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97「アイリーンの日記です」④




 ――晴れ。空が美しい。

 テイリーは変態じゃなかった。私の拳を受け止めてくれる、偉大な人だった。

 兄はテイリーに向かって「これが義弟になるのぉ?」とか言いやがったので、ボディに良い感じ一撃を入れておいた。

 母に習ったのだ。「顔じゃなくてボディーを狙いなさい」と。

 おそらく他人の中の他人であるおっさんが「……本当にあれでいいのぉ?」と聞いてきたので笑顔で返事をしておいた。仮にも王女に、なんて馴れ馴れしいおっさんだ。

 母だけが、テイリーと話をして「モアイを幸せにできるんでしょうねぇ?」と覚悟を聞いてくれたと後で聞かされた。もしかして、私のことに気づいているんじゃ、と期待していたのだけど、先ほど「モアイって良いところのお嬢さんだったのねー」と言われた。

 お前のところのお嬢さんだよ!」



 ――曇り。曇っていても空が素敵だ。

 祝! メイドとイケオジ騎士の結婚式が行われた!

 早かったのは母が勇者の権力という何者にも抗えないパワーと使ったからだ。

 しかし、ずいぶん性急だなと疑問に思っていると「いつ死ぬかわからないからね」と縁起でもねえこと言ってくださりやがりました。

 メイド、幸せになってね! 退職金はたっぷりあげるわ!

 え? 退職しない? 夫ともどもよろしくお願いします?

 ――メイドの笑顔が滲んで見ないじゃない。ありがとう。



 ――雨。

「いつ死ぬかわからないからね」と縁起でもないことを言った母が、早々にご自分でフラグ回収してしまった。

 許せぬ、叔母さまめ。和解の道はあっただろうに、いつまでも昔の男のことを引きずりおって! この悪役令嬢にして、お母様の肩身の鎧を身につけた暗黒騎士アイリーンが相手だ!

 って、まあ、勝てるはずがないんだけどね。


 ちょ、ま、なんか母が復活した!

 女神ってなに!? あ、天使の母親が女神ってことで正解ってこと!?



 ――雨。

 叔母さましつけぇえええええええええええええええええええ!

 死んだのに復活しやがった! 魔王ってなんだよ! お前、やはり魔族と通じていたんだな!

 しかも母を封印しやがった! なんか難しいこと言っているけど、知らないから!


 いくぞ、兄よ! 私に続け!

 再戦だ!


 ――うん。負けた。

 兄のお母様大好きスラッシュによって叔母さまの邪悪な首が宙を待ったけど、なんかくっついた。普通に怖い。

 勝てないと分かったので、私のすべての呪いの感情を込めて罵りまくってっやったわ! さすがの叔母さまも顔を引き攣らせていたわね。ざまぁ!



 ――晴れ。ま、これも人生ってことで。

 兄が領主になった。そして、私が予定を繰り上げてテイリーと結婚し、隣国に嫁ぐことになった。今日から私はアイリーン・スカイ、か。悪くないわね。

 現在の国王は無駄な抵抗をしているが、そのうち叔母さまに引き摺り下ろされるか傀儡にされるかのどちらかだろう。

 私たちは、母が殺されたあとの敵討ちがよろしくなかったようで、この地から出て行けだそうだ。

 兄も私も万々歳! 誰がこんな腐ったところにいたいものか!

 叔母さまもよく聞け! 魔族と和平がどうこう言っているが、そんなの千年以上は無理だね! 現在進行形で戦っている同士が急に手を取り合って笑えるわけがねーだろ! そんなことできるなら母がとっくにやってるわ! できないから戦ってんだよ!

 ばーか! ぶーす! いーきーおーくーれー!



 ――晴れ。

 はい、というわけで隣国でやらかしました。

 テイリーと結婚し、初夜を迎え、私が無事に勝利したところまではよかった。

 義理の母は良い方だし、うまくやっていけそうな予感しかしない。


 しかし、問題もあった。

 新婚生活を楽しんでいると、無駄に着飾ったおばさんが甲高い奇声をあげながら屋敷の中に突撃してきたのだ。

 耳がきーん、となったわね。

 とりあえず不審者なので、鳩尾に拳を叩き込んでおいた。

 だけど、それが大問題だった。

 おばさん、王妃だった。

 やべ、と思ったので馬乗りになって「不審者こわーい!」と叫んで追撃した。殺したら誤魔化せないかな?


 ……誤魔化せなかった私は牢屋の中で日記を書いている。

 ……きっとこれが母が言っていた悪役令嬢でしょう?






 綾音っち(読)「あ、悪役令嬢といえなくはないけれど、なんか違う! ていうか、続きが気になって読むのをやめられない!」


「おっさん治癒士と愛娘の辺境ライフ」最新コミック15巻(電子版)(紙)が発売となりました!

 ぜひお読みいただけますと幸です!

 何卒よろしくお願いいたします!

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ステゴロって書いて話し合いとか、そんな世界やな。 とりあえず、拳王様は辞めなさい。
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