アルト様の本心
すっかり容態も回復して元気になったアルト義兄様。
「ジュリ、クレープでも食べに行かないか? 今なら食べ放題キャンペーンをやってるらしいぞ」
「アルト様、私を太らせたいのですか!?」
「何を言っているのだ。ジュリは昔から屋敷内で一番の食欲だっただろう?」
「これでも少しは身体のことも気にするようになったのですよ!?」
アルト様のことを意識してからは自分自身の体型も気にするようになったのだ。
「五人前食べていた量を四人前に減らしたところで変わらないだろ! で、行くのか? 行かないのか?」
「……行きますわ」
クレープを食べるというよりも、アルト様の誘いを断りたくなかった。
にっこりと笑い、私の手を握ってくれる。
これだけで心臓の鼓動がどんどん速くなっていき、おかしくなってしまいそうだ。
一緒に住んでいるエイプリル家から仲良く出かける日が来るなんて夢のようだ。
「んーーまーー!」
浮かれていた私は案の定、直ぐに本性が出てしまい次から次へと出されるクレープに夢中になった。
「よし、ジュリらしくなった!」
「え!? アルト様、私今までもこのような素振りはしなかったと思いますが……」
夢中に食べることをやめて冷静になって考えてみた。
今まで屋敷の中でも上級民族としての教育をされていたため、食べる量以外は貴族のような素振りをしていた。
上品な態度や言葉遣いをしていたはずだし、もちろんアルト様にも今日のような態度や口調は見せたことはないはずだ。
「実際に見ていなくても、普段のジュリの態度を見ていたらこれが本性だとわかるだろう」
「え!?」
「俺はむしろ嬉しいんだ。ジュリが誰にも見せないありのままを俺だけに見せてくれて」
「そ……そうですか? ではこのまま食べていても?」
「もちろんだ。それにその敬語もなくしてくれれば尚良いんだがな」
「わ……わかりましたよ。でも心配ですね」
「なんでだ!?」
「だって、私のこういう姿でアルト様が幻滅してしまうのではないかと──」
「何を言っている!?」
バンっとテーブルを軽く叩いて驚いたが、真顔で嬉しい言葉をかけてくれるのだった。
「俺はジュリのあるがままを好きでいたいのだ。猫を被った姿は可憐かもしれないが、ジュリが気を使わずに落ち着ける空間を作りたいのだ。義兄と……いや、男として」
「アルト様……」
私は今までそのようなことを言われたこともなかったので、嬉しかった。
しかも今異性として夢中になっている相手にこんなこと言われるなんて思わなかった。
「じゃあ……」
「食べようか!」
「えぇ!!」
ストッパーが完全に解除されて、私は今までで最高に満足且つ満腹な休日を終えた。
ただし、その日の夜、お腹を下してお花を摘みに行く無限ループをすることになってしまったことは黙っておく。




