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40「不幸な人が来ました」②




 奇声を上げて飛びかかってきたギュンターに、アーグネスが逃げ出した。

 本能的な恐怖を覚えながら、一番害が少なさそうに見えたのか、ダグラスのほうに突っ込んでいく。


「どけぇえええええええええええええええええええええ!」

「俺に向かってくるとは良い度胸だ。サムを拐おうとするなら腕に覚えがあるんだろう? ちょっと手合わせしてくれよ」


 ダグラスが笑顔で拳を突き出すと、ぐしゃり、と果実が潰れたような音が響いた。


「お、おい、嘘だろ? この程度でサムをどうにかできると思っていたのか?」


 さすがにダグラスも、アーグネスの弱さに困惑気味だ。

 顔面を頑健なオーガの拳で破壊されたアーグネスは、なんとか呼吸ができているが放っておけば死んでしまうだろう。


「誰か回復魔法をしてやってくれ、これじゃ弱いものいじめだ」

「僕の麗しのサムを拐って、凌辱した挙句、洗脳してお嫁さんにしようと企むような外道はこのまま死んで終えばよいのだ!」

「すげぇなギュンター。よくこの一瞬で、そこまで想像したな」


 きっと奇声を上げたときにいろいろ妄想を滾らせていたのだろう。

 ダグラスが感心したような、呆れたような顔をした。


「僕には見えた! 純白のウエディングドレスを引き裂かれ、この中年男に凌辱されながら、健気に堪えるも、少しずつ身体は調教され――」

「想像の内容がキモいんだよっ!」


 ギュンターの妄想にエヴァンジェリンがたまらず蹴りを入れた。

 とはいえ、エヴァンジェリンもサムを拐かそうとしたアーグネスには怒りを抱いている。

 アーグネスがサムを誘拐できるできないではなく、そんなことをしようとした時点で有罪だった。


「単独じゃねーんだろうから、裏まできっちり吐き出させたいんだけど。どっかのクソオーガが殺しかけちまったからなぁ。しょうがねえ、私が治療してやるか」

「エヴァンジェリンが治療? できたのか?」

「とりあえず死ななきゃ良いんだろ?」


 雑な返事に、ダグラスだけではなくこの場にいる全員が不安になった。


「んじゃ、ぱぱっとやるか! ――んっしょ、あれ、違うな、こいつこんな顔だったか? あれ? おっと、んん?」


 治療という割には、聞いていて怖くなるような声がエヴァンジェリンから漏れている。

 不幸中の幸いというべきか、アーグネスの顔はエヴァンジェリンが壁になってみんなには見えなかった。


「ああ、もう! 面倒臭い! どうせ変態魔王が全部知っているんだろうから、生かしておく必要もねーか?」


 治療がうまくいかず、放棄しようとしたエヴァンジェリンに友也が苦笑する。


「一応、死なせないでください。彼はティーサク国で一番の宮廷魔法使いです。殺すと面倒くさくなりますよ」

「これが一番とか大したことがねえ国だな」

「魔王……いえ、竜にしたら人間などみんな同じでしょうに」

「そうでもねーぞ。そこの変態もそうだが、木蓮の回復魔法は真似できねーし、デライトの最大攻撃力は竜に匹敵するっての」


 友也とダグラスは、エヴァンジェリンが素直に人間を評価したことに驚いた。

 ふたりも木蓮とデライトの評価は同じである。


「つーか、こいつの背後とか全部お前が知っているんだろ?」

「いえ、残念ながら、僕は全能ではありませんので。ティーサク国が民を虐げ、傾いていること。最近、優れた魔法使いが生まれないこと。今まで侵略を企んでは失敗が続いたツケをそろそろ支払わなければならず、王家が焦っていることくらいですね。サムを拐って奴隷にしようとしていたことは初耳です」

「いちばん重要なことがわからねえのよかよ! お前から情報をとったらスケベしかのこらねーじゃねえーか!」

「失礼な! もっと他にも残るでしょう!」

「うるせぇな! こっちは呪いを使ってるんだから、邪魔すんな! ――あ」


 嫌な声が聞こえた。

 治療をするのになぜ呪いなのか、回復魔法ではないのか、最後の「――あ」とはなにかと聞きたいことが山のようにあったが、一同は言葉を飲み込んだ。


「やべ、やっちまった!」


 体格のよいアーグネスの身体は縮んでいく。

 何が起きた、と友也が声をかけようとして、口を開いたまま固まった。

 中年のおっさんだったアーグネスは、なぜか十台半ばの美少女になっていたのだ。


「なにやってるんですかぁああああああああああああああ!」

「しるかぁあああああああああああああああああああああ!」


 二度と、エヴァンジェリンに治療はさせない。

 友也は誓った。





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