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9「王女様も相談のようです」①




 サムが王宮で絶叫している頃、ウォーカー伯爵家に意外な人物が訪れていた。

 その人物とは、スカイ王国第二王女レイチェル・アイル・スカイである。彼女は異母姉妹のステラを訪ねてきていたのだ。

 彼女を対応するのは、姉であるステラと、リーゼである。

 ステラは妹をウォーカー伯爵家にある私室に招こうとしたが、リーゼがやんわりと「お客様ですので」と応接室に通した。

 その理由は、レイチェルが王女であるというからではなく、かつて陰でステラの悪い噂を流していた人物だとリーゼは知っているからだ。

 どのような理由があって、訪ねてきたのか不明だが、警戒するに越したことはないと判断した。


 応接室にて、テーブルを挟みソファーに座りレイチェルと向かい合っているのは、ステラとリーゼだ。

 花蓮は、部屋の外でレイチェルが連れてきた護衛が、よからぬことをしないように見張っている。

 ステラは警戒する必要はないと言ったのだが、花蓮が念のためだと言って譲らなかったのだ。

 ちなみに、水樹は実家に戻って妹ことみの世話をしており、アリシアは学校だ。

 ウォーカー伯爵家当主とジョナサンは所属する魔法軍の仕事で王宮におり、夫人グレイスは友人とお茶会に呼ばれて出かけている。

 そして、サムもいないため、リーゼは突然訪れたレイチェルを前に緊張気味で様子を伺っていた。


「ご無沙汰していますわ、お姉様」

「久しぶりね、レイチェル」


 メイドが用意したお茶に口をつけ、会話をはじめたのはレイチェルだった。


「リーゼロッテも久しぶりですわね。結婚式には参加できませんでしたが、おめでとうございます。これは気持ちですわ」


 レイチェルがそういうと、背後に控えていた彼女の専属メイドがいくつかの品をテーブルの端に置いた。


「ありがとう、レイチェル。あなたにお祝いしてもらえて嬉しいわ」

「レイチェル様、お気遣いに感謝致します」


 ステラはニコニコとお礼を言っているが、リーゼは内心ほっとしていた。

 どうやらレイチェルは祝いの品を持ってきただけのようだ。

 レイチェルだけではなく、第一王妃フランシスとセドリック以外の王族は先日の結婚式に参加していない。

 親族だけで行うという理由もあったが、王族が揃って参加してしまうと、参加したがる貴族が出てきてしまうからだ。

 第二王妃コーデリアはステラの結婚に興味はなく、他の王妃や側室も、出しゃばるようなことはしなかった。


 リーゼは安堵しつつも、警戒心を緩めることができなかった。

 レイチェルがステラにしていたことはもちろんだが、彼女は第二王妃である母を使い、サムを奪おうとしたこともある。

 その時は、サムがあっさり断ったことで、コーデリアの怒りを買い話は流れてしまい、その後、音沙汰はない。


(――ニコニコしているけど、次に何を言い出すのかわからないから怖いわね)


 お世辞にも、レイチェルの性格がよくないことを知っているため、リーゼは談笑する姉妹に気が気ではない。


「おふたりとも、変わりましたわね」


 不意に、レイチェルがそんなことを言う。

 ついにきたか、と、リーゼは思わず身構えそうになったが、ステラは笑顔で対応した。


「そうかしら?」

「ええ、お姉様も、リーゼロッテも、以前と見違えるほど変わったと思います。正直、幸せそうで羨ましいですわ」


 リーゼは、ここで初めて、自分の知るレイチェルと少し様子が違うように感じた。

 普段は感情的になりやすい印象のあるレイチェルに、どこか落ち着きがあるように思えた。なので、疑問をぶつけてみることにした。


「失礼ながら、レイチェル様。本日は、どのような御用でお越しになられたのでしょうか? お祝いだけ、とは思えないのですが」


 やや言葉に険があるのは、かつてサムにちょっかいをかけたからだ。

 だが、そんなリーゼに感情を露わにすることなく、レイチェルは頷いた。


「――リーゼロッテ。そうね。あなたは知っているのね」

「ええ」


 おそらく彼女がステラにしたことだろう。


「図々しいことを承知で、本日はお願いがあって参りましたわ」

「お願い、ですか」


(サムに関してなにかかしら? もしかして、自分も妻になりたい、とか申されるのかしら?)


「はい。わたくしに――デライト・シナトラ様をご紹介していただきたいのですわ!」


 警戒に警戒を重ねていたリーゼは、予想と大きくかけ離れたレイチェルの言葉に、思わず目を点にした。




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