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31「ギュンターの兄です」②





「あら! ギュンターじゃない! お義父様とお義母様の胃に穴をあける勢いでウルちゃんに変態行為をやめなかった筋金入りの変態ギュンターじゃないの!」

「だから、どんな歓迎の言葉!?」

「はっはっはっ! 兄上、義姉上! ご無沙汰しております! 突然の訪問だというのに歓迎してくださり感謝します!」

「これ本当に歓迎されてるの!?」


 奥から亜麻色の髪の温和そうな女性も現れたのだが、やはりギュンターは酷い言われようだった。

 しかし、言葉に悪意がなく、また言われた本人も気にしていないのだが、常識人を自称する友也は突っ込まずにはいられなかった。


「おや、そちらの少年は?」


 ギュンターを抱擁から解いた青年が友也に気づく。

 挨拶しようとする友也だったが、ギュンターが先に紹介した。


「僕の従者ですよ」

「ぶっ飛ばしますよ! あ、いや、失礼しました。僕は遠藤友也。……非常に不本意ですが、ギュンター・イグナーツ君の友人ということにしておいてください」

「そうか! ギュンターにも友人ができたのか! ウルの下着を身につけさせた人形だけが友達かと思っていたが、そうかそうか! 今日はお祝いだな!」

「とんでもねー幼少期送ってましたね!」

「褒めないでくれたまえ」

「褒めてねーよ!」


 ギュンターの過去に魔王もドン引きだ。

 よくウルリーケやウォーカー伯爵家の面々はこんな変態と家族のような関係を続けていたと思う。

 血が繋がっていても縁を切られるような案件だ。


「友也君か。おっと、こちらも自己紹介せずに失礼したね。僕はロスク・イグナーツです。こちらは、ハニーの」

「テレサ・イグナーツです。ダーリンの奥さんです!」

「……この夫婦、うざい」


 千年以上、彼女がいない友也にとって幸せオーラ丸出しのロスクとテレサの夫婦はテンション高めなこともあっていらっとした。


「ところで、ギュンター。今日は急にどうしたんだい?」

「兄上が以前欲しがっていた絵具や筆。義姉上が要りような生活用品を持ってきました」


 風呂敷包みを下ろし、ギュンターは兄にそのまま渡した。


「すまないね。最近は仕事も増えたんだから、援助はいいと言っているのに」

「ダーリンったら、学校で講師の仕事をもらったのよ。最近では絵も売れてね」

「それはよかったです。援助は、させてください。僕たちは家族ですから」

「――ありがとう。当主の座も押し付けることになってしまったのに、恨むどころから、よくしてくれて済まないと思っているよ」


 ロスクの言葉に、「おや?」と友也が首を傾げた。

 無能な兄を追い出したと言っていたギュンターが、兄を援助し、感謝されているのだから、不思議だ。


「その、事情がよく理解できないのですが?」

「友也君、申し訳ない。お客様を置いてきぼりだったね。お恥ずかしながら、僕は公爵家に生まれながら絵にしか興味がないダメな長男でね。ギュンターがわざと追い出してくれたので、今は好き勝手にさせてもらっているよ」

「へぇ」


 意外だった。

 ウルとサムにしか興味のない男が、兄のために行動するとは、と素直に感心する。


「ハニーは貴族ではないので、結婚も反対されていたんだが、ギュンターのおかげで今は両親とも和解できたよ。もっとも、イグナーツを名乗っていても、僕には何の権限もないんだがね」

「……意外といい奴なんですね、ギュンター君」

「変態魔王に言っておくが、惚れても僕の尻はサムのものだからね!」

「別に狙ってないですから!」


 どこかで変態を混ぜないと死んでしまうような病にでもかかっているのだろうか、と本気で疑いたくなった。

 いつもツッコミを入れているサムはさぞ大変だろう。

 思い返せば、ギュンターをここに送ったあと、興味本位でついていくることはなかったと反省する。

 ダグラスがサムに会うのを楽しみにしていたので、グダグダにならないように引き離そうとしていたところに、転移魔法を求められたので応じたが、さっさと帰るべきだった。

 ラッキースケベに怯えず外を歩くことができるのが嬉しくて、つい油断してしまった。


「立ち話もなんだから、さあ、入ってくれ。お茶と、食事にしよう」

「そうね。腕を振るっちゃうわ!」

「あ、では、お手伝いしますわ」

「ふふふ、ありがとう」


(――あれ? 今の声誰?)


 ギュンターでも友也でもない、もうひとりの声が聞こえ友也は首を捻った。

 それはギュンターも同じだったようで、顔を見合わせる。


「わたくし、お兄様とお姉様にお会いしてみたかったので嬉しいですわ。あ、こちらはわたくしからのお土産です」

「まあまあ、ありがとう。ギュンターの奥さんは可愛いのにお行儀もいいのね」

「そんな本当のことを言われたら照れてしまいますわ!」


 友也とギュンターは声の主の存在に気づき、汗を流し、顔を青くした。


「なぜママがいるんだぁああああああああああああああああああああ!?」

「え? ずっと一緒だったではないですか?」

「魔王の僕に気づかれなかった、だと」


 転移した時からずっと一緒にいたという少女クリー・イグナーツに、友也とギュンターは戦慄を隠せなかった。

 この日、二組の夫婦のいちゃいちゃする姿を見ながら食事を一緒にした友也は、「絶対に結婚してやる!」と固く誓うのだった。


 しかし、夜になると同時に「サム成分が足りない!」と帰宅を要求するので無視していると、走って帰ろうとするので無理やり捕まえた。

 その後、「邪魔をするなぁあああああ!」とバトルになり、魔王のはずの友也が大苦戦し、カルに応援を呼んでもらうなどして大変だった。

 クリーが見るもおぞましい器具でギュンターを調教し、なんとか猛獣と化した変態は静まったが、友也とカルはボロボロに疲弊していた。

 耳を塞いでも聞こえてくるギュンターの悲鳴と、クリーの嗤い声が木霊する地獄のような世界の中「やっぱりしばらく独身でいいかなぁ」と誓ったばかりの誓いが崩れてしまうのだった。





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