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433/2010

47「魔王ヴィヴィアンと会いました」①




「ようこそ、サミュエル・シャイト様、水樹・シャイト様、そして……ドミニク・キャサリン・ジョンストン様」


 夜の国にたどり着いた天馬は、そのまま街の上空を翔け、ひとつの洋館の前に着地した。

 サムたちを出迎えてくれたのは、燕尾服を身につけた老執事だ。

 彼は恭しく腰を折ると、サムたちを歓迎した。


「我が主人、魔王ヴィヴィアン・クラクストンズ様がお屋敷の中でお待ちです」

「出迎えご苦労」

「ゾーイ様もお疲れ様でした」

「うむ」


 ゾーイと老執事を一見すると孫と祖父だが、上下関係は違うようだ。

 執事が「こちらへどうぞ」と屋敷の中に招き入れてくれる。

 サムは、屋敷に向かう前に、背後を振り返った。

 夜の国と言うので、暗いイメージを勝手に抱いていたが、夕陽に照らされている街並みは、スカイ王国の城下町とさほど変わらない。

 大きな違いがあるとすると、人間だけではなく、魔族である様々な種族が生活していることだろう。

 今も、少し離れた場所から、屋敷に来たサムたちを見ている住人たちは、人間だと思われる子供から、猫耳が生えた少女、体毛に覆われた狼みたいな人など様々だった。


「どうした、サム?」

「いや、ちょっと街の方が気になって」

「ヴィヴィアン様との会談が終われば、街を案内しよう」


 そう言ってくれるゾーイにお礼を言い、サムは女王の城へ足を踏み入れた。

 女王の城と言われているものの、実際は三階建ての洋館だ。

 庭は広く、玄関前には噴水があり、色鮮やかな花々が咲いている。


「お部屋でヴィヴィアン様がお待ちです。さ、どうぞ」


 老執事が先頭を歩き、屋敷の中を進んでいく。

 彼の後を、サム、水樹、キャサリンが続き、最後にゾーイが並んだ。

 魔王の屋敷は驚くほど普通だった。

 ウォーカー伯爵家と比べて遜色なく、立場ある存在の割には質素とも思える。

 真っ赤な絨毯が敷かれ、カーテンが閉められた薄暗い廊下を歩いていると、不意に視線を感じた。

 自分たち以外の姿は見えないが、至る所から視線を感じる。

 値踏みの視線や、敵意などとも違う、好奇心が強い視線のようだが、落ち着かなかった。

 しばらく屋敷の中を歩くと、一階にあるひとつの扉の前に案内された。


(この部屋の中に魔王ヴィヴィアン・クラクストンズがいるのか……緊張してきた)


「こちらになります。少々お待ちください。ヴィヴィアン様、お客様をお連れ致しました」


 老執事の声に、すぐ返事があった。


「――どうぞ、通して」


 鈴を転がすような少女の声が、扉の向こう側から響く。

 老執事が扉を開け、促されたサムたちが緊張気味に入室する。


「はじめまして、そして、ようこそ夜の国に」


 幼く甘い声に引き寄せられるように、サムたちは声の主を見て、驚きに目を見開いた。

 なぜなら、魔王ヴィヴィアンは、十二歳くらいの少女だったからだ。

 腰まで伸びた癖ひとつない闇のような濃い紫色の髪を揺らし、幼く可愛らしい人形のような整った容姿に不釣り合いな母性的な笑みを浮かべていた。

 薄く桜色の小さな唇から、血のように赤い舌が妖艶に覗いている。


(――この人が)


 なによりも印象に残るのは、なにもかも見透かされてしまいそうな、湖面を思わせる水色の瞳だった。

 幼さを残す身体に、黒いドレスを身につけた少女は、サムたちを優しい声で歓迎した。


「――ヴィヴィアン・クラクストンズは、貴方たちを歓迎するわ」




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