1「ある意味最強の魔王でした」
「あなたが……遠藤友也様、ですか?」
緊張気味のサムに対し、友也は自然体に柔らかい表情を浮かべた。
「友也と呼んでくれて構いません。僕も、サムと呼ばせてもらってもいいですか?」
「あ、はい」
「それとも、転生前の名前で読んでほしいのなら、そうしますけど?」
「――っ」
転生、という単語が出てきたことで、サムの緊張は警戒となった。
間違いない、友也はサムが転生者だともうわかっているようだった。
「まどろっこしいのは好きではないので、はっきりと言いましょう。僕は、君が転生者だと確信しています」
「――なぜ?」
「まあ、その返事が返ってきた時点で、転生者なんですけどね。普通なら、なにそれ、とか、なんのことだ、と言うものです」
「――あ」
些細なことではあるが、否定せず疑問で返事をしてしまったことが、友也の言葉を肯定してしまったようだ。
とはいえ、別にサムは自分が転生者だということを隠しているわけではない。
別に言う理由がないだけだから、周囲に話していないだけだ。
なので、友也に転生者だと言うことがバレてしまっても、痛くも痒くもない。
「別に警戒しないでください。僕の名前で、僕が何者かすでに想像していると思いますけど?」
「転生者、いや、転移者ですよね?」
「はい。千年以上前のことですが、召喚されてこちらの世界にやってきました」
「もしかして、勇者として、ですか?」
「まさか! 勇者なんてそんな恐ろしいものではありません! ほら、よくあるでしょう。神様に会って、異世界に行くってお話が」
「――まさか」
目の前の魔王を名乗る少年は、サムとはまったく違う経緯でこの世界に来たのだとわかった。
「ええ、僕は女神と出会い、この世界に送られてきた日本人です」
「……そんなことがあるなんて」
気づいたら異世界に転生していたサムとはまるで違う。
神など会ったことがないし、そもそもいるとも思っていなかった。
「あの日のことは鮮明に覚えています。僕は人に好かれる人間じゃなかったので、日本ではいろいろありました」
「あの、失礼ですが、おいくつでこの世界に?」
「僕は中学三年生のとき、まだ十四歳でこちらの世界に来ました」
「そんな子供なのに」
サムの呟きに、友也が苦笑した。
「今の君と同じ年齢じゃないですか」
「それは、そうですけど」
「この世界に来てから少し成長はしましたけど、その後は魔王になったので、そのままです。この姿は別に若作りしているわけじゃないんですよ」
「魔王になると、歳をとらないんですか?」
こんな質問よりほかにもっと問うべきことはあるのだが、つい反射的に訪ねてしまう。
「うーん。魔王は魔族の中でも複数の条件が揃って初めて至れる少々おかしな存在です。僕は、そこに至ったときに、人間をやめてしまったようなんです。以後、不老、なんでしょうね。周りが老いていかないのであまり気にしていませんでした」
友也の言葉に無視できないものがあった。
彼の言い方では、魔王は名乗るだけではなることができない、至るものだと言う。
なら、ボーウッドやヴァルザードなどはどうなるのだろうか、と疑問を覚える。
友也はそんなサムの心を見抜いたように、口を開いて言葉を続けた。
「疑問はもっともですので、説明しましょう。単に魔王になるのなら、魔王を名乗ればいい。強さを示し、ついてくる魔族がいるのなら、その個体は魔王でいいでしょう。しかし、僕やヴィヴィアン、そしてレプシーのような魔王は、存在そのものが魔王として世界に認識された個体です」
「はぁ、なんだか面倒ですね。でも、どうして魔王に?」
「なるべくしてなってしまったんですよ。いろいろ質問はあるでしょう。僕も転生者であるサムくんに興味がつきません」
「はぁ」
友也は「せっかくなので座ってゆっくり話しましょう」と言い、砂浜に置いてあったウッドチェアを指差した。
サムと友也はそれぞれ椅子に座り、向かい合う。
「ではまず、僕が魔王になった過程ですが、きっと僕の特異体質のせいなんでしょうね」
「えっと、神に会ってもらった特典のようなものですか?」
「体質は違いますが、特典は特典でもらいましたよ。」
「いいなー!」
転生する際、女神に会うことがなかったサムは、もちろん特典などもらっていない。
「あははは。僕の特異体質は、日本で暮らしていたときからずっと持っていたものです。嫌な体質ですよ。これのせいでたくさんの人を不幸にしましたし、僕自身も嫌われ者ですからね」
「……いったい、どんな体質なんですか?」
日本で生活していたときに特異体質というのは興味深かった。しかし、その体質のせいで不幸だったと聞くと、訪ねていものかどうか悩んでします。
だが、サムは好奇心に勝てず、聞いてしまった。
「――ラッキースケベ」
「――――――――――――は?」
耳が、脳が、友也の言葉を理解できなかった。
いや、違う、ちゃんと聞こえて、脳も彼の言葉がどのようなものか処理できたのだが、サムの心がそれを拒否してしまったのだ。
そんなサムに畳み掛けるように友也が続けた。
「僕の特異体質は、ラッキースケベです。僕は、このラッキースケベで魔王にのし上がったんです」
「………………はぁあああああああああああああああああああああ!?」
サム、魂からの大絶叫を発した。
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