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473/2012

10「スカウトされました」②





「魔王に怖いなんて言われるとは思いませんでした」

「いや、実際に君は怖いんですよ。試させてもらって確信しましたけど、君は強い敵と戦うことで自らの真価を発揮するタイプだ。いや、違いますね。手加減しなくてもいい相手と戦うことで、ようやく本気で力を使うことのできる人だ」

「……否定はしませんよ」


 友也の言葉をサムは否定できなかった。

 実際、そうである部分を自覚していたからだ。


「正直な話、人間たちの中でなら、スベテヲキリサクモノでしたっけ、そのスキルの不完全な状態のキリサクモノだけでも十分だったでしょう。しかし、この世界には魔族がいる。竜がいる」

「わかっています」


 内心、自分のスキルも把握済みの友也に苦笑いだ。

 どこで情報収集をしているのか不明だが、怖い魔王だと思う。


「人間がいくら強くても魔法には限界があります。ウルリーケ・シャイト・ウォーカーが天才的な魔法使いであったとしても、それだけでは魔王には至れない。しかし、君にはスキルがある。スキルなのか魔法なのかよくわからないくせに、凶悪な殺傷能力を持つスキルがあります。君にとって唯一にて最大の武器ですが、使いこなせていない」

「…………」

「全力で使えるようになったのは知っています。でも、力とは常に全力で使えばいいと言うわけではありません。そのせいで、君は使い場所を選んでいる。そうでしょう?」

「――はい」


 ウルの魔力を継承し、調節をされたことで、サムは強い攻撃手段を手に入れた。

 しかし、全力でそのスキルを使ったのは、数える程度しかない。


「誤解ないように言っておきますが、責めているわけではないんです。そもそもの話として、使う場面がなかったものを使いこなせというのが難しい話です」


 確かに、サムはもともと魔法使いだ。

 スキルを使わずとも勝利できたこともある。いや、そのほうが多い。


「君は強い。力を抑えながら、人間の中では最上位にいるといっていいでしょう。しかし、そのせいで――甘い」

「甘い、ですか」

「悪い意味ではありません。確かに、ボーウッドに一撃をもらったのは失敗でしたが、彼の殺すつもりの一撃を君は耐えていた。まあ、あれだけ愉快な展開になってしまったら意識がそちらに向くのも理解できますがね。僕も爆笑でした。その甘さを含めて、今のサミュエル・シャイトです」

「あの場面に関しては反省しています」


 言い訳はしない。

 あのとき、ボーウッドに一撃をもらったのは、すべてサムの落ち度だった。


「僕には君のその人らしい甘さがとても愛おしく思います。もちろん、変な意味じゃないですよ」

「え、ええ、そこは誤解しませんけど」

「日本人だった僕たちが、異世界に転生したからって、十年ちょっとで命を簡単に奪うことのできるような冷酷な人間になってしまい、甘さもなにもなく敵は機械のように殺すでは、それはもうおかしいでしょう」

「極端な例えのような気がしますけど、はあ、まあ、そうですね」

「個人的には、大切な人たちに心配させない程度なら、人間らしくていいと思います。僕はもう、五百年くらいで心が摩耗してしまったので、誰かの命を奪うことに抵抗なんてなにもありませんよ」

「――悲しいですね」

「本当に。まあ、レプシーやヴィヴィアンのように千年以上生きていながら、命を奪うことに抵抗を覚える魔王もいますが。しかし、彼らだって一度決めたらいくらでも命を奪えます」


 実際、レプシーは復讐から始まり、人間を憎み、大量の命を奪った。

 ヴィヴィアンも魔王という立場であるゆえに、命を奪ったことがないなどありえない。


「結局、なにが言いたいかといいますと――もっと楽に考えてください」

「え?」

「君の力は強い。だからなんだと言うんです。喧嘩を売ってきたのなら、全部相手が悪い。街を斬り裂こうと、周囲の人を巻き込もうと、自己防衛した君が悪いはずがない。――なんて極端なことは言いませんが、君は君の命を守るため、大事な人を守るために、もっと抵抗していいんです」


 友也は手を伸ばし、テーブルの上に置かれていたサムの手をそっと包むようにして掴んだ。


「君の甘さは優しさでもあります。その優しさのおかげでボーウッドを殺さなかった。ヴィヴィアンは傷つかなかった。それでいいんです。だから提案させてください」

「提案、ですか?」

「サミュエル・シャイトくん――魔王になりませんか? 君なら、優しい魔王になれると思います」





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[一言] スベテヲキリサクモノか……あっ
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