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幼馴染使用人への教育をはじめた

 ──ガシャン!


 既に使用人として働き始めて十日は過ぎたのだが、何枚皿を割れば気が済むのか。

 食器を洗う時も、皿を撫でているだけ。

 汚れや油が落ちていない。


 家事が全くできないベルベットさんに、丁寧に一から教えていったが全く成長しないのだ。


 ザーガルは毎日朝から外へ出かけている。

 おそらく仕事へ行っているのだろう。

 だから使用人としての仕事は、ほとんど私が教えている。


 使用人を雇ったことで、私の家事が以前よりも倍近く増えた。


「ベルベットさん、失敗して迷惑をかけてしまうのは構いません。そこから学んで失敗しないようにしてくだされば」


 ヘラヘラとした態度で反省の素振りは全くなかった。聞いているのかも怪しい。

「はーい。新しい食器買いに行かされるのもめんどくさいので気をつけますー」


 はぁ、胃が痛い。

 本家にいた使用人や執事がこの光景を見たらどうなることやら。


 ♢


 ──ドガッドガッ!!

 ──ドガッドガッ!!


「ベルベットさん! そんな包丁の使い方ないでしょ!」

「えー? でもちゃんと食材は切れていますよ」


 包丁を持ったまま腕を振り上げて、薪割りをするかのような勢いで振り落とすのだ。

 今まで聞いたことがないような凄まじい効果音がまな板に響き渡る。危険すぎるので、手を止めさせた。


「今まで包丁使ったことないのですか?」

「初めてですー」


 以前に趣味で料理教室をやっていたが、そこで教えていた小さな子供達よりも酷い。

 このままではベルベットさんが怪我をしてしまう。


「包丁を持っていない手で食材を押さえてね、こうやって……」


 ──トントントントントントン。


 しっかりと手本を見せて、一から教えた。

 小さい子供達も不器用ながら少しずつ上達したからベルベットさんも教えればきっと……。


「包丁のそばに手を添えるなんて……ジュリアは自殺するつもりですか!?」

「そんなわけないでしょう? 包丁はこれが基本ですよ。それから、前にも言いましたが、主従の関係はしっかり持ってください。ザーガルの前では旦那様もしくは主人様、私には奥様か奥方様と……」

「固いですよー。ザーガルは何も言わないですよー?」


 あぁ、胃が激しく痛い。


 私だってこんなに細かく言いたくはない。

 でも、もし客人がきた時に今のまま馴れ馴れしい発言をされてしまっては困るのだ。主にザーガルとベルベットさんが。

 客人に失礼な態度や言葉遣いではまずい。


「オンとオフをしっかり持てれば文句は言いません。ですが、このままでは困るのはベルベットさんですよ……」

「あーもう、はいはい、わかりましたー。おくがたさまー!」


 不貞腐れてもしっかり指示通り呼んでくれたけど、『わかりました』というのもどうなのだろうか。『承知しました』もしくは『かしこまりました』と言えないのだろうか。

 このままでは客人が来たときに、ベルベットさんが笑い者にされてしまう。


 それとも私が固すぎるのだろうか。


 いや、このままではいけない。

 やはりザーガルにしっかりと相談して、ザーガルからも言ってもらうようにしなければ。


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