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50「喋ってもらいましょう」①




 すっかり秋になって心地よい風の吹くスカイ王国の王都。

 建国時からスカイ王家に支えてきた由緒正しい貴族ウォーカー伯爵家の中庭で、気を失ったひとりの女性が椅子に座り、これでもかと縛られていた。


「いろいろ縛り方ってあると思うんだけど、なんでよりによって亀甲縛りなんだよぉ。だから変態魔王って言われると思うんだけど。もっと自分の行動を顧みようよ?」

「言いたいことはわかりますが、これは魔封じの縛りと言いまして、相手を封じる昔からある技術なんですよ。この縄だって、魔力を持つ女性の髪を編み込んだものでして、準魔王くらいならしばらく拘束できます」


 とんでもねえ技術だ、とサムは戦慄した。

 この世界で独自に生み出されたのか、異世界人の影響なのか不明だが、考えた奴はロクでもないだろうと思う。


「で、だ。いろいろ聞きたいことはあるんだけど、まずね、あの人誰!?」


 サムが指さしたのは、見知らぬメイドさん。

 十代後半の美少女で、光輝くシルバーブロンドのロングヘアーをツインテールにしている。メイド服こそ着ているが、この世界にはあまりいない膝よりも上のスカート丈のメイドさんだ。

 なんとなくパチモノくさいのは気のせいだろうか、と考える。

 なによりも、どことなくギュンターと同じ匂いがするのだ。

 ちなみに、メイドさんは軽く膝を曲げて両手でチェキしながらウインクして舌を出している。媚び媚びだ。

 となりで対抗するようになぜか女体化してドレスを身に纏い、放漫な胸をこれでもかと強調した謎のポージングを決めているギュンターもいるが、こちらは無視でいいだろう。


「えーっと、あのメイドさんはティサーク国の筆頭宮廷魔法使いアーグネス・シーモンさんです」

「ティサーク国って、今スカイ王国に俺を引き渡せとか意味わからないこと言ってきた国だよね。宮廷魔法使い筆頭がメイドさんなんだ」

「いえ、中身は四十過ぎのおっさんです」

「うそん」


 間違いなく女体化させた奴がいる。

 サムはエヴァンジェリンに顔を向けると、彼女は気まずそうにそっと視線をそらした。

 エヴァンジェリンの隣では、一仕事終えた感を出してワインを飲んでいるダニエルズ兄妹がいる。

 ギュンター、友也、エヴァンジェリン、ダニエルズ兄弟。このメンバーが揃ったので、なにが起きたのかだいたい予想はつく。

 詳細は疲れそうなので聞きたくない。


「よし、メイドさんは見なかったことにしよう。それで、アーリーを捕まえたのはいいけど、いや、勝手に失神したからつれてきたんだけど、どうするの?」

「尋問します。必要なら拷問も。すべきことをして、彼女の主がなにを考えているのは吐き出させますよ」


 淡々と物騒なことを言う友也に、サムはリーゼたちを屋敷の中に戻るよう伝えておいてよかったと安堵した。

 この世界では捕虜の扱いがどうこうとかいう人道的なルールはない。

 もちろん、最低限の保証などはされるが、それはあくまでも人間の話だ。魔王に甘いルールなどない。

 友也がアーリーにどこまでするのか不明だが、妊婦にあまり酷いものは見せたくなかった。

 リーゼたちにはゾーイとジェーンがついていてくれるので、心配はしていない。アリシアのそばにはロボもいる。

 先ほどまで一緒にいたボーウッドは、サムの背後に臣下として控えている。


「オーウェン・ザウィードとかいう屑はですね、実に小心者なんですよ。自分は頭がいいと思って、部下を駒のように使う奴だったんですが、実際は感情の抑えがきかない子供がそのまま大人になった奴です。魔王が多すぎた時代、いろいろあって粛清をした際にちゃんと殺したはずなんですが」

「生きていた、と」

「害虫の如くしぶとくてイライラしますね。ですが、別に生きていたのはいいんですよ。あんな屑になにかできるわけがない」

「元とはいえ魔王だろう?」

「名乗っていただけです。まあ、準魔王に次ぐくらいには力があったので、魔族としては強い部類なんでしょうが、喧嘩も下手、部下の使い方も下手、ただ残虐性が強いだけの屑ですよ」

「相当嫌っているなぁ」


 友也がここまで誰かを嫌うの珍しい。

 彼の言動からは、はっきりとした嫌悪が浮かんでいた。


「ティサーク国で好き勝手やっていたようですが、それは別にいいんです。人間の、上が馬鹿な国が滅んだとしても、クーデターが起きようとしてもさしてもんだいはありません」

「じゃあ、なんで?」

「小心者で臆病で、根性なしの屑が、人間の国を使いサムという魔王がいるスカイ王国にちょっかいをかけてきたこと、そして部下を送り込んできたことが気になります。僕らに関わらなければ、小さな国を好き勝手していたとしても放置だったのに、なぜ自分から生きていることを知らせるようなことをしたのか?」

「潜伏中に相当鍛えたんじゃないかな?」

「はっ、あの屑がそんなことをするわけがないでしょう!」


 サムはオーウェンという元魔王の顔さえ知らないが、あまり友達にはなれないタイプだと思う。


「とりあえず、相手にはこっちに喧嘩を売って勝てる何かがあるってことかな?」

「僕はそう思っています。もしくは」

「もしくは?」

「単に、屑に馬鹿が足されただけかもしれませんね」





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