28「ついに会場入りです」
サムが驚くのは無理もない。
まさかギュンターを制御できる唯一の少女であり妻であるクリーの母親が青牙の初恋の相手だと、誰が思っただろうか。
「どういうことだ?」
いまいちよくわかっていない青牙に、頭痛を覚えながらサムが説明した。
「えっとね、ギュンターの最愛の妻のクリーさんって人がいるんだけど、その人のお母さんなの」
「……サム、ママの紹介に最愛などとつけないでくれ!」
「ママ呼ばわりしているんだから、説得力ないよぉ」
「これは口が勝手にそう言ってしまうのだよ!」
「なにその呪い!?」
ギュンターの事情はさておき、青牙は腕を組み「ふむ」と頷いた。
「なるほど。あの子はこの変態の妻の母なのか?」
「らしいよ」
「――不憫な。結婚し、子供が生まれ、幸せになっていたのかと思えば、変態に娘を奪われるとは」
「青牙君! 君は少々誤解をしているようだから言わせていただくが、僕が無理やりママを嫁にしたわけではないのだよ! 僕がママに無理やり婿にさせられたのだからね! そこを勘違いしないように!」
「……違いがあるのか?」
「ええいっ、これだから世間知らずの竜は! 大きすぎる違いではないか! 僕はサムに嫁ぐはずだったのだ! それを、あのママめ! 僕にあんなことを……ふっ、笑ってくれ、サム。僕はもうかつての綺麗な身体じゃないんだ。だがしかし! 心まではまだ奪われていない! 僕の心は、ウルリーケと君のものさ!」
「いらないですぅー」
「謙虚な君も大好きさ!」
相変わらずのギュンターだが、なにか思うことがあったのか、「ふむ」と頷く青牙。
ちなみに、エヴァンジェリン「相変わらず気持ちわりーな」と若干引き気味であり、青樹も「この男怖い」と怯えている。友也なんて「……これほど好き放題できたら幸せでしょうね」と羨ましそうな顔をしていた。炎樹に至っては無視しているし、ケイリィとウェンディはふたりして「ここまでになることができれば友也様を落とせるのでしょうか?」と参考にしそうで怖かった。
ギュンターは自分に視線が集まったことをいいことに、サムの愛を語りながら、るー、らーと歌い始めようとする。
だが、次の瞬間、凄まじい圧迫感に襲われ硬直した。
「――っ」
ギュンターはその圧力に耐えられず膝をつき、冷や汗をだらだらと流しはじめてしまう。
サムも、異様な圧に呼吸が止まりそうだった。
魔王遠藤友也と従者でさえ警戒を見せ、炎樹も圧力の近づいてくる方向に目を細めた。
青牙と青樹も緊張に身を硬らせている。
エヴァンジェリンだけが「あー」となにか察したようだ。
不幸中の幸いというべきか、この迫り来る圧迫感はサムたちだけが感じ取っていた。
「――来る……来てしまう」
ギュンターが怯えを含んだ声を出したと同時に、パーティー会場のドアが静かに開かれる。
入ってきたのは十代前半の少女と、その母のようだがとても若々しい女性だった。
少女はとても可愛らしく、ピンク色のドレスに身を包んでいた。母も娘ほど濃い色ではないが、同じ色のドレスを着こなした愛嬌のある美人と言った様子だ。
ギュンターの震えが増した。
少女は会場を瞬きをせずキョロキョロと見渡すと、ギュンターを見つめ、にたり、と可憐に微笑んだ。
「ギュンター様ぁ、あなたの最愛の妻クリーがきましたわぁ」
「いやぁああああああああああああああああああああああああ!」
クリー・イグナーツが母を伴い会場入りした瞬間だった。
8/5よりコミカライズはじまりましたー!
comicWalker様、ニコニコ様にてお読みいただけますので、何卒よろしくお願い致します!
書籍1巻もよろしくお願い致します!
カクヨム様では先行更新しております!
コミカライズ開始SSもUPしておりますので、そちらもよろしくお願い致します!




