17「交流会の始まりです」①
本格的に夏となり、鬱陶しい暑さを覚えた頃、スカイ王国とオークニー王国の交流会が始まった。
交流会前日に、スカイ王国の王都を訪れていたオークニー王国の面々は、国王と側近たちは日中にナジャリアの民に関する会議を行い、それ以外のものは城下町に繰り出したようだ。
そして、夜。
二カ国の交流を深めるため、王宮の広間にて大々的にパーティーが始まった。
両国の国王と王妃と、王子や王女が中心となり、王都にいる貴族たちが参加する大規模なものだ。
このパーティーにサムも、それぞれドレスで着飾ったリーゼたちを率いて参加していた。
王女であるステラだけが、国王のそばにいるため一緒にいられない。
残念に思うが、その代わりに、後日ふたりでデートする約束をしているし、あとで合流もできるのでそのときに一緒に楽しもうと思っている。
サムが広間に入ると、多くの視線が集中した。
無理もない。最年少の宮廷魔法使いであると同時に、王国最強の座を名実ともに手に入れているのだ。
さらに、貴族の中にはサムが王弟の息子だと知っている者たちがいる。
第一王女の婚約者であるサムとお近づきになりたい貴族や、あわよくば娘を嫁のひとりに押し込みたい貴族もいるのだ。
また女性たちからの注目もある。
婚約者は多いものの、それでもサムは変わらず優良物件である。
国王の覚えもよく、公爵家との付き合いもある。婚約者たちなど皆伯爵家の出だ。
そんな彼に見染められれば受けられる恩恵も高い――などと下心を隠さず近づこうとする女性たちもいるが、そのような人間はすべて婚約者たちが睨みつけると逃げていく。
集まる視線の中には男性の羨望と嫉妬の混ざった複雑なものもある。
それは、サムが連れている女性たちのせいだ。
まず、サムと腕を組み、気遣われて歩くリーゼロッテ・ウォーカー。
サムの寵愛を一番に受けている女性であり、お腹には彼の子を身篭っている。サムの師匠のウルリーケ・シャイト・ウォーカーの実妹であり、その繋がりは深い。
彼女は白いドレスと、水色のストールを身に纏い、スタイルの崩れない美しい肢体をこれでもかと見せ付けていた。
リーゼに続くのは紫・花蓮だ。
宮廷魔法使い第一席紫・木蓮の孫娘であり、回復魔法と戦闘面に優れた女性である。少々好戦的でマイペースではあるものの、鍛えられた四肢は長くしなやかで美しい。
そんな魅力的な足を、刺繍のあしらわれた大きなスリットの入った白いドレスから披露して歩く花蓮に息を飲む男性もいた。
そんな花蓮の手にはすでにお皿によそられた食べ物があるのはご愛嬌だろう。
続くのは、雨宮水樹だ。
元剣聖雨宮蔵人の娘であり、雨宮流剣術道場の師範代を務める剣才を持つ少女だ。
日の国の衣装である着物を身につけた彼女は、露出はないが可憐の一言だ。
剣術家ゆえ背筋はピンと伸び、凛とした雰囲気もあるが、スカイ王国ではあまりいない黒髪が、花柄の着物によく映えていた。
そして、本日一番視線を集めていると言ってもいいのはアリシア・ウォーカーだった。
姉と同じく白いドレスを身につけながらも、その印象はまるで違う。
姉が美人なら、妹はかわいらしいの一言だ。
ふわりとしたスカートのドレスが、アリシアのかわいらしさを引き立てている。
また、彼女は以前王都を襲おうとした竜の子供と懇意にしていることが有名だ。
子竜に乗って空を飛ぶアグレッシブな姿は、王都に住む者なら知らない者のほうが少ない。
ある意味、サム以上に戦力を持っていると警戒されているのだが、本人は友達と親しくしている程度でしかない。
心優しいアリシアは、子竜だけではなく親である灼熱竜にも気に入られているのだ。万が一、彼女になにかあれば王都は壊滅するだろう、と密かに噂されている。
そして、離れた場所にいるものの、王女ステラ・アイル・スカイもサムの婚約者である。
王族のみに許された濃い青色のドレスを身に纏ったステラは、白い肌と白い髪と相まって非常に幻想的な美しさを誇っていた。
これには、普段から彼女の陰口を叩いていた貴族たちも、見惚れてしまうほどだった。中には、彼女を悪くいうのではなく、ごまをすってでもお近づきになっていればよかったと悔いる男性さえいる。
そんな美女美少女から一心に愛されているのが、サミェエル・シャイトなのだ。
羨望と嫉妬の視線が集まるのも無理はない。
女性は、サムを物欲しそうに。男性は、サムに羨む視線を向けていたのだった。




