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Black File  作者: 葱鮪命
176/193

情報伝達試験

「なんかすげー疲れた......」

「長いこと喋ってたね。何を喋ってたの?」


 アドニスの試験が終わったのは、スカイラの試験が終わった三十分後だった。げっそりとしたアドニスは、「言わねえよ」と睨んでくる。


「大体、お前は何でそんなに早く終わったんだ?」

「うーん。分かんないけど......聞き取り調査は一回だけやったことがあるし、アドニスみたいに怖い顔して試験受けなかったし......」

「けっ、次は絶対に負けねえ」

「試験だから勝ち負けは無いと思うけど......」


 スカイラたちは、前を歩く星4研究員について歩いていた。地下通路を通って実験室がある施設まで移動しているところなのだ。スカイラを担当した星4研究員は先に行ってしまったようで、アドニスを担当した研究員が二人を誘導していた。


「で、次の試験は何なんだよ?」

「さあ......」


 聞き取り調査の試験は味気なく終わってしまった。詳しい結果は後で知らされるのかもしれない。


 スカイラは、バインダーに目を落とす。これが配られた時、紙は二枚挟まれていた。さっきの試験で一枚を提出して、残る紙は一枚だけ。次の試験で使うのだろう。


「情報伝達の能力を図るとか言ってたよな」

「うん。情報伝達って何だろね」

「知るか」


 前を歩く星4研究員は、黙って歩いている。試験中だから私語は厳禁なのだろうか。だとしたら、自分たちは注意対象だろうが。


「はい、着きました。今から二人には別々の部屋に入っていただきます」


 突然、研究員が足を止めた。そこはまだ通路で、奥の施設までは距離がある。


「此処の部屋に、スカイラさんだけ入っていただけますか?」


 そう言って、扉を開く研究員。中は小さな会議室になっている。プレートは「会議中」の札がかけられていた。スカイラは星4研究員とアドニスを交互に見る。


「僕ら......一緒に試験を受けるんじゃないんですか?」

「同じ試験を受けては貰います」


 含みのある言い方だった。詳しく聞く前に、スカイラは部屋に押し込められ、アドニスは扉の向こうに消えてしまった。

 部屋に一人取り残されたスカイラは、中央に置かれた四角いテーブルの上に、冊子が置いてあるのに気がついた。


 近づいてそれを開いてみると、図形やら数字やらがそれぞれのページに書いてある。色とりどりの線が描いてあったり、動物の絵が描いてあったり。マスの中に数字や記号が並んでいたり、丸い図形だけが描かれていたり。


 全てのページに共通しているのは、上の半分がそれらの意味不明な記号やら図形やらで埋められており、下半分は文字で埋められていることだった。


「黄色のハートマークが一つでもある場合、星のマークの数が奇数ならば赤いボタンを上げる。偶数ならば下げる......」


 全く分からなかった。誰かの忘れ物だろう。

 それよりも、この部屋で自分は何をさせられるのだろう。


 バインダーを再度見てみるが、それは白紙だった。


「アドニス、何処に連れて行かれちゃったんだろ」


 さっきの星4研究員の言い方では、アドニスと同じ試験を受けることにはなっているようだが、全く同じというわけではなさそうである。


 あまりにも試験に関する情報が無いので、スカイラは自分が星2になれるか不安になってきた。

 また落ちてラシュレイに恥をかかせるようでは、助手としてオフィスに置いてもらえなくなるかもしれない。それは何としてでも避けなければ。


 ビーッ、ビーッ!


 スカイラは肩を竦めて、天井のスピーカーを見上げる。聞いた事の無い音だ。全身に嫌な汗を吹き出させるような、不安を煽る音だった。

 身を固くしていると、警告音はボリュームを下げられた。続いて、次のような放送が入る。


『訓練放送、訓練放送。たった今、研究施設の倉庫内で爆弾が発見されました。研究員は係員の支持に従い、速やかにエントランスに避難してください。また、受験者のスカイラ・ブレッシンさん、そしてアドニス・エルガーさんは、爆弾の解除を試みてください』


 例の研究員の声だった。スカイラはびっくりして部屋から出たが、廊下で談笑する研究員たちの表情は朗らかだ。どうやら、今の会議室の中だけに響いていた放送らしい。


「これって、試験が始まったってことで良いのかな......」


 あの研究員は戻って来ない。スカイラは扉を閉めて、部屋を見回す。放送はもう止まっていて、これ以上新たな指示が飛んでくることは無さそうである。


 そうなると、あの冊子は試験に関するものなのだろう。スカイラは冊子を掴んで開く。しかし、難解な言葉と記号の嵐に脳が混乱していた。


「ていうか、アドニスは!?」


 スカイラは冊子から顔を上げる。爆弾を解除しなければならないらしいが、アドニスと協力する必要があるようだ。


 爆弾は此処には無い。さっきの放送では、実験室がある施設_____つまり、この部屋を出て通路をまっすぐ行ったところだ_____そこの倉庫に爆弾があるらしい。アドニスは、きっとそこに連れて行かれたのだろう。


 スカイラが冊子を持ってウロウロしていると、壁にかかっている電話が鳴った。今はそれどころではない。自分が取っても良いのだろうか。誰か、星が上の研究員を呼んでくるべきか?


 そう思って扉に手をかけて、スカイラはハッとした。そして、その手で子機を取る。耳に押し当てると、


『はあ、はあ、やっと出たな! 何ぼさっとしてんだアホッ!』


 物凄い怒号がスピーカーから飛び出してきて、スカイラは思わず耳を離した。


「ちょっと、聞こえてるよ、もう少し声を落として......!」

『んなこと言ってる場合じゃねえんだよ! 爆弾の解除するんだっつの! さっさと準備しやがれ!』


 電話越しに物凄い気迫である。まるでそこに本物があるかのようだ。彼はそれが偽物だと知らないのだろうか。さっきの放送ですっかり雰囲気は感じ取ったが、廊下では放送は流れていない。アドニスは、これが訓練だと知らないのかもしれない。


「落ち着いてよアドニス。さっき廊下を見たけど、放送は僕らにしか聞こえてないみたいだよ。これは試験なんだと思うけど」

『そんなの分かってる!! 俺が焦ってんのは、そんなバカみてえな理由じゃない! 時間だよ! 制限時間!!』

「制限時間?」


 何やら、此方とあちらでは随分状況が異なるようだ。スカイラは、アドニスが居る状況を想像してみた。


「そこに爆弾があるの?」

『ああっ、ある! あと七分しかねえぞ! お前がちんたらしてるから、九分だったのが、七分になったんだよ!』


 おそらく、時間内に解除することが合格条件なのだろう。しかし、電話の相手があまりにも動揺しているので、スカイラはまず落ち着かせることを試みたのだった。


「お、落ち着いてよアドニス。取り敢えず、状況は分かった......うーんと、爆弾があるんだね。それを解除すれば良いんだよね」

『そう言ってんだろっ!』


 スカイラは耳を抑えながら、冊子を開いた。おそらくだが、これは爆弾を解体するためのマニュアルなのだ。これに載っている情報が、アドニスの手元にある爆弾と合致しているのだろう。このマニュアル通りに解体出来れば、きっと解除できるのだ_____と、表紙に分かりやすい文字と大きさで書いてあることに、スカイラは今気づいた。


『何黙ってんだ! 早く教えろ!!』

「え!? あ、うっ、うん! ええっと......」


 スカイラは一ページ目を見た。爆弾の形が載っている。真っ黒なボーリングの玉のような球状、ラジオのような平たい直方体、サイコロのような立方体。この三つに分けられるようだ。


「か、形! 形を教えてくれる!?」

『んなのサイコロ状だわ! 考えりゃ分かんだろ!』

「だ、だってこの冊子には三種類書いてあるんだもん!!」

『そんなの知るか! さっさと次行け! もう六分半しかない!!』

「わ、わかったよ」


 スカイラは、本当にアドニスの前にあるのが偽物なのか分からなくなってきた。時間制限があるとは言え、アドニスの焦り様はそれ以上に思える。マニュアルを捲る手が震え始めた。


「え、えっと、だから......立方体の爆弾なんだよね。どんな面があるか教えてくれる?」

『ボタンがいっぱいある!! 動物のイラストが付いたボタンだ! うさぎ、象、亀、カンガルー、イルカ。それと、配線みたいなのが出てる面がある! ドラマでよくあんだろ、赤と青を切って、どっちかが正解っつー......』

「うんうん、あるね」


 アドニスの言葉を頼りに、スカイラはマニュアルを捲り続ける。それぞれのページに、該当する面の解除方法が書いてある。立方体となると、六面それぞれが解除方法の異なる面なのだろう。


『それから......それから、タイマーがついている面。タイマーの他に、数字とアルファベットの羅列が書かれたシールが貼ってあるな』


「それで全部の面?」


『そうだ』


 立方体なので六面あるのだが、三面だけにしか解除機能が無いのだろう。初心者の二人のために簡単に作られたか、アドニスがまだ新しい面の存在に気がついていないか、どちらとも取れる。


 取り敢えず言われた情報を元に、スカイラはマニュアルを捲った。最初に開いたのは、『アニマルプッシュ』と書かれたページである。アドニスが言っていた、動物の顔が書かれたボタンの面の解除方法に関するものだろう。


「じゃあ、アニマルプッシュから行くよ!!」

『なんだそれ』

「あ、えっと、動物のやつ! 動物のボタン!」


 ああ、と納得した声がした。相手にはこのマニュアルが見えないのだ。面ごとの名前など知る由もない。自分の見えている情報を、相手にもわかる言葉に変換する必要があるのだ。


 スカイラはページを舐めるように見る。様々な動物がずらりと並んでいる。


「ええっと、動物の名前をもう一度言って!」


『うさぎ、象、亀、カンガルー、イルカだ! 何度も言わせんな!』


 相手の言葉にいちいち反応している暇など無い。ページ上には、縦と横五列に動物の顔が並んでいる。そのマスの上には左から右に向かって矢印が一本伸びていた。何か順番が定められているらしい。


 ページの下の方に簡単な説明があった。爆弾のボタンに描かれた動物をマスの中から探し、矢印が向かう方向に順番にボタンを押して行けば良いようだ。


 スカイラは、アドニスが言った動物を探した。縦に分けて見るならば、アドニスが言った動物が異なる縦列に配置されている。一番左の縦列には、上から三番目の位置にカンガルーが居る。最初はカンガルーのボタンを押せば良いのだろう。


 次の列に移ると、亀が一番上に居る。次に押すボタンが亀だということだ。


「分かった!! 順番を言うからね、その通りにボタンを押して! えっと、カンガルー、亀、うさぎ......」

『カンガルー、亀、うさぎ......』


 カチカチと音が聞こえる。


「イルカ、象!!」


 スカイラは矢印の最後、即ち最後列の動物まで伝え終わった。すると、電話の向こうからアドニスの嬉しそうな声が聞こえてくる。


『光った!』

「えっ!? 何が!?」

『ランプが! 青いランプが付いたんだ!』


 そういえば、とスカイラはマニュアルを前のページに戻す。爆弾の面にはそれぞれランプが付いていて、その面の解除をすることで青く点灯するらしい。


「最終的に、全部の面のランプを点灯させれば良いんだ......」


『スカイラッ!』


「ご、ごめん」


 なかなかじっくりとマニュアルを読む時間が無い。だが、今のようなことを繰り返していけば良いのだ。スカイラは次の面に移るように伝えた。


『線を切る面だ。近くに電線用のハサミがある。これで切れるはずだ』


 スカイラは該当するページを開く。そのページは両開きに情報が書かれていた。それだけ複雑なものらしい。一気に目に飛び込んでくる情報量にスカイラは思わず顔を背けたくなる。


『おい、早くしろ!』

「ちょ、ちょっと待って......えっと......」


 線は様々な色に分かれているらしい。ドラマのように赤と青の二色と言うわけにはいかないようだ。


「な、何色があるの!?」

『三本だ! 赤、白、緑!』

「赤、白、緑......」


 スカイラは一番初めの説明文に目を向ける。


 ・五本以上の線があるならば、一番下の線を切る。その線が黒色ならば、その上の線を切る。


 ・線が五本未満の場合、黄色の線が含まれているならば必ず黄色の線を切る。


「黄色の線はある!?」

『ねえよ!! アホか!』

「だ、だよね」


 しっかり赤と白と緑と言っていた。スカイラは次の文に移った。


「ええっと、黒と白しかない場合......違う。赤と青と黄色の三色の場合、違う......」

『おい、あと四分だぞ!』

「わ、分かってるよ!!」


 スカイラは指を文字に走らせる。


「えっと、赤と、青......違う。白がひとつでも入っている場合......これだっ!!!」


 次のページの上部に、ついに求めている情報が出てきた。


「三本以内で、白がひとつでも入っている場合_____且つシリアルナンバーの最後の数字が偶数ならば白を、奇数ならばそれ以外の色を切ること!」


『待て、シリアルナンバーって何だよ!!』


「......わかんない」


『ふざけんなお前っ!!!』


 怒鳴られても仕方がない。このマニュアルを作ったのは自分ではないのだ。スカイラは急いで他のページを捲って確認する。が、焦りのためかそのようなページが全く見つからない。


『おい、どうすんだよ!』

「どうすんだよって......」


 スカイラの、ページを捲る手がつい止まった。心がザワザワするのは、制限時間だけが理由では無い。焦燥感を掻き立ててくるアドニスの苛立ちを孕んだ声に、自分の気持ちが振り回されているからだ。


「アドニスも考えてよ!! 僕の手元にはマニュアルしかないの! 僕だけじゃどうしようもならないから! アドニスも何か探してよ!」


 スカイラは声を大きくした。いつの間にか手のひらがびっしょり濡れている。背中も冷たい。緊張のためか、体中に汗をかいていた。


 この試験に落ちたら、また同じ試験を受けなければならないということだ。いよいよ、自分の存在意義が怪しくなってくる。使えない助手など、傍に置いておきたいと思わないだろう。


 電話の向こう側は黙っていた。電話越しの大声にアドニスは驚いたのだろうか。それとも、シリアルナンバーを探しているのか。


 スカイラは自分の呼吸音だけを聞いていた。興奮しているためか、呼吸が苦しい。


 残り時間はそう多くないはず。爆弾が本物ではないと言え、これを解除出来なければ当然、自分たちに情報伝達の能力がないという判断が下される。それどころか、試験は落ち、先輩の顔にまた泥を塗る結果になるだろう。


 いくら優しい先輩とは言え、三度目はもう面倒も見てくれないだろう。それ以上に、助手で居られなくなるかもしれない。


 永遠に星2への壁の前で足踏みしている助手など、誰が欲しいと思うだろうか。


 スカイラの目からぼたぼたと大粒の涙が溢れてきた。床に開かれたマニュアルの上にそれが落ちると、インクが滲み出す。鼻を啜る音で、アドニスは気がついたらしい。


『泣いてる場合か!! お前よりも俺の方が危険な状況に居るんだからな!』

「だから、その爆弾は偽物だってば......!!」

『それだけじゃねえ! 試験の結果が悪かったらカーラに助手外されるかもしれねえんだぞ! お前、その責任取れるだろうな!!』

「僕だって同じこと考えたし! ラシュレイさんが僕のこと捨てたら、僕はもう生きていけないんだから!」


 アドニスの言葉にスカイラは負けじと言い返す。二人は少しの間、焦る気持ちをぶつけ合っていた。


 先輩の傍を離れたくない。先輩の顔に泥を塗りたくない。相手の理解力の無さが自分の足枷になっていると、二人は互いに罵倒し続けたのである。


 それが済むと、少しの沈黙があった。


 スカイラは自分で驚いていた。自分がこんなにも気持ちを表に出すのは珍しいと。アドニスも最初、それに驚いているらしかった。何にしても楽天的なスカイラが、人に対して強く自分の意見を投げつけることはほとんど無かったからだ。


 少しして、アドニスが小さく呟く。


『......あと二分半しかない。お前、ちょっとは反省しろよ』

「アドニスだって。ずっと喋ってたくせに」


 スカイラはびっしょり濡れたページを白衣の袖で拭いた。


「喧嘩は後でにしよう。取り敢えず、僕らはお互いに先輩の傍を離れたくないって思っているみたいだし」

『そうだな』


 スカイラは小さく息を吐いて、さっきの文をもう一度読み上げた。


「三本以内で、白がひとつでも入っている場合、且つシリアルナンバーの最後の数字が偶数ならば白を、奇数ならばそれ以外の色を切ること」


『シリアルナンバーっていうのが分からないけど、それっぽいもんは見つけた』


 冷静になったアドニスの声がする。


『この爆弾、最初に三つの面があるって言ったろ。立方体だから本当は六面だけど、爆弾の解除に関係がありそうなのは三つの面だけだ』


 うん、と頷いてスカイラはその先を促す。


『動物のボタンの面はクリアした。あとは、今解こうとしてる電線の面。それから、タイマーの面。その下に、アルファベットと数字の羅列が書かれたシールが貼ってある』


 スカイラはピンと来た。濡れたページを、今度は落ち着いて捲った。少しページを戻すと、爆弾の構造について書かれているページに辿り着いた。ページの上部には、そのページにどんな情報が載っているのかが書いてある。スカイラは、人差し指でその文字をなぞった。


 タイマーと、シリアルナンバーの面_____。


「それだと思う、そのシール。シリアルナンバーだよ、それ」

『最後の数字が奇数か偶数かだったな」

「うん」

『7だ』


 奇数である。スカイラはページを戻した。もう一度さっきの文章を見る。切るべきは、白以外の線である。


「赤と緑。二本とも切って」

『分かった』


 スカイラは息を止めた。パチン、と音がする。続いて、もう一度同じ音。


『付いた、ランプ』

「タイマーは......?」


 少しの沈黙があった。


『止まってる』


 その言葉を聞いた時、スカイラは床にへなへなと倒れるのだった。


 *****


「おめでとうございます。二人とも、実技試験クリアになります」


 最初に移動させられた別室に戻ってきたスカイラとアドニス。アドニスとの電話を切ると、やがて扉が開いて星4研究員が顔を出したのだ。彼の後ろにはアドニスの姿もあり、スカイラはそれを見てホッとしたのだった。


「じゃあ、星2になれるということですか!?」


 スカイラの問いに対して、星4研究員は微笑んで頷いた。それを見て思わず隣のアドニスに抱きついた。


「やっったあ!!! 僕ら、星2だよ!! これで助手を外されないで済むんだよ、アドニス!!」

「離れろ! 俺はお前と違って最初から落ちるとか思ってなかったんだよ!!」


 そう言われて乱暴に引き剥がされた後でも、スカイラは嬉しくて堪らなかった。もう一人の星4研究員が部屋に入って来て、新しく作り変えられた研究員カードを配り始める。


「大きな壁を超えて頂きましたが、研究員としてはまだまだこれからです。二人にはこれからも頑張って頂きますよ」


「はい!!」


 スカイラは新しくなった研究員カードを見つめた。星2と書かれたそれは、今は何よりも輝いている。アドニスも隣でじっとカードを見つめている。カードを裏返したり、傾けたり忙しない。嬉しさが全面に現れていた。


 こうして二人の研究員は星2へと昇格した。二人が受けたこの試験が、今後B.F.の星2昇格試験の基礎となっていくのである。

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