98「アイリーンの日記です」⑤
――晴れ
シャバの空気はうまい!
王妃をボコした罪で投獄されたものの、国王陛下の鶴の一声で無罪放免!
陛下に「よくぞあの毒婦をボコボコにしてくれたのである!」と感謝されてしまったわ。さすが悪役令嬢よね! 陛下、いえ、お父様と呼んでと言われちゃったわ。これでこの国での生活は安泰よね。
――雨
と、思っていた時期が私にもありました。
毎日毎日、暗殺者暗殺者暗殺者! しつこい!
母から教わった魔法の訓練を一度も欠かしたことのない私に裏社会でしか生きることができない雑魚が勝てるわけがないでしょう!
悪役令嬢として華麗に成敗してあげたけど、お母様に「ひぃぅ」と怯えられたわ。
――解せぬ。
――曇り。
王妃は顔を合わせる度に殺意のこもった視線を向けてくるが実害はないので無視無視。
テイリー、いえ、夫といいましょう。夫の腹違いの王子王女たちから、自分たちの陣営に加われと上から目線で言われる日々に飽き飽きしてきた。
母なら力で解決するだろうと思い、調子にのったボンボンどもに拳で語り合った。一方的だったけど。
――晴れ!
……国外追放決定!
やっちった!
――晴れ。
お父様は庇ってくれていたけれど、私の小さなミスにこれ幸いと王妃が畳み掛けてきたせいで負けた。
温情としてお腹にいる子を産んで、体調を整えてから国外追放となるようだ。
よくわからない温情などいらぬ! と、言おうと思ったのだけど、夫が泣いてお願いするので了承する。
――晴れ。
無事、出産。ちょっと日記をサボっちゃった!
出産って大変ね。
私と兄を産んでくれた母に改めて感謝する。
可愛い娘には綾音とつけたわ。母と同じ名前。母のような強く逞しい女性に育ってほしい。
――曇り。
時間はかかったが、テイリーとお母様と娘の綾音と共に生まれ育った国に戻ってきた。
母の知識で良き領地となっていた兄と久しぶりの再会。
お互いにいろいろ言いたいことはあるが、とりあえずハイタッチした。
元気が一番!
――晴れ。
兄の領地を我が国とする!
仕事をしたくないしたくないと我がままな兄に変わり、領地運営を手助けしてあげた。
兄は母に似て脳筋で素直なのであまり周囲の悪徳貴族と駆け引きができていない。
そこで悪役令嬢の私の出番だ。
女同士のどろっどろの争いに比べたら、腹黒なおっさんなどぬるいぬるい!
兄が仕事を奪われたと言っているが、兄はその規格外な力を持ってして領地を守ることに向いている。
……どうして木の棒で鉄の鎧を真っ二つにできるのよ。いろいろおかしいでしょう。
ということで、私は兄の領地で国を造ることにした!
――雨。
国の名前が決まらない。私も兄も形から入る人間なので、まず国名を決めなければ何もできなかった。
ただし、この間に裏工作はしておく。夫の故郷と連絡を取り、国王から建国したら国として認めてもらえるようにお願いした。その対価として、共にこの祖国を潰すと決めた。よくよく考えたら、こんな国いらねぇ! 母を使い潰した国は早く滅ぶべきだ。民も喜ぶはずだだって、我が領地以外は民が死ぬほど苦しんでいるもの。
お父様としても支援してもらって頭の上がらない王妃の影響のない土地がほしいのでしょうね。そして、いずれ――ね。
え? テイリー? 夫なら、領民と一緒に雨の中、豊作祈願の踊りをしているわ。とても人気よ!
――晴れ。
国の名前が決まった。きっとこの日記を母が読むだろうからひ・み・つ。
後世にまでこの国が残っていることを願う。
まあ、国なんていつかどこかで誰かに滅ぼされるものだから。
でも、母が戻ってくることができる国を用意したかった。
本当にそれだけ。
――晴れ。
国とったどぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!
――曇り。
ということで、私は女王になりました。
小さな小国だけど、母の血が後世にまで残っていけばいいと思う。
兄は子沢山。私も子沢山。
やったね! 母の子孫が増えたよ!
ついでに、私とテイリーが代々受け継がれてきた技術をさらに改良し、昇華した「王家のテク」を受け継がせておく。
これにより、子孫繁栄間違いなし!
――追記。
三十過ぎた兄が、今も変わらず若いメイドにばぶばぶしている姿を目撃してしまった。
とんでもねえ性癖だった。
テイリーのことを散々変態と言ったが、どっちもどっちだろう!
これにてアイリーンの日記は終わりです。
一応、補足しておくと、アイリーンは口数の少ない女性です。中身が割と愉快です。
そして後半重要な情報もちらほら。
以後、アイリーンさんは女王として国を広げるのではなく、民を幸せにすることを考えて善政を敷いていきます。国力をつけ、周辺諸国と渡り合いますが、少しずつ腐敗していき分裂。
アイリーンとルーシェルの直径子孫が大暴れして新たな国を建国。
そして魔王レプシー・ダニエルに滅ぼされて、異世界から召喚された月白龍太郎と共に戦い封印。スカイ王国建国となります。




