表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第9章 新緑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/430

120話 研鑽

 西の街道にあった寺子屋の経営権けいえいけんをツネタロウが引き継ぎ、代わりにイカラシを師範代としてやとうことになった。そのイカラシは、チヨの道場にて研鑽けんさんを積むため朝から受けることになった。

手習道場にて


 道場(ぬし)であるチヨ師範しはんもとで、郎郎ろうろう団から2名と西道場からイカラシが研鑽けんさんを受ける。


  チヨ「まもなく子供たちが来ます。研鑽はれるまで苦労するかもしれませんがなるべくひとり立ちできるようにつとめてください。今日は初日しょにちですので、私たちの動きを見て覚えてください。研鑽中でも皆さんのことは名前の後ろに『先生』とおびします。三人を子供たちのことを見るとなると子供たちが困惑こんわくするでしょうから、郎郎団からお一人は、カヨ先生の下で教わってください。残りのお二人は、勉学べんがくの流れや教え方を学びながら子供たちのことも見てください」


 研鑽をむことが大事とはいえ、経験者けいけんしゃのイカラシには有利ゆうりはたらくものだと思われる。


  カヨ「チヨ先生から言われたとおり、雑務ざつむをお教えします。これが出来ないと皆食かいしょく仮眠かみんも出来なくなります。記録きろくをつけるのも雑務の仕事です。かならず覚えてください」


 カヨの雑務もかなりさまになっておりいたについたという表現ひょうげん似合にあうようになった。


  ヘイジ「チヨ先生。今日もボクが教える感じでよいでしょうか」


  チヨ「たすかります。こちらは、ヘイジ先生です。見ての通りの武士ぶしですが、登城とじょうすることなくこちらで働くようになりました。師範代しはんだいという立場たちばですが、身分みぶん武家ぶけになります。大殿マサズミ様よりホマレダ様の助けになるようにと言われこちらで働いていただいてます」


  ヘイジ「なので、基本きほん的に登城しません。家から直接ちょくせつこちらに来て帰ることになります。私の自己紹介じこしょうかいはこのくらいでよろしいでしょうか」


 パンと手をたたく


  チヨ「それでは、子供たちが来るまでに準備をしましょう」


 火鉢ひばち場所ばしょつくえならかた、紙の場所などを準備じゅんびしながら教える。


 順序じゅんじょ良く覚えていくことを目指めざす。


  チヨ「子供たちが来ました。あちらの雑務をしているカヨ先生をごらんください。用紙ようしだれが来たのか。支払しはらいがある子から受け取ったがくを書き込み間違まちがいのないようにしていますね。これも大事な仕事です。物品ぶっぴんわたされることがあります。それも用紙に書き込んでますね。なにを受け取ったのか。懐事情ふところじじょうは各家ごとに違います。それらを人に見せることなく伝えることもしてはいけません。手習道場だけが知っていればそれでよいのです」


 チヨによる研鑽をよそに、ヘイジは今日はどういうことを伝えようかと思案しあんする。


  チヨ「こちらをご覧ください。ヘイジ先生が思案中です。このように、今日どうやって伝えていこうかと思案しています。これも大事なことなので、ここに来てからでよいので考えるようにしてください。考えもせずに教えるのはむずかしいことですからね」


 チヨの的確てきかく指示しじぶ。


 四つ半のかねがなる。


  チヨ「では、ヘイジ先生お願いします」


 その一言ひとことで、ヘイジはこの日の勉学をはじめる。


 そのかたが出来ていることにイカラシは感心かんしんする。

 イカラシが経営けいえいしていた寺子屋てらこやでは、自習じしゅうちか自由じゆうにさせていた。かれたらこたえる。み書きを学ぶものいて遊ぶ者、そろばんを使って計算けいさんをする者。など、自由にしていたため師範代が教えるということに関心かんしんった。また、子供たちもそれを当たり前に受けていることにもつよい関心を持つ。


 読み書きは毎日まいにち朝いちばんにすることになっている。手習道場での第一だいいち目標もくひょうが、読み書きができるようになることであり、そのためにマサズミより手当てあてを出してもらっている。

 計算や絵は、皆食かいしょく仮眠かみんあとにすることになっている。そのように、道場主であるチヨが制定せいていした。


 勉学がすすむとながれがわる瞬間しゅんかんがある。


 チヨのだいから変わったことではあるが、師範代ではないならいにている子供こどもまえに来て子供たちをおしえる。これは目をうたがう。子供が子供を教える。どういうことなのかと。


 チヨやヘイジが決めた読み書きが得意とくいな子供を前もって選出せんしゅつしており、みんなの前で発表はっぴょうするというのをはじめた。成績優秀せいせきゆうしゅうな子供が半分(つと)め、のこりの半分を苦手にがてとしている子供に他の子どもたちの前に立ち発表させる。


 苦手としている子供は、ずかしい気持きもちになるが、なにがからないのかを人に言うことで、共感きょうかんを呼び、同じようなことでなやんでいる子供のやくに立つ。分かる子供たちが分からない子供たちに教えることで、よりくだいた説明せつめいになり理解力りかいりょくたかまることがある。もちろん、理解力が高まらないこともあるが、その場合は、師範代たちが教えることで解決かいけつすることがある。

 何が分からないのかが分からないということもあるが、それはそれでくちにすることで解決がすこしでもはやまり誰一人だれひとり置いていかれることなく勉学にハゲむことができる。


 これらは、チヨがをもって経験けいけんしたことであり、どうすればわかりやすく説明せつめいできるだろうかと考えたすえにできた教育方針きょういくほうしんとなった。道場主に昇格しょうかくしたことで、より一層いっそう励むようになったとツネタロウは、どこかでほくそんでいる。に違いない。


 イカラシは何から何まで違いすぎることで、この研鑽けんさん重要じゅうようなことだと気づく。研鑽をまなければ師範代として役に立たない。これまでの経験は経験者としてあまりにもお粗末そまつだったと痛感つうかんしきりだ。


 当時とうじから世間せけんでは、「子供こどもはなにもしなくても勝手かってに育(そだ9つ」と言われていたため、自習させるだけの寺子屋でもそれなりに子供たちは育った。良い環境かんきょうではなくても子供は勝手に育つのはたしかではあるが、さらに良い環境をあたえることでびしろをさらに拡張かくちょうすることができる。


 ツネタロウが教える教育方針とは違う方向ほうこうにあるが、それは道場主によって違ってくるのは良いことである。子供たちが、どこで習うか決めることができればなお良いだろう。


 チヨの代になって教育のしつが、一段いちだん二段にだんと高まっていくのが分かる。

 それゆえに、ツネタロウが新たに研鑽を積む場所としてチヨの道場を紹介しょうかいするのが手っ取り早いと考えたのやもれぬ。


【あとがき】

 元西の街道にある寺子屋を経営していたイカラシにとって研鑽はまったくの別物と思いどこか大変さを感じたと思われます。自習スタイルで経営していた時と打って変わって、教え方が異なる点しかないことに不安を感じたことでしょう。「自分にできるだろうか」。これを月1300文で雇われることに不安を持ち始めた。耐えられることを願って。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ