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33「新しい師匠ができました」③




 それから、サムはリーゼに稽古をつけてもらいながら、ウォーカー伯爵家に馴染んでいった。

 リーゼをはじめ、伯爵家の人たちはみんないい人たちばかりだ。

 唯一、エリカとだけはうまくいっていないが、彼女が悪い子ではないことはわかっているのであまり気にしていなかった。

 いつか、彼女が認めてくれるような魔法使いになればいいと思っている。


 そして、サムが目指す宮廷魔法使いになる方法もはっきりした。

 当初サムは、現役宮廷魔法使いに喧嘩を売って倒してしまえばいいと考えていた。


「それは絶対に問題になるからやめるように」


 その企みがジョナサンにバレると窘められてしまう。

 その際、


「なにもそんなところまでウルリーケに似なくても」


 と呆れられてしまった。

 聞けば、若くして宮廷魔法使いになったウルは、当時の現役宮廷魔法使いを完膚なきまで叩きのめしたことがきっかけだったらしい。


 ただし、現在は宮廷魔法使いに空席があるので、そんな野蛮なことをせずとも実績さえあれば推薦が可能だという。

 しかし、サムはまだ成人前であり、それが一番の問題のようだった。

 今まで成人前の魔法使いが宮廷魔法使いになったことはないという。

 ウルでさえ、成人後すぐであった。


 サムは、もどかしさを覚えながらも、時間を有効活用しリーゼと訓練しながら、魔法を使わない戦いの実力をつけていった。

 最初こそリーゼの速さに翻弄されてしまい、手も足もでなかったが、少しずつ彼女の攻撃に反応できるようになっていった。

 それでも敗北する結末はかわらない。

 まだまだ実力差は大きかったが、サムは腐ることなくリーゼと訓練を続けた。


 訓練以外の時間は、ウォーカー伯爵家のみんなとの交流に使った。

 伯爵夫人のグレイスが開く、お茶会と称したウルとの関係を根掘り葉掘り聞かれることも多々あった。

 リーゼはもちろんのこと、これには数える程度しか会話したことがないアリシアも参加していた。

 どうやら姉のことと、恋愛話に興味があるようだった。


 その一方で、エリカとの関係は改善しなかった。

 食事の席で毎日一緒になるのだが、目を合わせようともしない。

 偶然、視線が合っても、ふんっ、とそっぽを向かれてしまう始末だ。

 彼女との関係がよいものになるのにはまだまだ時間が必要だろう。

 サムとしては、ウルの妹とはいい関係を築きたいと思っている。


 そして、ウォーカー伯爵家はサムの歓迎会もしてくれた。

 娘を失った悲しさはもちろんあるが、悲しみに暮れるだけのことはしない。

 そんなことをすればウルが安心して眠れないとわかっているのだ。


 サムの歓迎会は賑やかだった。

 使用人たちも参加した無礼講で、お酒の入ったジョナサンがウルとの関係を父親として問いただしてきたり、そこへ悪ノリしたリーゼも加わり、サムはたじたじとなる。

 サムがウルを女性として愛していたのは誰もが知っているので、どこまで関係が進んでいたのかと何度も尋ねられてしまった。


 伯爵家のみんなは優しく、暖かく、笑顔が絶えない人たちだ。

 きっとウルもそんな家族が大好きだったんだろうと思う。

 だからこそ、死期を悟ってしまった彼女は、家族になにも言わずに去ってしまったのだ。


 サムは、ウルの唯一の弟子として、彼女の愛していた家族を守ろうと決意したのだった。





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