35「父を知りました」①
元婚約者を語るのに、最初に出てくる単語が「スケベ」なのはいかがなものだろうか、とサムは悩む。
同時に、父親にもスカイ王家特有の血と個性がしっかりと流れていたことを残念に思う。
間違いなく、自分もビンビンの血統なのだと思い知った。
「最近は壊れてしまったようだけど、陛下だって以前まではまともだったけれど、若い頃はスケベ小僧だったのよ。きっと想像しやすいと思うけれど」
「はい。とても簡単に想像できます」
「でしょうね」
ビンビン陛下が若い頃もビンビンだったと言われても微塵も驚きはしない。
むしろ納得できる。
そもそも先ほど、フランシス第一王妃から似たような話を聞いたばかりだ。
サムの心は、問題なかった。
「陛下の場合は真面目ゆえの反動だったのだけど、ロイグはね、ただのスケベ小僧よ」
「……えー」
またしてもロイグはスケベ扱いだ。
少々私怨を感じるのは気のせいだろうか。
「ロイグと私は幼馴染なの。そこに陛下とイグナーツ公爵は年上の兄といった感じなのかしら。あなたの懇意にしているウォーカー伯爵も十代の頃からの付き合いよ」
「そうなんですね」
「他にも、第一王妃フランシス様や、第二王妃コーデリア様も、それなりに付き合いは長いわ。貴族なんて、特に爵位が上だとみんな親戚のような関係だものね。世代も同じなら、そんなものよ」
しかし、不思議なものだ。
クライド陛下はもちろん、イグナーツ公爵、ウォーカー伯爵などみんなが王族派貴族であることに対して、ジュラ公爵だけが貴族派貴族だ。
何か理由があるのか、と内心首を傾げた。
「私は幼少期に身体が弱くてね。ロイグと初めて顔を合わせたのは、彼の婚約者候補のひとりとして……ほぼ決まっていたけど、そういう名目で会ったのよ。その時にの最初の一言はなんだと思う?」
「えっと、かわいいね、とかですか?」
「そんな気の利いたことを言ってくれたのならよかったのだけど……正解は、何色のパンツ履いてる? よ」
「……………………んんんんん?」
おかしい、とサムは首を捻った。もう捻りすぎて一回転してしまうのではないかと思うくらい捻った。
ジュラ公爵の小粋なジョークかと思って表情を窺ってみるも、とても真面目な顔をしていた。
真面目な顔をして、語るような思い出ではないような気がするが、冗談でも聞き間違いでもないようだ。
つまり、
「――控えめに言って変態小僧ですね!」
スケベ小僧などでは収まらない。
ロイグ・アイル・スカイは十分にスカイ王国っ子だった。
「一応、ロイグの名誉のために補足しておくと、彼は私と婚約しないようにわざと嫌われるようなことを言ったみたいね」
「だとしても他に別の言葉があったでしょうに!」
「……そうよね。言われたくはないけど、ブスとか言ってくれた方がよかったわ。当時、私も世間知らずでね、前国王陛下がロイグの頭を引っ叩くまで、下着の色を教えるのが普通だと思って、つい白です、と答えてしまったわ」
「答えちゃったんですね」
「答えてしまったのよ」
サムとジュラ公爵は顔を見合わせて盛大にため息をついた。
「いやいや、この話する必要あります!? 父親の話をしてくれると言いましたけど、こんな話を聞いたら、興味ない父親から変態な父親への嫌悪に変わっちゃいますよ! 生きていたらぶん殴りたいほど、恥ずかしい! 俺の親が、仮にも母が愛した相手が、初対面の女の子の下着の色を聞くような変態だなんて!」
「安心しなさい、サミュエル・シャイト。あなたにはその血がしっかり流れているわ」
「嬉しくねぇえええええええええええええええええええええ!」
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