月の夢
ただ見た夢を文に起こしただけです
見慣れた路地に一人。
周りには車はおろか人すら見当たらない。
まるで、街に自分だけ取り残されてしまったかの様な静けさ。
そんな異質な空気感には目もくれず、私はただただ空を見つめていた。
ほんのり青みがかった暗闇に煌めく星々と、一際明るく、大きな存在感を放つ月。
私はその蠱惑的な月光に惹かれ、自然と月に釘付けになった。
──どれほど眺めていたか、突如月に変化が訪れる。
その夜は見事な満月であったはずが、月は少しずつ形を変えていく。
瓢箪を思わせる形になったかと思うと、今度は分裂した。片割れは真四角になり、空を縦横無尽に駆け回る。
──分裂し、結合し、多角形を作り出し、動き回る。
想像して欲しい。
月ほどの巨大な天体が形を変えては動いているのに、聞こえてくるのは夜風が耳をくすぐる音だけ。
恐ろしく不気味ではないだろうか。
それなのに目を背けることは叶わず、月はいつしか空を覆う。
それはまるで、夜空に浮かぶ万華鏡のようで.....。
──気づけば見慣れた天井と、触りなれたベッドの感触。
目覚めて初めて、今まで夢の中にいた事を知った。
化け物に襲われたわけでも、死にかけた訳でもない。それなのに、心にねっとりと絡みつく恐怖と、記憶に刻まれた美しさが頭から離れない。
──いずれ、この夢の続きを見てみたい.....そんな怖いもの見たさの想いを胸に、私は今日も瞼を閉じる。
貴方も良い夢を見れますように。
正直今まで見た中で2番目くらいに怖かったです