです。エド幕府は、読み書きや計算は出来ますが、以前の私はメイジ時代でした。メイジの前がエドだと聞いてます。戦争らしい戦争はなく平和な期間が長かったと聞いてます。ただ歴史という部分には疎いため、殿のお役に立てるかどうかはわかりません。未来のことまではわかりません。申し訳ありません」


 夢に出て来る大きな男はコメカミを押せば分かることだが、即座に答えられないということをあんに伝えている。あまり期待されないように低くおさえ伝える。


  マサズミ「エドはそんなに長く続いたか。いやな。このヒノモトでは武家の棟梁とうりょうが始まり政治が武家主導に変わった初めのカマクラの百六十年が長い方であった。そうか。カマクラを超えたか。それはそれで面白い。お主の性格や気遣きづかいのできるところは非常に面白い。またお主と話せる日が来ること願っておるぞ。それから、お主が気にしていた転移者というのは私以外には口にしない方が良いぞ。変に勘繰かんぐられたりしても困るだろうしな」


 マサズミは、ツネタロウを認めた。お前からお主に変わった。大事に思うあまりに呼び方を変えたようだ。素直な性格をしていることが分かる。


  ツネタロウ「その転移者というのはどこで知ったんですか?」


  マサズミ「ノブナガさまがご存命ぞんめいの頃に、ヤスケという男がいてな。まっ黒な男で背が高く馬のように立派な身体つきでな。何度か会ったが気の優しい男だった。そのうち話せるようになったから聞いたんだ。お前はどこの国から来た?すると、海の向こうとだけ。ヤスケは、なんのためにヒノモトに来たのかもわからない。ただ、真っ暗な地中を勢いよく走る箱のようなものに乗っていたそうだ。箱の中は明るいと言うてたな。気づいたらこの時代に居たところを宣教師せんきょうしらに助けられたそうだ。ツネタロウの時代にはあったのか?」


  ツネタロウ「いえ、存じ上げませぬ。わたしの時は、汽車きしゃしか知りませぬ」


  マサズミ「ん?それは初めて聞くぞ。汽車とはなんだ」


  ツネタロウ「黒く硬い鉄のかたまりに石炭を燃料に走る乗り物です。馬より速く黒い煙を吐きながら走ります。客席は、木で出来ていて長く座っていると尻が痛くなります。時折、暗闇くらやみの穴に入り窓を閉めなければ黒い煙が客席に入ってしまいます。私は何度か乗せてもらいました」


  マサズミ「それ面白そうだな。ん?そうか。わかった。もっとお主の話を聞きたいが、すまぬ。時間のようだ。またその続きを聞かせてはくれぬか?今日は楽しかった。また声を掛ける。来て話してくれ」


 小姓から声を掛けられわかったと手を振る。ツネタロウとの会話はあっという間にときを経過させ、相性の良さを感じさせた。


  マサズミ「それからな。お主のその座り方は商人の座り方だな。そのすそを払う仕草は直した方が良いぞ。なにかを勘ぐられたら面倒だ」


 メイジ時代の中頃でも庶民はまだまだ着物を着ていた。そのためツネタロウは着物の所作が武士では無く商人そのものだった。それを注意された。言われるまで全く気付かなく、注意されたのは初めてだった。




帰宅―


  ツネタロウは、今日あったことを離れにいる父に言える範囲で伝えた。ツネオキは普段座り火鉢にあたりながら過ごしている。


  ツネオキ「そうか。殿に気に入ってもらったか。少し気難しいところがあるから心配していたが。良かったな。いつ呼ばれても良いように、準備だけはしておきなさい」


  ツネタロウ「父上。ありがとうございます。精進いたします」


 殿に言われた所作を父上に伝える。


  ツネオキ「うむ。儂も気になってはいたが、確かに違うな。どこで覚えたんだろうか」


 ツネオキは立ち上がり、武士の所作を教える。ツネタロウはそのマネをして覚える。時折、ツネオキは咳き込むが何度かその所作を教える。


 父ツネオキはより一層悪化していく。労咳ろうがいで先が無いことが分かり、マサズミに手紙を送った。労咳とは結核けっかくである。

 元和げんな元年・2年と寒く一部で飢饉ききんが発生している。


【ギオン城解説】

 下野しもつけの国と呼ばれていた現在の栃木県の南部に小山市がありそこを治める小山氏が築いたという祇園城。現在は、小山市市役所近辺に城跡じょうせきがあります。一国一城で祇園城は廃城になります。小山藩は初代本多正純限りの藩となりました。富士山などの噴火により肥えたよい土壌どじょう。そこへおもい川を城下に引き入れ安定した水田が広がっている。江戸から北に延びる日光街道と奥州おうしゅう街道が交差する。交通の要所として宿場町として栄えた。


 オヤマ藩での話を書くことにした時に、祇園城はゲームでは知ってましたが、地名や人名をカタカナに変えているためタイトルはギオン参上がなんか意味深でいいかなと思って付けました。すごくいい名前で気に入った城になりました。どこぞの有名ロボットアニメっぽくって良いかなと。

 

 次回は、『交代』

 冬休み企画として毎日投稿してます。


 また見てね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ