36「招かれざる客が来ました」①
「遠路はるばる我が国への訪問ご苦労である。歓迎するつもりはないが、なにか用があるのなら聞こうではないか、使者殿」
スカイ王国王宮に、とある国の使節団が訪れていた。
宮廷魔法使い三人と騎士団の一部隊を率いてきたことから、敵意があるのではないかと警戒していた。
それもそのはず、とある国ことティサーク国は、スカイ王国をはじめとした近隣の同盟に与していない国だった。
そんな国の使節団が、スカイ王国領に足を踏み入れる直前に訪問するとの連絡を寄越したのだからクライドの警戒は高かった。
ゆえに歓迎はしていない。
玉座で使節団の代表と騎士、宮廷魔法使いを各一名ずつ、挨拶を許したが、他の者たちは王都の外で野営をさせている。
万が一、城下町で暴挙を行われても困るのだ。
無論、見張りには宮廷魔法使い、魔法軍、騎士団が対応しており、最悪の場合は一掃することも命じてある。
クライドこそ使者に顔を見せてはいるものの、結界術師としての結界を三重に張っている。
傍には腹心であるイグナーツ公爵、ウォーカー伯爵が控え、騎士団長グララールが帯剣した状態で使節団の背後に立っていた。
また、この場にはいないが、宮廷魔法使い紫・木蓮が回復要員として別室で控え、同じく宮廷魔法使いデライト・シナトラと魔法使いたちが王族を守っている。
ここ半年で同盟国とも不仲になることもあったため、同盟国ですらないティサーク王国には警戒しかなかった。
「クライド・アイル・スカイ陛下におきましてはご機嫌麗しく。二年ほどぶりではございますが、我が王マードス・ティサークの相談役を務めさせていただいておりますザカリア・シーモンが使節団の責任者としてご挨拶させていただきます」
髭を蓄えた白髪まじりの初老の男――ザカリア・シーモンが恰幅のよい身体を揺らして挨拶をし、クライドの素っ気ない対応に気にした素振りを見せず、使者たちは平伏した。
顔には出さないが、クライドは内心舌打ちをする。
ティサーク国は、スカイ王国から西側に存在する国だが、周辺諸国に侵略を試みようと企んでいる厄介な国であった。同時に、民に圧政を敷く王と貴族たちが蔓延る国である。
近年では国を逃げ出し難民となる者が多い聞く。まだスカイ王国まで難民はきていないが、時間の問題だろうと思われている。
ティサーク国を警戒する理由のひとつに、長年スカイ王国と敵対してきたナジャリアの民に援助しているという噂があったが、真偽は確かめられなかった。現在は、ナジャリアの民は滅したので、事実は闇の中であるが、友好的になれるはずがない。
他にも、魔族との関わりがあると噂されていたが、スカイ王国をはじめ各国はその噂を一蹴していた。
だが、魔王、準魔王などが気軽にスカイ王国に遊びに来る最近のことを思い出すと、大陸西側よりのティサーク国ならばありえる、と思わずにはいられなかった。
「こちらに控えるのは、我が国の精鋭と呼ばれる二人であり――」
「そなたの国の自慢の民の紹介はいらぬ。言っておくが、そなたらティサーク王国の使節団は、数百の兵を率いた状態で我が国に連絡なく足を踏み入れようとした。本来なら、敵対行為である。だが、私は愚かではない。会話で解決できるのであれば、喜んで会話をしよう。たとえ、それが無礼な国の人間であっても、だ」
「これはこれは手厳しい。我々には誤解があるようです」
「誤解とな?」
「確かに偉大なる我が国ティサーク国とスカイ王国は同盟関係ではございませんが、敵対関係でもございません。我々がこの国の領土を侵したこともありませんゆえ」
ザカリアの言葉通り、ティサーク国と敵対関係がないのは事実だった。
「偉大な我が国のことは、スカイ王国の貴族でもご存知の方々はいらしたのですが……最近、大掛かりな粛清があったとお聞きしました。残念ながら、陛下が処した者の中に偉大な我が国への理解があった方々もたくさんいたのです」
つまり、内通者であったということだ。
「御託は良い。それよりも、ご自慢の騎士と魔法使いを率いて何をしにきたのだ?」
「せっかちですな。いえ、よいでしょう。では本題に入らせていただきます。偉大な我が国ティサーク国の要求です」
「要求だと?」
「サミュエル・シャイト宮廷魔法使い殿を我が国に引き渡していただきたい」
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