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23「王国最強の座を手に入れました」




 誰もが言葉を失っている中、サムは静かに国王の正面で膝をついた。

 唖然としていたクライド国王が我に返る。


「審判!」

「は、はい! 勝者! サミュエル・シャイト!」


 名を呼ばれたリュードがサムの勝利を宣言するも、歓声はなかった。

 誰もが、まだ十四歳の少年が、王国最強の魔法使いを瞬殺した事実を受け入れることができないのだ。

 それは、見守っていたウォーカー伯爵家の面々と、シナトラ家の親子も同様だった。


「――まさか、一瞬でアルバートを亡き者にしてしまうとは思いもしなかった……余は自らの目を疑ってしまった。だが、問いたい、サミュエルよ」

「はい」

「アルバートを殺す必要はあったか?」

「手加減のできる相手ではありませんでした」


 嘘ではない。

 手加減など情けをかけることができる相手ではとてもじゃないがなかった。

 サムの返答に、国王は難しい顔をしていたが、納得したのか頷いた。


「そうか、ならば構わぬ。サミュエル・シャイトよ」

「はっ」

「今日からそなたがスカイ王国最強の魔法使いだ」

「ありがとうございます」

「そして宮廷魔法使い第二席の地位を、いや、ウルリーケ・シャイト・ウォーカーがいた第三席をそなたに任せよう」

「お気遣いに痛み入ります」


 サムは国王の配慮に感謝した。

 ウルがいた宮廷魔法使い第三席を任せてもらえることは、ウルの後継者としてありがたい。

 宮廷魔法使いと王国最強の座を欲したが、アルバートの後釜などごめんだった。


「今、この瞬間から、この国のために尽くしてほしい」

「もちろんです。この国のために魔法を使います」

「うむ。よろしくたのむ」


 満足そうに頷いた国王は立ち上がると、観衆に声高々に宣言する。


「聞け! 皆のもの! ここに若き最強の魔法使いが生まれた! 皆で讃えよ!」


 国王の言葉が響き渡ると、拍手と感情が湧き上がる。

 見渡せば、ウォーカー伯爵家のみんなと、シナトラ親子も「よくやった!」と声をあげているのがわかった。

 国王の傍では、護衛をしているギュンターがこちらに向かってウインクをしているが、これは無視した。


 だが、中には拍手しながらも苦々しい顔をしている身なりのいい人間もちらほら見受けることができる。

 おそらく、彼らはアルバートの後ろ盾だった貴族だろう。

 懇意にしていた宮廷魔法使いがいなくなったことが面白くないはずだ。


(ま、アルバートは旦那様と敵対している派閥にいたらしいから、どうでもいいか)


 貴族のしがらみなどには興味がない。

 サムのすべきことは、宮廷魔法使いとスカイ王国最強の座を足がかりに、いずれ大陸最強に、そして世界最強の魔法使いに至るだけだ。


(――ウル、俺、やったよ)


 あとで最愛の師匠の墓参りをしよう。

 彼女に、スカイ王国で最強の魔法使いになったことを報告するのだ。

 きっとよくやったと褒めてくれるはずだ。

 もしくは、決闘騒ぎを起こしたことに呆れるかもしれない。

 サムは、ウルがとてつもなく恋しくなった。


 切なさが胸にこみ上げ、涙がこぼれそうになるが唇を噛んで耐える。

 涙は流さない。

 笑って前に進むと決めたのだから。


「サミュエルよ。今後のことは後日、通達が行こう。まずは、そなたを心配し、応援していた者たちを安心させるといい」

「ありがとうございます」

「そして――よくやった」

「え?」


 サムが反射的に顔を上げると、深い笑みを浮かべた国王がいた。

 彼がサムのなにに対して「よくやった」と言ったのか、サムにはわからない。


(わかる必要もないか。国王様のお考えなど、俺にわかるはずもない)


 国王が椅子に腰を下ろしたのを合図に、サムは立ち上がり、深々と一礼すると、大切な家族たちのもとへ走ったのだった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 国王がまともなら、いくら強くてもアルバートのような問題児は居ない方がマシだろうしな。
[一言] まぁあんなクズが国の最強なんて嫌な人も多いわな。
[気になる点] 国王も何か腹に一物を抱えていそう。 恐らく王族派と貴族派の代理戦争だったってとことかな? 今後の流れに期待。
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