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50「衝動です」②




「ゾーイ!?」


 リーゼが飛び起きると同時に、ゾーイの背後からエヴァンジェリンが腕を伸ばし、強引に引き寄せた。

 これにより、リーゼはふたりに庇われるようにサムと距離を取った。


「な、なにが起きているの?」

「吸血衝動だ!」

「吸血衝動って、吸血鬼じゃあるまいし」

「そうだ。サムは吸血鬼ではない。だが、吸血鬼であり魔王だったレプシー様を倒し、その力を引き継いでいる」

「待って、それって」

「もしや、と思っていた。だが、普段の様子を見ている限り、転化することはないと思っていたのだが、いきなり魔力が高まったので何かあったのかと見にきたのだ」

「……そうだったのね。てっきり、そういうプレイを求められたのかと」

「お前たちは普段からなにをしているんだ!?」


 ゾーイがツッコミ、リーゼが顔を赤くする。

 だが、まさか、リーゼもサムが吸血衝動に襲われることになるとは思いもしなかった。


「サムは吸血鬼になってしまったの?」

「いや、まだだ。奴は現在、吸血鬼になりかけている。転化する際に、酷い喉の渇きがあったはずだ。だが、それは予兆だ。問題は、血を吸うか吸わないかだ」

「血を吸ったらどうなるの?」

「吸血鬼になる。しかし、逆に、今ここで耐えることができれば、大丈夫だ。」


 リーゼが安堵した。

 サムは辛いかもしれないが、準魔王と魔王がいるのだ。

 力づくでサムを押さえつけるくらい可能だろうと思う。


「ただし、一度耐えたら平気だというわけではない。これは始まりだ。また遠くない日に吸血衝動に襲われるだろう」

「そんな!」

「とりあえず、リーゼは部屋から出ておれ! 廊下にボーウッドがいるから、何かあったら盾にでもしとけ!」

「だけど!」

「お前の血を吸ったら、ダーリンは絶対後悔するだろ!」


 エヴァンジェリンの怒声に、リーゼはその通りだと思い、従った。


「リーゼの姉貴、こちらに!」

「ボーウッド」

「俺がお守りします。――といっても、いくら兄貴でもゾーイとエヴァンジェリンの二人がかりをどうこうできるとは思いやせんが」

「そう、そうよね」


 ボーウッドが腕を広げて壁になろうとしてくれるも、リーゼにはなぜか嫌な予感がした。

 次の瞬間、リーゼでもわかるほどはっきりと魔力が爆発するのを感じ取った。


「――これが、サムの魔力? これほど魔力が大きかったの?」


 サムの全力に立ち会ったことはなかったが、リーゼの知っているサムの魔力とはまるで別人のようだ。

 威圧感、そしてどこか禍々しいものを感じてしまう。

 あの、お日様のように優しい少年から、このような魔力が放たれているなど信じられない。


「……姉貴、俺の後ろから決して出ないように」

「え?」

「きますぜ」


 ボーウッドが身を低くして、犬歯を剥き出しにして唸った刹那、寝室の壁を貫いてゾーイとエヴァンジェリンが吹き飛んできた。


「ゾーイ! エヴァンジェリン!」


 まさかサムではなく、魔族の二人が廊下に叩き出されてくるとは思わず、リーゼは思わず悲鳴を上げた。


「衝動のせいか、身体能力が上がっているぞ」

「うっそだろ、ダーリン。私らを相手に互角に戦えるって、本気出してないけど、これやばくね」


 大したダメージを負っていないゾーイとエヴァンジェリンだが、彼女たちの言葉からサムが相当の力を発揮しているようだ。

 すると、部屋の扉からサムが静かに現れた。


 リーゼには、少なくとも外見上はいつも通りのサムに見えた。

 しかし、彼は立ち塞がるゾーイたちを無視して、リーゼに視線を向けると、感情の篭っていない笑みを浮かべて、地面を蹴った。


「――速」


 剣士であるリーゼはもちろん、速さに自慢のゾーイでさえ驚くほどのサムの行動速度。

 刹那の間に、サムは先頭に立つゾーイの眼前にいた。


「しま」


 サムが手を伸ばし、ゾーイに触れようとした。

 が、――強力な結界によって、サムの腕が弾かれ、そのまま彼の身体を後方に弾き飛ばした。


「結界、だと?」


 リーゼにはわかった。

 この結界の主は、


「やれやれ、ママに陵辱のかぎりを尽くされたのでサムに慰めてもらおうとしたのに。なんだね、この賑やかなのは? なぜ僕を呼ばずに遊んでいるのかな?」


 スカイ王国最高の結界術師、ギュン子・イグナーツが、透け透けなネグリジェを身につけ、枕を抱えて現れたのだった。





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― 新着の感想 ―
シリアスなシーンのハズなのに…シリアスなシーンのハズなのにっっっ‼️(笑)
 シリアスな筈なのに、筈なのに! 全部持っていきやがったギュン子。
[良い点] ギュンt…ギュン子ォォォォ! ギュンター史上今までで1番カッコいい登場な気がする
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