表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年 ツネタロウ  作者: モーニングあんこ
第8章 チヨの留守番 
118/423

8-5 遊び

 ヘイジの頭の中にあるものを具体的にした手札。大人が夢中になるほど楽しめた。今日は子供たちに投入する予定。さてどうなる。

  チヨ「ツネ先生のいない日がこんなにも続くなんて」


 まだ3日目だぞチヨ。


  トミ「チヨ。気持ちが声に出てるよ。いいから準備しなさい」




 コレヒデの迎えで手習道場へ向かう。

 チヨは隣のコレヒデがどことなくぎこちなく見える。


  チヨ「どうかしたの?」


  コレヒデ「え?べべべ、別に」


  チヨ「なにか隠してる?」


  コレヒデ「ななななにも」


  チヨ「ふーんそっか」


 他愛たあいもない会話をしてるうちに手習道場に到着。到着すると護衛の仕事は終わり家へ帰る。その後姿は、どこか猫背に見えた。


  カヨ「コレヒデどうしたの?なんか落ち込んでるみたいだけど」


  チヨ「それがよくわからないの。聞いてもぼんやりした答えだし」


  カヨ「まぁいいか」


 -それから数日後-


  コレヒデ「あのさ、チヨちゃんって付き合ってる人いるのかな?」


  ヘイジ「どうしたの。やめときなコレヒデくん。チヨちゃんと君は、身分が違う。君は武家でチヨちゃんは農民だ。思うのは勝手だけど無理な話だよ」


  コレヒデ「そうだった。ああ。でもさ。武家でも農民と結婚できるでしょ。ほら、武家に養子に入れて」


  ヘイジ「まぁそうなんだけど。でもその前に大きな障害があるんだよ」


  コレヒデ「なに?」


  ヘイジ「チヨちゃんの思い人が誰か知らないの?」


  コレヒデ「いるの!?」


 ヘイジはため息を


  ヘイジ「思い人は、ホンダ・ツネタロウ様だよ。勝てる相手じゃないってことさ」


 膝から崩れ落ちる


  ヘイジ「大丈夫?」


  コレヒデ「だだだだダメだ。全然勝てる気がしない」


  ヘイジ「だよね?同じ武士でもヒデタダ様と謁見えっけんするような人物とボクらの殿のマサズミ様を拝顔はいがんすることも出来ないボクらとでは、身分が違い過ぎるよ」


  コレヒデ「知らなかった。そんな風に見えなかった」


  ヘイジ「いや、たぶんみんな知ってるよ。むしろなぜ君が知らなかったのか不思議なくらい。チヨちゃん顔に出やすいし。あと知らないのはツネ先生もかな」


 コレヒデの恋は1日と経過せずに終わった。




-時は戻り-


 昨日作った手札を使って勉学に投入してみた。子供たちは、見たことの無い遊びで、遊びを勉学に取り入れてもらえたことで夢中になって楽しむ。初日ということもあり自由に遊ばせた。休憩中も作りを読み上げていたり手札を隠して遊ぶ子たちもいた。


  チヨ「無くさないでね。また作るの大変だから」


  子供たち「はーい」


  カヨ「良かったね。みんないつもよりも楽しそう」


  チヨ「ヘイジくんに感謝だね」


  ヘイジ「何言ってんのさ。ボクの頭の中のことを伝えただけだよ」


  カヨ「それを形にしたのを子供たちが本気で楽しんでくれてて嬉しいね」


 3人の先生たちは、笑顔で子供たちを見る。


  カヨ「あのね。チヨちゃ。いやチヨ先生」


  チヨ「ふふふ。どうしたのカヨ先生」


  カヨ「あのね。明日から最後まで残れそうにないんだ」


  チヨ「あら。家の事かな」


  カヨ「うん。家のこともあるし暗くなるまで残るのが危ないからって」


  チヨ「武士の送迎でも?」


  カヨ「うん。親は嫁入り前の娘になにかあったら。なんて言っててさ」


  チヨ「そうだね。雑務のために暗くなるまで手伝わすなんておかしいね」


  カヨ「わたしはいいのよ。ただ親がね」


  チヨ「うん。わかった。ツネ先生たちが戻るまで勉学を短縮しましょう。仮眠のあと少しだけ一日の反省をみんなでしたら終わりましょう。それなら暗くなる前に帰れるよね」


  カヨ「チヨちゃん。ありがとう」


  チヨ「ここではチヨ先生と言ってね」


  カヨ「あっ」


 顔を見合わせて笑う。


  カヨ「ありがとっ」


 皆食後、チヨは奥の部屋にいるスミエと話す。


  チヨ「スミエ先生にお聞きします。スミエ先生はこのような手札は見たことや聞いたことがありますか?」


  スミエ「どうしたんですか。急にそのようなことを」


  チヨ「昨日、紙を下さった時にもしかしたらと思い」


  スミエ「声が聞こえてたので、紙が要るなら不要になった紙をいくつか渡せば足りるかと思っただけです」


  チヨ「それで、見たことありますか?」


  スミエ「そうですね。ありません。ありませんが、チクゴの国やトサの国に”かるた”というものがあると聞いたことがあります。同じように紙に絵があるそうです」


  チヨ「へぇ、絵ですか」


  スミエ「もっぱら博打ばくちに使用されてると聞きます」


  チヨ「ありゃ」


  スミエ「とはいえ、チヨ先生の手札はここだけで使用してるので、大丈夫かなとは思います。まぁ、それでも。博打の好きな者たちからすれば、勉学で使う松ぼっくりでも博打に使うでしょうから。防ぎようがありませんな」


  チヨ「良いのではないでしょうか。博打で人気が出たとしても文字として覚えることが出来るのであれば決して悪いことではないと思います。博打でも賢さが問われるなら、一段階上の博打だと考えればまだ良いのではないでしょうか」


  スミエ「ふふ。チヨ先生は、ツネタロウ様とよく似てらっしゃる。さすがは、片腕ですね。話してるととても楽しいですよ。またなにかあればお声掛けください」


 人見知りで人嫌いのスミエが心を許したうちのひとりにチヨが入った。


 皆食をして仮眠。午後からの勉学はヘイジ先生のお話。

 ヘイジの今日のお話は、手札の話。漢字のつくりが手札のように宙を舞うという話。それをチヨ先生に話したら手札が出来た。その手札を子供たちが楽しんでくれたことがとても嬉しかったと話す。

 ヘイジは心から喜びの言葉があふれ出た。


 帰りの挨拶にチヨ


  チヨ「みなさん。今日も一日お疲れ様でした。明日より午後が少し短くなります。お迎えに来られる方にお伝えください。普段より半刻はんときほど早くなる予定です。仮眠後は、その日の反省点をみんなで話し合いましょう。それと、最後に武家の皆さんは残ってもらえますか?ではお開きです」


 ざわざわしながらも帰っていく。


  子供たち「せんせぇ。反省点ってなんですか」


  チヨ「その日に感じたことを話し合うという感じで考えてください」


  子供たち「今日だったら手札あそびが楽しかったでもいいの?」


  チヨ「そうですね。そこで楽しかったの先をみんなで考える感じでしょうか。たとえば、楽しかった、でも、こうした方がもっと楽しくなると思う。というのでも良いと思いますし、楽しかったけど手札が壊れそうで怖かった。でも良いと思うんです。楽しかった。だけで終わらずその先をみんなで考えましょう。ということです」


  子供たち「ふーん。遊び方を考えるってこと?」


  チヨ「うん。それでもいいですね。それ以外でも良いのですよ。たとえば、皆食で箸の持ち方を注意された。正しい持ち方はどういうのだろうか。というのでも良いのです。その日に感じたことを議題にしてみんなで考えましょう」


  子供たち「難しそうだね。わたしでも出来るかな」


  チヨ「今こうして質問してくれてるのも反省点に繋がると思うんです。どんな些細ささいなことでも良いので、みんなで考えることを楽しみましょう」


  子供たち「こんなことでもいいんだ!」


  チヨ「そうですね。難しく思うかもしれませんが、とても単純なことなので明日以降しばらくこの形で楽しみましょう」


  子供たち「うん。わかった。じゃあね。チヨせんせい!」


 少し分かりあえたことで、子供たちは笑顔で帰って行った。

 残ったヘイジを含む武士たちにチヨからお願いがある。


  チヨ「遅くまで残ってもらいありがとうございます」


  ヘイジ「どうしたんです?」


  チヨ「明日から短縮することで、お迎えに来れない事が予測されます。申し訳ありませんが、武士の皆様にお願いします。他の子供たちのご自宅までの送りをお願いしたいのですが」


  ヘイジ「なるほど。帯刀たいとうしている我らが送ることで安全に家まで送ることが出来るというお考えなのですね?」


  チヨ「はい。(新入生で町方を親に持つ)ヨシヒサさんを除く皆様は元服げんぷくを済ませており武士となられたお方。帯刀を許されているため、万が一襲われた際に助けることが出来ると思います。また、武士に手出しする愚か者はそうはいないと思うのです」


  ヘイジ「まぁ確かに。ボクのように刀を振るより書物を読む方が好きな者でもはたから見れば、帯刀している武士にしか見えませんからね」


  チヨ「というわけで、お願い出来るでしょうか」


  ヘイジ「ちょっと待ってくださいね」


 そういうと、他のコレヒデを除く武士と武士のせがれと話し合う。


  ヘイジ「はい。いつもお世話になってるので大丈夫です。それに、しばらくの間、チヨ先生やツネ先生のお屋敷を警護するボクたちにとってこれくらい出来て当然だと思ってます」


  チヨ「心強い言葉を頂きました。よろしくお願いします。では、ふた組から三組に分けて送るようにしましょう」




 最後に日記を見て終わろう


今日でみっか目。手札が大人気だったな。やっぱり遊びが入ると無我夢中になっちゃうんだね。昨日の(漁師の)ヨシカツさんも楽しそうにしてたもんな。大人も子供も関係なく遊びながら学ぶというのは良いことだと思う。これをツネ先生にも教えてあげなきゃ。

ツネ先生早く帰ってこないかな。早く教えて褒めてもらいたいな。そうだ。スミエ先生の懐に入れた感じがしたな。あんなに話してくれて嬉しい。それに、ツネ先生と似てるって言われちゃった。でも片腕ってなんだろ。片腕は、クニアキ先生だよね。もう片腕がスミエ先生でしょ。わたしは片腕だったの?片腕ってもういっぽん増やしてもいいの?腕がさんぼんもあるなんてバケモノみたい。ふふふ。えっ?もしかして、わたしのことバケモノだと思ってるのかな。やだ。あれ?懐に入れたと思ったけど違った?

うーん。でも、良いようにとらえた方が良さそうな声色こわいろだったし、うん。今日は良いように考えて寝よ。あー今日も楽しかったな。おやすみ。


【あとがき】

 かるたが話しに出てきましたが、今の福岡県の有明海側で南にある大牟田おおむた市が日本発祥の地だと言われてます。現物はまだ見たことがありませんが、九州土産にかるたはどうか?と地元の方たちからよく言われます。ポルトガルとの交流交易(こうえき)で絵札で、一組48枚で構成されたカルタを手にしてすぐに複製したそうです。種子島といい、日本人はすぐに取り入れてモノにしちゃいますね。種子島というのは火縄銃のことです。種子島に打ち上げられたポルトガル船を助けたお礼に火縄銃を受け取りすぐにバラして組み立て複製するという。

 カルタですが、はじめのカルタを知らなくて調べたら今と全く異なる物でした。ほぼ、トランプですね。wikiで調べるなら、「天正かるた」で検索してください。年表になってるのでわかりやすいかな。画像検索でしたら「日本かるた文化館」の「初期の天正かるたの形」で調べてもらうとより分かりやすいのかなと思います。


 実際カルタでも賭博にする人がいますし、賢さも必要な賭博ならそれでもいいのかなと思いますね。


次回は、土曜日です。

頭の中では、そろそろ郎郎団(仮)の形などを書きたいのですが、割込みさせると読んでもらえないようなので、まだしばらくチヨの留守番で良いかなと。書き溜めればいいだけのことですし。悩んでます。それと、短編で書くかそれとも連載するか悩んでるものがあります。久しぶりにあれもこれもそれも書きたい気持ちになってます。ああ。ハゲそう。


また良かったら見てね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ