31「シフォンさんは魔法少女です」
サムは言葉を失った。
なぜなら、ドミニク・キャサリン・ジョンストンはスカイ王国において謎すぎる人気を持つ魔法少女だ。
しかも、初代を抜くと、代々筋骨隆々な男性が魔法少女の衣装に身を包み華麗に敵を成敗してきた謎すぎる一族だった。
転生者ゆえに、彼女を異常だと思っていた。実際、リーゼたち女性陣はキャサリンのありのままを受け入れている。
例外は男性たち――といっても、その男性たちも一部であり、他には魔族のゾーイや魔王の友也なのだが、同じ魔族のボーウッドなどは受け入れてしまっているので基準がわからなかった。
しかし、ここで、同じ魔法少女が、しかもちゃんと女性で魔法少女をしている人物が、キャサリンを認めないと言ったのだ。
これはかなり衝撃だった。
「素晴らしい!」
サムが衝撃を受けていると、キャサリンの巨体の背後から、白いドレスを身に纏ったゾーイ・ストックウェルが感涙しながら拍手と一緒に現れた。
「……ゾーイさん。なに感動しているんですか?」
小さな身体にシンプルだが彼女によく似合うドレスと、レースの手袋、そして白いハイヒールという白に統一したゾーイはとても可憐だったのだが、涙を流しながら拍手をするという行動に意識が持っていかれてしまう。
「感動するに決まっている! この国の人間は、どいつもこいつもキャサリンを魔法少女と認め、応援し、尊敬と憧れを抱いている異常者共だが、こんなにもちゃんとした感性をも持つ人間がいるとは思わなかったぞ!」
「あの、一応、俺もギュンターもゾーイさんと同じ感覚なんですけど」
「黙れ! お前らなんて、ざっくり言ったら変態じゃないか。ギュンターは変態であるのは言うまでもなく、サムだってビンビンの血を受け継ぐ正当な変態だ!」
「……ひ、酷い言われようだ」
まさかゾーイに変態扱いされる日が来るとは思わず、サムは肩を落とす。
ギュンターは「いつだって僕の愛は常人には理解できないのさ」と髪をかき上げて余裕そうだ。相変わらずメンタルがおかしい。ただ、そんなギュンターの腕をがっちり掴んで「はぁはぁ」しているクリーはどうするのだろう。
「あらあら、ゾーイちゃんったら。お姉さんがみんなの魔法少女だからってやきもち焼いて」
「誰が焼くか! こういう話が通じないところがおかしいのだ!」
「わかります! ジョンストン宮廷魔法使いは、昔からそうなのです!」
「わかってくれるか!」
目の前で言いたい放題されてもまるで気にした様子のないキャサリンはある意味、懐がとても深いのかもしれない。
ゾーイとシフォンはお互いに、ようやく理解者ができたとばかりにがっしり両手を握り合った。
「ジョンストン一族は、昔から男ばかりが魔法少女になり、魔法をついでとばかりに筋力ばかり鍛えて! おかげでわたくしたちが何度同類に見られたことか」
「心中察するにあまりある! 辛かっただろう!」
「ええ、ええ、それはもう! わたくしは、同盟国のシーランド小国から嫁いできたのですが、魔法少女であると知られるとこの国の皆さんが「ああ、あの」と変態魔法少女と同じに扱うのです!」
よほど苦労があったのだろう、シフォンはついにゾーイと抱きしめ合った。
「シーランド小国って、ああ、南の方で隣接している国だっけ?」
「そうですわ。母はもともとシーランド小国の貴族の娘であり、魔法少女でした」
サムの呟きに、応えてくれたのはクリーだ。
相変わらずギュンターから離れようとしないが、会話は可能らしい。
「父はシーランド小国に留学経験があり、その時に母と知り合ったそうです。詳細はあまり存じませんが、その際、一国を揺るがす敵と魔法少女の戦いがあり、父が母を支えて巨悪を倒したことをきっかけに恋人になったそうです」
「なぁに、それ?」
知らないところで大事件が起きており、魔法少女が解決していたようだ。
気にならないと言ったら嘘になるが、きっと聞いてもしょうもないことであるのは間違いないと確信する。
「その危機に、応援としてスカイ王国からキャサリン様が派遣され、母とぶつかりながらもご活躍されたようです。以来、ふたりは友人であり、切磋琢磨するライバルのようですわ」
「……友人でありライバル? の割には、反応がちょっと」
「母は魔法少女として少々頭が硬い方なので、キャサリン様の見た目や性別が魔法少女に相応しくないと頑固なのです。内心では認めていらっしゃるのに、きっと素直になれないだけですわ」
「……いや、絶対違うと思う。普通に無理だって思っていると思うよ。見た目と性別ってすごく重要じゃん」
クリーから告げられたキャサリンとシフォンの過去に、サムはどう反応するべきか悩む。
するとキャサリンが懐かしげに頬に手を置いた。
「懐かしいわねぇ。まだお姉さんがピチピチな魔法少女だった時よね。あの頃は技術も未熟だったわぁ。私が近距離を得意とするなら、シフォンちゃんは中距離から遠距離を得意とする魔法少女でね。良いコンビだったわ」
「良いコンビなどではありませんでした! 何度後ろから砲撃を当ててやろうかと……旦那様に止められなければ、きっと」
「あーら、いまだにツンツンしちゃって可愛いわねぇ」
「ですから! ツンツンしているわけではありません!」
何を言っても動じないキャサリンにある意味感心していると、皿を抱えて戻ってきたカルがサムを突いた。
「あのっすね、サムさん。キャサリンさんも、巨漢のおっさんが魔法少女をしている時点でどうかと思うっすけど、シフォンさんだって外見こそ若いっすけど、三十代の子持ちの女性っすよ。私にしたら、いい歳した人が少女名乗っている時点でどっちもどっちっす」
「――っ、そういえばそうだよね! 普段の魔法少女があまりにもインパクトありすぎたから、感覚がおかしくなっていたよ! あの人も、大概おかしいよね!」
「そうっすよねぇ! 一瞬焦りましたよ。サムさんがシフォンさんをスルーしていたんで、私の方がおかしいのかなって」
飄々としているカルも、この時ばかりは動揺していたようだ。
「いろいろ考えるのもバカらしいんっすけど、シフォンさんが魔法少女なら、クリーさんもいずれ魔法少女になるんっすかね?」
「……今でも、変態、幼妻、と属性多いのに、魔法少女が追加されたら手に負えない!」
「どちらにせよ、ギュンターさんに丸投げでいいと思うっすけどね」
ちらり、とギュンターに視線を向けてみると、「離れたまえ!」「嫌ですわ!」と夫婦で仲良さそうにしている姿が目に入った。
「だね」
サムはもう考えるのをやめて、クリー関連はギュンターに丸投げしようと決めた。
8/5よりコミカライズはじまりましたー!
comicWalker様、ニコニコ様にてお読みいただけますので、何卒よろしくお願い致します!
書籍1巻もよろしくお願い致します!
カクヨム様では先行更新しております!
コミカライズ開始SSもUPしておりますので、そちらもよろしくお願い致します!




