B.F.研究員の1日
B.F.研究員は極秘の仕事を受け持つために、施設から出ることを固く禁じられている。つまり、研究員らは施設の中で生活している。
ラシュレイは、ノールズと同じ寝泊まり部屋_____自室を使っていた。
と言っても、ベットとクローゼット、シャワールームがついているが、それくらいしか無い狭い部屋だ。
「......」
ラシュレイは眠りから覚めて、壁にかけてある時計を見た。朝の七時を指している。
今日は仕事が特にない。
ノールズは隣でまだ寝ている。ラシュレイはもう少しだけ寝よう、と枕に頭を戻し、目を瞑った_____。
ピピピ、ピピピ、ピピピ......。
「......」
隣のベッドを見る。ノールズが布団を蹴って眠っていた。サイドテーブルには目覚まし時計が置いてあり、そこからけたたましい音を出している。
「ノールズさん」
ビビビビビビビ......。
ラシュレイは、朝の二度寝を邪魔された仕返しにと言わんばかりに自分の枕を掴むと、それを彼の顔面めがけて思いっきり投げつけた。
バフッ!!
「うごあっ!?」
彼の声が聞こえてくる。どうやら起きたようだ。
「な、何すんの!?」
「目覚まし煩いです。どうにかしてください」
「あ、ごめん......」
ノールズが目覚ましを止める。部屋に静けさが戻ってきた。
すっかり今ので目が覚めてしまった。
ラシュレイは仕方なく二度寝を諦めて起きることにした。顔を洗って、研究員用の服に着替えながら後ろのベッドでぼんやりしている自分の先輩を振り返る。
「早く起きてくださいね。今日は日曜会議あるんですから、仕事があれば片付けなければなりませんよ、ノールズさん」
「うおお、そうじゃん......うわああ......」
枕に頭をグリグリと押し付けてノールズが言う。
何をしているんだ、とラシュレイは呆れ顔で彼から目を逸らし、そういえば、と思い出した。
自分も自分で単体実験の資料を纏めなければならないのだ。
重い仕事を思い出して、彼は小さなため息をついた。
*****
やがて、ラシュレイ達は朝食をとるために食堂へと向かった。
「フルーツサンド買うからさあ、いい加減結婚しようって」
「馬鹿言うならさっさと仕事場に行って頂戴。日曜会議もあるんだから暇じゃないのよ」
イザベルに求婚してあっさりとフラれるノールズを横目に、ラシュレイは朝食をテイクアウトした。
オフィスにて朝食を食べながら単体実験の記録を纏める。
「なあ、ラシュレイ。此処を纏めた資料ある?」
「ああ、そこですか。ありますよ、ちょっと待ってください」
「んー」
昼になればまた昼食を取りに食堂へ。
今日は日曜会議があるためオフィスはラシュレイ一人になる。ノールズが居ないと静かなため作業も捗るのだ。
夜はまた夕食を食べに食堂へ_____。
ラシュレイは眉を顰める。
B.F.職員は基本的にオフィスと食堂の間を行ったり来たりしかしていない気がしたのだ。
夕食を食べてラシュレイがオフィスに戻ってきたのとほぼ同時に、ノールズも日曜会議から戻ってきた。
今日の会議の内容はB.F.に居たらどうしても避けられない仲間の死などから来る心の病に対してカウンセラーを設けるかどうか、と言うものだったそうだ。
カウンセラーは確かに必要かもしれないが、B.F.を出る頃には鋼の精神が身について居そうな気がする、とラシュレイは思った。
「よっしゃー、報告書の手直しするかあー」
まあ、彼なら精神異常に陥ることなど絶対にないだろうが。
ラシュレイはノールズをチラリと見て、コーヒーを入れる。
自分もやろう。
仕事が溜まっているデスクについて、ラシュレイはペンを握る。
B.F.の研究員は決して楽な仕事では無いが、信頼する背中の気配を感じてするこの仕事が、彼は嫌いでは無い。