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103「マニオンは慌てます」





「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ!」


 リーディル子爵領にて、マニオン・ラインバッハは普段の彼なら言わないような言葉を吐きながら魔物を刈り続けていた。


「今日の旦那は荒々しいな!」

「だがそれがいい!」

「お世話になっています!」


 マニオンに荒ぶる姿に感嘆しているのは、モヒカン三兄弟だ。

 彼らはマニオンに舎弟を断られてしまったが、しつこく何度もお願いにくるので倒したモンスターの処理要員として雇うことにした。

 なぜか「旦那」と呼ばれだしたが、彼らの理由はよくわかっていない。


「……まさか兄さんに第一子が生まれて改めて贈り物を送ったと思ったら、続けて子供が生まれるなんて! もう少し時間があると思ったのに! 僕がここから離れることはできないし!」


 マニオンはサムと再会してから、生まれてくる子供たちへと大きなぬいぐるみをプレゼントしていた。

 ただ、それとは別にサムとリーゼの間に生まれた子のお祝いを送っていたのだ。

 しかし、時間を少しおいてまさか第二子、第三子、第四子、第五子、第六子が立て続けに生まれるとは想像もしていなかった。

 できれば、サムに直接届けたいのだが、リーディル子爵領では春になってモンスターが活発に動き始めていた。

 冒険者、子爵家の兵士の数が足りていないため、マニオンにギルドから大きな期待がされていた。

 すでにいくつも領地の危機を食い止めており、領地としても冒険者ギルドとしてもマニオンは絶対的な存在だ。

 領主はマニオンに直接礼を言いたいと言っているが、マニオンはいくら成長してかつての面影ないとはいえ、何の面下げて会うことができるとかと思っているので拒んでいる。

 ギルドにも、事情があって会えないと伝えてもらっている。

 領主からは、「君が何者であっても、過去に何をしていても、感謝の気持ちを忘れることはしない」と言われているが、それでも会えない。


(……なぜこんなにもモンスターが多い? 春になれば冬眠していたモンスターや、腹を空かせたモンスター、暖かくなってテンションが上がったモンスターが暴れ出すことはわかっているけど、それでも数が多すぎる)


 神剣を使ってすべてを吹き飛ばしてしまいたいが、それだけでは終わらない気がする。

 力を持て余しているわけではないが、わざわざ神剣を抜くほどではない。

 ただ数が多いので時間がかかるだけであり、マニオンは一度としてモンスターを背後にいかせていない。

 いくら天使となっていても、疲れはある。

 一日戦い続けても限界が来ることはないが、まだ未熟であるため、精神的に辛い。


「……ふう。とりあえず、片付きました。いつも通り、お願いします」

「へい!」

「わかったぜ!」

「お世話になります!」


 モンスターを倒した数は重要ではない。

 最低限、魔石を回収して、食えるモンスターや素材として希少なモンスターの選別をする必要がある。

 モンスターと一緒に狩った魔物の中には食料として好ましいものも何体かいた。

 すべてを回収できないので、モンスターの餌にならないよう燃やしてしまう必要があるが、それでも回収チームも離れた場所で待機しているので呼ぶ必要があった。


(ヴァルレイン様も、僕も、モンスターに影響を当てることはできない。仮にできたとしても、する必要はない。特にヴァルレイン様はこの世界を気に入っているのだから、害になることはしない。なら、戦神か? いや、ヴァルレイン様から聞いた限りちまちまとしたことをする神ではないはず。……なら、偶然か)


 答えは出ない。


(――何かから逃げているような気がしないわけではないけど、何も感じない。やはり、気のせい、かな)


 マニオンは返り血で赤くなった衣服を脱ぐと、モンスターたちがやってきた遠くを見て、しばらくして、背を向けた。






 シリアス先輩「おや? おやおやおやおや?」


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