75「綾音っちが遭遇しました」③
「――で、この不気味な赤ちゃんもどきのジジィは何をしにきたの?」
「酷い言い草でちゅねぇ」
「今のウォーカー伯爵家は変態禁止だから、さっさと出ていってくれる?」
「ならボクちんは問題ないでち。あ、でも、友也ちんがいるのは問題ないのでちゅか?」
「こいつは変態を超越した変態だから結界が作用しないのよ」
「そうでちゅか。ちかたがありまちぇんね」
「……なぜ急に僕がディスられているんでしょうかね!?」
綾音はロバートを椅子に座らせた。
外見が赤ん坊でも変態を抱っこする趣味はないのだ。
「で、妖怪ばぶばぶ王は何をしにきたのよ?」
「もちろん、サムちんのベイビーたちが生まれたので」
「お祝いに来たのね」
「――一緒にばぶばぶするために来たんでちゅ」
「帰れっ!」
想定外すぎる返答にキレた綾音がロバートの襟首を掴んで振りかぶる。
メイドがそっと窓を開けた。
慌てたのは友也だ。
「いやいやいやいやいや、さすがに、さすがにサムの祖父ですし、スカイ王国の前王ですからね! 気持ちはわかりますけど、投げちゃダメです!」
「……あんた、ひ孫と一緒にばぶばぶする気持ちがわかるの? さすが変態大魔王ね」
ドン引きする綾音と、「友也ちん」と同志を見つけた顔をするロバートに友也が叫んだ。
「ばぶばぶの気持ちではないですからね! 綾音さんがお怒りになる方の気持ちがわかるって言ったんです!」
「紛らわしいわね」
「紛らわちいでちゅね」
「……こ、この野郎、自分たちの勘違いなのに」
さすがにロバートを投げるのはまずいと理解した綾音が、ため息をつきながら小さな赤子に擬態した老人を椅子に戻す。
メイドが舌打ちをして窓をしめた。
「あんたも、嘘でもいいからひ孫が生まれたことを祝いにきたと言いなさいよ」
「――無理でちゅね」
「なんで!?」
「ボクちんはばぶばぶに誇りとプライドを持っているでちゅ。だから、嘘はちゅけまちぇん。誰になんと言おうと、ボクちんは言うでちゅ。ひ孫とばぶばぶちゅる、と!」
「――な、なんて澄んだ瞳をしているの。どうやら悪意はないみたいね。あんたみたいな純粋な目をした奴が邪なんでことはないわ」
「ちんぢてくれまちたか」
「ええ。信じるわ」
「いやいやいやいやいや、綾音くん! 君の目は節穴ですか! ロバート殿の目は素人がとんこつラーメンのつゆを作ろうとして失敗したみたいに濁っているじゃないですか!」
「……その例えはわかりまちぇんが、褒められているのは理解できまちゅ」
「ほめてねぇえよ! ちょっと、サム! あなた綾音くんを探しに行って、どこいったんですか! 早く来てぇ!」
友也の悲鳴はウォーカー伯爵家に響いた。
――お昼寝中の赤子たちは誰一人として起きなかった。
シリアス先輩「これが先祖と子孫かぁ。シリアスだろぉ!」




