25「びっくりしました」①
「はい、ワインのおかわり」
「感謝する」
サムは炎樹たちのもとに戻ってくると、ワインとボトルを渡した。
炎樹は嬉しそうにワインにさっそく口をつけ、味わっている。
ボトルもしっかり握っているので、すべて飲み干すだろう。
「俺もお腹減ったし、そろそろなにか食べようかな」
歓迎パーティーではあるものの、主賓のひとりが盛大に問題を起こしてしまったので、近づいてくる勇気ある人間はいなさそうだ。
唯一、平気で魔王たちと談笑していたキャサリンも、青牙を連れ去ったと思えば、今は家族と合流している。
青牙はどうしたのだろうか、と気になる。
ドミニク家の面々の中に、準魔王のゾーイが一緒にいることに驚いたが、綺麗な女性たちと楽しそうにしているのを見て、よい関係が築けていることを嬉しく思う。
ゾーイと視線が合うも、彼女は笑って手を振るだけでこちらに近づこうとはしない。
変態魔王と、変態と、癖のある竜王たちと一緒にいて仲間に思われたくないのだろう。気持ちはとてもよくわかる。
「あー、サム。少し聞きたいことがあるのだが?」
「なんだ、変態」
「名前で呼んで!」
「なんですか、イグナーツさん」
「他人行儀すぎて泣きそう!」
「もううるさいなぁ。で、なんだよ」
面倒な変態が珍しく言葉を探すように、ゆっくり口を開いた。
「先ほど、ジュラ公爵と話をしていたようだが?」
「あ、うん。したよ。思ったほど怖い人じゃなかったかな。なんだろう、初対面なのに警戒心を抱けないっていうか、ちょっと言葉では言えない感覚になる人だよね」
貴族派派閥の貴族であり、その派閥の公爵であるジュラ公爵だが、不思議なことにサムは警戒心を抱けなかった。
最初こそ、ぎこちなく身構えはしたが、彼女から敵意を感じなかったせいか、それとも自分を通じて誰かを見ている感覚のせいか、サムの本能が「ジュラ公爵は大丈夫だ」と認識してしまったのだ。
「……君のその警戒心のなさは力があるからだろうが、僕としては心配でならないよ。気づいたら拐われて調教されていた、なんてことになったら、ああっ、僕はっ、僕はぁっ!」
「妄想力が逞しすぎるだろ!」
「わかっていないね! 爵位の高い貴族なんて、性癖が歪んでいるものさ! まったく、同じ貴族として嘆かわしい!」
「ギュンターが言うほど説得力のある言葉って、かつてなかったよなぁ」
貴族どころか人間代表の変態となりつつあるギュンター・イグナーツの言葉は、とても納得できた。
「ギュンター君に同意するのはとても嫌ですが、サム、ジュラ公爵とは距離をとっておいた方がいいでしょう」
「友也までそんなことを」
変態に変態魔王が同意してきたので、サムはなぜそんなにもジュラ公爵を警戒するのかわからず首を捻る。
「まさか、君は知らないのかい?」
「なにを?」
ギュンターの言葉の意味が理解できず、サムは困惑気味に言葉を返すが、
「ジュラ公爵は、ロイグ殿下……つまりサムのお父上の元婚約者なのだよ」
「―――――――は?」
続けて、放たれた言葉の衝撃に、思考が停止した。
8/5よりコミカライズはじまりましたー!
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コミカライズ開始SSもUPしておりますので、そちらもよろしくお願い致します!




