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52「尋問です」①




「まずその前に、尋問です。――カル」

「はいっす!」

「ここまで僕を怒らせたんですから、それ相応の報いを受けてもらいましょう」


 友也が部下であり準魔王のカル・イーラの名を呼ぶと、どこからともなく笑顔で転移してきた。


「先ほどぶりっすね。まさか、この手でアーリーさんを苦しめることになるとは……全然辛くないっすけどね! むしろ、数百年前に私のプリティーなお顔をぶん殴ってくれたお礼ができて嬉しっすよ! うひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「まるで悪側だな!」


 唇を三日月にして高笑いするカルの姿は悪党そのものだった。


「カル・イーラ! てめぇ、どちらかと言ったら、俺のほうが散々ぶん殴られたじゃねえか!」

「美少女の顔を一発でも殴ったら死罪っすよ!」

「はっ、さすが変態魔王の部下だな! 主はド変態で、部下は自分が美少女だと勘違いしていやがる!」

「ははーん! 軽口もそこまでっすよ。これを見てもまだ強気になれっすかね?」

「なに?」


 カルが指を鳴らすと、アーリーの顔色がはっきりと悪くなった。

 しかし、サムは首を傾げてしまう。


「なんで、ピンクのひらひらした可愛いお洋服が出てくるの?」


 意味がわからない、と呟くサムがちらりとアーリーを見ると、彼女は青い顔をして、汗をダラダラ流していた。


「あの、アーリーさん?」

「な、なんだ、新米魔王!」

「なんでそんなに動揺してるの?」

「それは、その、色々あるんだよ!」


 歯切れの悪いアーリーに変わって、カルに負けないくらい悪党丸出しの顔をしている友也が口を開く。


「僕が説明してあげましょう」

「や、やめろ!」

「猫系の獣人族アーリーくん。褐色の鍛え抜かれた肉体は、まさに戦士! しかし、その実態は!」

「やめろぉ!」

「ふりふりの可愛いもの好きな女の子だー!」

「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


(友也もカルもイキイキしてるわー。悪魔みたいな奴らだな。まあ、魔王と準魔王だけどさ)


 ざっと十枚のふりふりが愛らしいワンピースを並べると、友也とカルは邪悪に笑った。


「まさか君がこんな趣味をしているとは思わなかったよ」

「急遽調べたっすけど、意外と見つかるものっすね!」

「――くっ、殺せ!」

「尋問はこれからですよ!」

「せっかくっすから、ここで着替えてもらいましょうか! どれだけ似合っているか見てあげますよ!」

「この悪魔ども! 俺は、屑な主人とクソみてぇな同僚どものせいでささくれた心を癒すのに、ちょっと可愛い格好をして気分転換しているだけだ! それをよくも! ああっ! やめろ、それは一点ものなんだぞ! 今は亡き、マダムパトラットが作ってくれたんだ! 潜伏中の俺がマダムと接点を作るのにどれだけ時間と労力をかけたのかわかっているのか!」

「……潜伏していた割には意外と余裕がありましたね」


 感心したのやら、呆れたのやら、友也は複雑そうな顔をした。


「ま、いいでしょう。では、尋問の開始です。――君のコレクションを焼かれたくなければ、君の主人であるオーウェンがなぜ今になって喧嘩を売るような真似をしてきたのか吐いてもらいましょう。そして、なぜ魔王の中からサムを狙ったのかもです」

「卑怯者! 俺のコレクションを燃やすだと! そんな非道なことが許されていいのか!」

「私物を燃やすところから始めてあげただけでも感謝してほしいですね。いきなり腕や足を切り落とされるようはましでしょうに」

「ふざけんな! 腕を切り落とされた方がマシだ!」

「それはそれは、いいことを聞きました。コレクションの価値は、君の四肢よりもあるようですね」

「ちくしょう!」


 友也の手に炎が宿る。


「てめぇ、マジか!?」

「マジですとも。というか、服を燃やすくらい躊躇いなくできますって」

「価値をしらねえからそんなことが言えるんだ!」

「では、話してください。少しくらいなら、考える時間をあげましょう」

「……お、おれは絶対に吐かねえぞ! 主人がとあるお方から力をもらって、魔王級になったとか、絶対に吐かないからな! ――あ、言っちゃった!」

「さっきから思っていたけど、この子ちょっと抜けてない!?」


 勢い余って元魔王オーウェンの秘密を暴露してしまったアーリーに、サムはたまらず突っ込んだ。





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