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少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第9章 新緑

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115話 ぼちぼち

 新章しんしょう新緑しんりょく郎郎団ろうろうだん立ちげ6部作ぶさく最終さいしゅう回。

染物そめもの


  モキチ「先生!毎度まいど贔屓ひいきに」


  ツネタロウ「うん。モキチはどうだ。商売しょうばいほうは」


  モキチ「むずかしいですね。一筋縄ひとすじなわではいかないのを痛感つうかんしてます」


  ツネタロウ「っふ。こう言うこと言われた時は、ぼちぼちだって言えばいいんだよ」


  モキチ「ぼちぼち。。ですと」


  ツネタロウ「そうだ。私とモキチの間柄あいだがらだから素直すなおに話して良いだろうが、きゃく取引とりひき先での『最近さいきんどう?』といういには、店の事やモキチやその家族かぞくのことをうている場合ばあいがある。それらを素直につたえるわけにはいかない。そこでのぼちぼちだ。まぁまぁと同じだと思ってよい。この言葉ことば便利べんりだ。面倒めんどうごともこれでれることもある」


  モキチ「そのような便利な言葉があるのですね。武士ぶしかた使つかわれるのであれば、それにならうというのは間違まちがいではありませんね」


 どの時代じだいでも武士が使う言葉ではない。しかし、それを否定ひていすれば面倒。


  ツネタロウ「それで注文ちゅうもんしたのは出来てますか?」


  モキチ「はい。ただいま」


 おくへ入りしばらく


  モキチ「おたせしました。こちらです。確認かくにんねがいします」


  ツネタロウ「どれ。ああ、これです。うん。うん。ながさもちょうど良いですね。めも文字もじも良いですね。満足まんぞくしました。モキチさんにお願いするのが安心あんしんできてたすかります」


 丁寧ていねい風呂敷ふろしきつつむ。


  モキチ「そう言っていただけるとうれしいのですが、け付けたのはボクですが、父にほとんどたよってます」


  ツネタロウ「それは仕方しかたないです。じゅんって経験けいけんじょ々に自分でできるようになる。そういうものです。私の考えていたとおりに出来てるので、そう自分を卑下ひげすることはないですよ」


 頭を


  モキチ「先生にはいつも良い機会きかいあたえてくださるので助かってます。これからもよろしくお願いします」


  ツネタロウ「わかりました。こちらいただいていきますね」


 注文のしなを受け取り店をあとにする。




  


  ツネタロウ「もどりました。サンタさんちょっと良いですか」


 風呂敷をほどく。


  ツネタロウ「こちらをどうぞ」


  サンタ「私たちにですか?ショウジきみもこちらへ」


  ツネタロウ「そうです。郎郎団ろうろうだんおび腕布うでぬのです。かく二十本になります。りないぶんはこれからのかせぎから作ってください。ひとまずこれで結束けっそくできることを願います。みなさんおめでとうございます」


  サンタ「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。まだ全員ぜんいんそろうのはあつめた時だけです。総勢そうぜい二十三人。団長だんちょうとして感謝かんしゃいたします」


  ツネタロウ「サンタは団長らしくなりましたね」


  サンタ「それは、ツネタロウ様に礼儀れいぎおそわったおかげです。手習道場てならいどうじょうまなんだ甲斐かいがありました。武家ぶけの団員からも教わってます」


  ショウジ「その点、ふく団長の私も団長同様どうよう学ぶ点があります。団員どまりでしたら学ぶことも出来なかったかもしれません」


  ツネタロウ「団員にも団としての作法さほうや礼儀などもおいおいつけていけば良いでしょう。郎郎団は、人助ひとだすけにあるでしょう。人とかかわる仕事しごととなると横柄おうへい自信じしんなさげな態度たいどではきらわれてしまいます」


 自分の言葉に何かを思う


  ツネタロウ「みっつの手習道場に、武家ぶけ商人しょうにんの子たちで、読み書きと礼儀を中心ちゅうしんにした道場をひらくのはどうでしょうか。みっつ目の手習道場は、郎郎団にまかせるというのはどうですか?直接経営ちょくせつけいえいしてみてはどうですか?みっつ目は西か南にする予定よていです。おもに、農村のうそん部になるので百姓ひゃくしょう向けとなります。皆食かいしょくもお願いしたいのでそこはヘイロクなどから人をまわしてもらうなど手配てはいしてみてはどうでしょう。出来そうですか?」


 ふたりで相談そうだん


  サンタ「これは今はまだむずかしいですね。たとえば、礼儀だけとかは出来ませんか?」


  ツネタロウ「この手習道場を広げてる理由りゆうに、文字が読めるようになることが第一だいいちとなってます。さらに文字が書けて自己表現じこひょうげんできるようになり、かずかぞえ間違いなくそんをしないかたが出来るようにと順追じゅんおって考えられる力を付ける。そこへ、食事しょくじ大事だいじさや食事を作る心得こころえ簡単かんたん裁縫さいほう最後さいごに人としての最低限さいていげんの礼儀。これらを教えることが出来る人を師範しはんとしてあつかっています」


  サンタ「それらすべてが出来る人物じんぶつは団にはいません。ひとつに特化とっかした人物もいません。やはり」


  ショウジ「団長。特化してなくても読み書きが得意とくい、計算が得意、礼儀のある人物。それらの得意な人で、はんここのつ半にけるのはどうでしょうか」


  サンタ「ならば、奇数日きすうび偶数(ぐうすう)日で教える内容ないようわる。教わりたい人がる。というのであれば、そうですね。可能かのうかもしれません。ただ、読み書きができるのと人に教えるというのはまたべつの話だと思います。そのあたりはどうしたらよいでしょう」


  ツネタロウ「私自身(じしん)経験けいけんですが、人に教える経験はありませんでした。先代せんだい師範(しはん)から受けいだ時も経験ながら引き継いだのでやれることからやったら今にいたる。というかんじですね」


  ショウジ「教えたい気持ちがあれば出来るということでしょうか」


  ツネタロウ「そうですね。最初さいしょから上手じょうずに出来なくても良いのです。教えるがわひび努力どりょくをすればよいのです。私もクニアキもチヨさんもそうです。日々どうすればつたわるのか。毎日まいにち考えているのです。なので、最初から上手に出来てたらうらやましいと思ってしまいます」


  サンタ「羨ましいなんて考えるんですね。意外いがいです」


  ショウジ「団長。それならわれらでも出来るのではないでしょうか。前向まえむきに検討けんとうしてみませんか。まずは、可能かのうな人物をり出すところからはじめて見ませんか」


  サンタ「だな。よし。先生。場所と備品びひんなどはお願いしても良いでしょうか」


  ショウジ「団長。言葉(づか)いがめちゃくちゃだよ」


  ツネタロウ「それだけ前向きに検討してくれてるんだな。うれしく思う。とりあえず期限きげんは、長月ながつきには始めたいと考えている。最初のうちは、ならしという意味()いから手習てならい北道場(きたどうじょう)で学んでもらう。そのあとは、新設しんせつ手習道場で師範代しはんだいとしてはたらいてしい。師範しはんになるには、全体ぜんたいが出来るようになってからになる。経営権けいえいけん来年らいねん以降(いこう)委譲いじょうすることを検討している。まぁ、難しければしばらくは私が引き受けるから安心してほしい」


 


 それから文月ふみつき中頃なかごろには、郎郎団と契約けいやく下旬げじゅんには師範代を派遣はけんしてもらい、ツネタロウたちの苦労くろうすこしずつかるくなっていく。長月に入る頃には、下準備したじゅんびが出来た状態じょうたいになり、順次じゅんじ新設手習道場へ派遣するようになった。これで、3つ目の道場が出来る。


 郎郎団との契約は、1日1人当たり80もん午前よつはん午後ここのつはんで2人なので1日当たり160文で契約した。師範代本人の実入みいりは、1日当たり6わりの48文。のこりの4割を団の収入しゅうにゅうとする。月5000文で契約した。チヨ師範の収入よりおおいことになる。その雑務ざつむや皆食もふくまれるため1人当たりの収入はかなりすくない。


 3つ目の手習道場の収入を一度いちどホマレダあずけ、そこからスミエにまかせる。スミエから郎郎団に月の支払しはらいをする。手習道場でかせげるものではないため、赤字あかじは出やすいのだが、マサズミさまよりいただく米百俵ヒャッピョウが頼みのつな


 郎郎団はまだまだ身内みうちとの契約でり立っているところがあるが、団の結束を成長せいちょうすればよい。人をまとめるのは大変たいへんなこと。そう実感じっかんしたツネタロウであった。


【あとがき】

 染物屋のモキチくん。ヘイロク以来の依頼いらい。優しい性格のためか素直な青年。成長は確かに見られる。

 ボチボチは、大阪の商人言葉かのように思われガチですが、現実的に使うのはフィクションの世界くらいなもの。わざと使ってわらわせることはあるが。大阪おおさかに強いあこがれがあると使いたい他所よその人は今の時代でもます。ただ、かなり便利な言葉なので、挨拶あいさつにも使うことが出来、本音ほんねの場合とウソや聞き流す意味で使われることもあり、便利ゆえに使うことはあるにはある。それでも、フィクションせいが強い。安易あんいには使いたくないですね。気を付けましょう。



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