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426/2013

40「お迎えです」②




 幼さの残るゾーイは、その外見に不釣り合いなほどの実力を有している。

 準魔王級とされるその力は、サムが逆立ちしても勝てないほどだ。

 迎えが彼女ひとりであることは、礼儀に反しているわけではない。むしろ、魔王に次ぐ人材をサムたちのために送ってきたことから、魔王ヴィヴィアンが今回の会談を心待ちにしていることが伺えた。


「久しぶりだね、ゾーイ」

「うむ。お前は、水樹だったな。あまり会話をした記憶はないが、覚えているぞ」

「水樹・シャイトです。道中よろしくお願いします」


 ゾーイに向かい、水樹は礼儀正しく礼をした。


「こちらこそ、よろしく頼む。ヴィヴィアン様の大切な客人だ。快適な空の旅を約束しよう」

「天馬の引く馬車に乗るなんて楽しみです!」

「この天馬は、ヴィヴィアン様が拾いお育てになった愛馬でもある。この天馬を迎えに出してくださったのは、それだけサミュエル・シャイトと会うのを楽しみにしているからだろう。ここまでしてくださるのは破格だぞ。生涯、誇るといい」


 どこか自慢するように胸を張るゾーイの仕草は、準魔王級の実力を持っているとは思えないほど可愛らしいものだった。

 そんなゾーイに、巨体がぬっと近づく。


「うふふ、相変わらず小さくて可愛い子ね。お姉さんキュンキュンしちゃうわ!」


 巨漢な魔法少女の接近に、びくぅっ、とゾーイの身体が跳ねた。


「……出たな。理解不能な生物め」

「あらやだぁ、理解できないほど美しいなんて、お世辞なんていいのよ」

「誰がお前を美しいなどと言った! その耳は飾りなのか!」


 苦い顔をして大きな声を出すゾーイに、あらあらうふふとくねんくねんしているキャサリン。

 どうやらゾーイはキャサリンが苦手なようだ。

 心なしか、天馬もキャサリンを見て「えぇぇぇ」と、初めて見る未知なる生物に対して驚いているようにサムの目には見えた。


「スカイ王国国王が、お前を信頼しているとあったので同行者として迎えるが、ヴィヴィアン様に変態行為をしようものなら、その命がないと思え!」

「あーら、やだ。私が変態行為なんてするはずないじゃないん。そういうのはギュンターちゃんの専売特許でしょう」

「……存在が変態なんだが」

「ま、失礼しちゃうわ、ぷんぷん!」


 おそらく、本人は可愛らしく頬を膨らませているつもりなのかもしれないが、ちっとも可愛くない。

 ゾーイは、なにこの生物、と言わんばかりに顔を歪めている。

 そんなふたりを見て、「あはははは、キャサリン殿はすぐに誰とでも仲良くなれちゃうね」などと感心している水樹は、一度、治療魔法を眼球と脳にかけてもらったほうがいいかもしれない。


(変態はさておき、キャサリン様も、よくもまあ準魔王級に遠慮なく接することができるなぁ)


 なにも考えていないのか、それともすべてが計算されているのか不明ではあるが、見習いたくはないが、感心する。

 ゾーイはキャサリンの上から下までをじぃっと見ると、サムの方を向いて困った顔をした。


「……本当に、これがスカイ王国の代表のひとりでいいのか? 本当にいいのか?」


 今ならチェンジできるぞ、と言わんばかりのゾーイに、


「僕わかんない!」


 サムは投げやりに答えたのだった。





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