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468/2016

5「特典をもらったそうです」




 はぁはぁ、と突っ込みに疲れて肩で息をしてしまう

 さっきから突っ込んでばかりだ、と魔王相手になにをやっているんだろうか、と頭痛がしてくる。

 大きくため息をついたサムが、ふと気になり友也に尋ねた。


「じゃあ、女神様の役割ってなんなんですか?」

「異世界に行く僕に特典をくれることです」

「――っ」


 漫画や小説でお馴染みの特典に、サムがわくわくしたのは内緒だ。

 続きを待つサムに、魔王は続けた。


「――ダーツをしましたよ」

「まさかのダーツ!?」

「しかも当たったのは四駆の車で……異世界でどうしろと。中学生だし運転もできないと言ったら、なんと転移魔法をくれました」

「なにそれずるい!?」


 特典がダーツで選ばれることや、車が当たったことなど、突っ込みたいことは山のようにあるのだが、非常に習得困難な転移魔法をもらえるのは素直に羨ましい。

 車かどちらか選べと選択を迫られたら、サムなら悩むことなく転移魔法を選ぶ。

 友也の使う転移魔法は自分だけではなく、他人もぽんぽん転移させることができるのだ。これほど便利なものを授けてくれるのは、さすが神だ、と感心する。


「その他にもいろいろもらったんですが、その話はまたの機会に。さて、転移魔法とラッキースケベを携えた僕ですが、最初から魔王に至れるほどの力があったわけではありません」

「そうだったんですか?」

「もちろんです。この世界に召喚されたときは、ラッキースケベな普通の男子中学生でしたから」

「それはそれですごいんですけどね」


 少なくとも普通ではない。

 口には出さないが、異世界側も召喚する人間を間違えた、と後悔した可能性だってある。


「最初はとにかく生きていくのが大変でした。しかし、僕はラッキースケベを利用して、敵を倒し、経験を積み、魔王に至りました」

「その過程が気になるんですけど。というか、ラッキースケベを利用した戦いってなに!?」

「はははは、すみません。長くなるのではしょらせてください。ラッキースケベをすると、みんながびっくりするじゃないですか。その動きを止めた隙に、転移魔法で背後に回ってサクッとやっちゃうんです」

「うわ、汚な!」

「あははははは! 勝てば官軍です!」


 多くを語らなかった友也だが、いくらラッキースケベでも、転移魔法を持っていたとしても、中学生が身体ひとつで異世界に放り込まれたのだ。

 想像を絶する苦労があっただろう。


(はしょられたけど――ラッキースケベと転移を利用して、さらに敵を屠ることができるくらいの力はあったわけだ)


 不意打ちならば、一撃で決めないと次はない。

 いくらラッキースケベで驚かそうが、せいぜい初見がいいところだ。

 転移魔法だって、背後に回ってもそれなりの実力がある者なら対応だってできる。

 つまり、友也はまだ何らかの力をもっているのだろう。


「ライトノベル百冊分ほどのイベントはありましたが、魔王になってこうして元気でやっていますよ」

「みたいですね」

「さて、ここからが話の本番なのですが――君は女神に会いましたか? 転生者だと分かっていても、神にあったかどうかは本人に聞かないとわかりません。できれば、偽りなく正直に教えてくださると助かります」


 女神との邂逅の有無を尋ねてくる友也からは、今までと違い、焦りと、期待、そして不安が感じ取れた。

 しかし、残念なことにサムは女神に会ったことなどない。


「残念ですが、女神と会ったことはありません」

「……そう、でしたか」

「なにか理由でもあるんですか?」


 サムの疑問に、友也は空を見上げ、呟いた。


「もう一度女神様と会いたいんです」

「なぜ、と聞いても?」

「構いませんよ。僕は、ラッキースケベをなんとかして取り除きたいんです」

「――え?」

「え、と言われても。ラッキースケベを」

「大丈夫です、聞き逃していないです。ただ、理解ができなくて。なぜラッキースケベを捨てたいんですか? もう千年以上も持っているのに。言い方は悪いですけど、今更?」


 不思議だった。

 なぜ今になってラッキースケベを無くしたいのか疑問だ。

 いや、きっと前々からその体質を忌避してきたのだろうが、もう千年も付き合っているのだ。対処法もあるだろう。

 なによりも、その力を利用して魔王に成り上がったのなら、忌々しい体質でも手段のひとつだ。

 失うのはどうか、と思う。


(もったいないとは言わないけど……いや、きっと彼なりに苦労などたくさんのことを経験して、もううんざりしているのかもしれないな)


 問いただしておきながら、理由を聞いたのは野暮かなと思った。


「余計なことでしたね、すみません」

「いいえ、あくまでも僕の都合ですから。疑問もわかります。なぜ、今更か。確かにその通りですね」


 幸いなことに、友也は気を悪くしないでくれた。

 そのおおらかさに感謝したサムに、魔王はラッキースケベを捨てたい理由を語り始めた。




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[一言] 東京フレン〇パークかよ!
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