74「綾音っちが遭遇しました」②
「ちょ、大変大変大変変態変態変態変態変態変態変態っ! あ、いた、変態っ!」
喋る謎の赤ん坊を拾った日比谷綾音は、食堂で紅茶を飲んでいる遠藤友也を見つけた。
「……途中から変態になっていますし、僕のことをついに変態と呼んじゃったし。悲しいです」
「そんなことはどうでもいいのよ! それよりも、赤ちゃんの変なの拾ったんだけど! どこの変態の子!?」
ずいっ、と抱き抱えていた赤ん坊を差し出した。
友也は赤ん坊と目を合わせ、むせた。
「げほっ、ごほっ、おえっ」
「汚いわねぇ」
「汚いでちゅねぇ」
綾音と赤子がハモった。
「……し、失礼。ええ、間違いなく変な赤ちゃんです。というかこの方は別に赤ちゃんではありません。赤ちゃんに擬態しているナニかです」
「ひえっ」
「一応、正体を言っておくと、彼はロバート・アイル・スカイ。クライド・アイル・スカイ国王陛下のお父上です」
「――は?」
「今でこそ、こんなんですが、かつては冷酷な氷の王として名高い方でした」
「――――は?」
「さらに言うと、老人のはずですがエヴァンジェリンの呪いによって肉体を赤ん坊にしています」
「――――――は?」
「リーゼくんたちとあまり歳の変わらないメイドに手を出して、赤ん坊がいます」
「――――――――は?」
「そんな娘と一緒に元気な赤ちゃんライフを送っています」
「――――――――――は?」
「ちなみに、ばぶばぶ王です」
「はぁああああああああああああああああああああああああああ!?」
綾音は絶叫した。
一応は赤ん坊だと思い大事に抱えていたのに、まさか元老人とは思わなかった。
しかもクライドの父親であることにも驚きだ。
あと、ばぶばぶってなんだ、と頭を抱えたくなった。
「酷な話ではありますが、彼はスカイ王家直系の人間。つまり、綾音くん、君の子孫です」
「やめてぇえええええええええええええええええええええええ!」
まさに悲鳴のような絶叫だった。
食堂に控えていたメイドが「おいたわしい、綾音っち様」とハンカチで目元を拭う。
「叫んでも事実は変わりません。日比谷綾音くん、あなたの子孫はビンビンでばぶばぶでわからせという性癖を持つ困ったちゃんです」
「待って、お願い、待って。この現実は辛い。ビンビン陛下だけでも心にクルのに、わからせ殿下まで現れて辛いの。そこに、ばぶばぶ王が登場とか、壊れちゃう、私の心壊れちゃう」
「元気出ちゅでち、綾音っち」
「……気安く綾音っちって呼ばないでくれる?」
慰めるようにジェームスが綾音の腕をぽんぽんと叩くが、綾音はお気に召さなかったようだ。
「とりあえず、その舐めた姿を戻しなさいよ」
「無理でちゅね。女神エヴァンジェリンちゃまに祝福していただいて手に入れた体でちから普通に成長するしかありまちぇーん」
「……この野郎、放り投げるぞ!」
「一応、ボクちん、サムちんのじいじなんですけど」
「……祖父のひとりがカリアン様に対して、もうひとりがばぶばぶジジィとか、サムかわいそう!」
「ふふふ、でちゅが、クライドちんがビンビンで、ロイグちんがわからせで、ボクちんがばぶばぶであるのでちゅから、夜の魔王と名高いサムちんの性癖はきっとどりゃーえぐいものでちゅよ」
「そんなわけあるか! サムは普通よ! ――ふつう? 普通かしら? うーん、普通、普通ってなに?」
「……そこは最後まで普通って言い切ってあげてくださいよ」
「最後まで普通と言ってあげてほしいでちょ」
根が正直な綾音は、サムを「普通」と言い切ることができなかった。




