72「出産祝いです」②
サムが友也の気遣いに感謝を告げると、「さて」と話を帰るようにテーブルの下から包みを出した。
「それは?」
「シャルロッテくんが生まれた時と同じように女神ヴァルレインから出産祝いが届きました」
「気遣いぃ! ありがとうだけど、一応、敵だよ!?」
「憎みきれないのが厄介ですよね」
「本当だよ! もともと戦神との戦いの前に介入してきた神だからそこまで恨みはないのに、この世界の神になりたいとか言い出したから戦う羽目になったってことで、ヴァルレインに何かされたわけじゃないんだよなぁ」
シューレン魔法国を支配していた魔法王ルルカス・シューレンに使徒としての力を与えることで、サムたちと敵対はしている。
マニオン・ラインバッハも強敵に育ててしまったなど面倒なことはしてくれたが、特別恨みはない。
「おそらくですが、真正面から堂々と戦うことが決まっているのであちらも細々としたことを気にせず、神に挑む戦士として好印象を抱いているのかもしれませんね」
「はぁ。お礼を言わないといけない人が、いや、神か。いつお礼を言えばいいのか。いずれ戦う時に、先日はお気遣いどうもありがとうございました、とかいうの?」
「シュールですねぇ」
「本当だよ」
戦いの割には緊張感がない。
「じゃあ、とりあえず、また別のところで荷物を開けようか。一応ね」
「サム当ての荷物なので悪いと思ったのですが、先に開けておきました」
「――さすが、仕事のできる魔王だね」
「ははは、それほどでもありませんよ。中身は、上質なタオルと子供用の衣類、そしてやはり丁寧なお祝いの手紙とワインでした」
「もう気遣いの女神に名前変えて欲しい!」
「ですよねぇ」
ヴァルレインがこの世界に女神であるエヴァンジェリンを排除して唯一の神になると思わなければ、きっと良い関係を築けただろうと思う。
それだけに残念だ。
「僕なりに調べてみましたが、問題はないと思います。一応、綾音さんに呪いや、神の力が作用していないか調べてもらいましょう」
「そうだね。綾音さんはたしか、リーゼのところにいたはずだからちょっと呼んでくるね」
「わかりました。じゃあ、僕は――すみません、軽食をいただいてもいいですか?」
近くにいるメイドに友也が声をかけると、メイドは恭しく礼をした。
「もちろんです。少しお待ちください。ラッキースケベ軽食をご用意させていただきます」
「――ラッキースケベ軽食ってなに!? 普通の軽食をお願いします!」
「かしこまりました。普通のラッキースケベ軽食ですね」
「なんで余計な単語がくっついているんですかねぇ!」
「し、失礼しました。ラッキースケベですね」
「ちげえよ! 軽食の方を求めているのに、なんで軽食を消しちゃうの? それじゃあただのラッキースケベじゃん!」
メイドと戯れる友也を見送りながら、サムは食堂を出てリーゼのもとに向かった。




