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5「エミル殿下の危機です」②





 エミル付きのメイドシューリーは、イグナーツ公爵家の血縁者であり、ジュラ公爵家で行儀見習いをした才女だ。

 感情を表に出すことが苦手ながら、仕事は丁寧かつ素早い。主人の望むことを的確にしてくれる優れたメイドだった。

 コーデリアのお気に入りのひとりであり、母親ながら「エミルにはシューリーがもったいない」と言わしめるほどである。

 しかし、他ならぬシューリーの熱い想いでエミルの婚約者となったのだ。


 シューリーは感情を表に出すのが苦手ではるが、内面では感情がしっかりある。何年も面倒を見ていたエミルに情が湧いたのか、それとももっと他の何かがあるのか不明だが、血筋、資質、人格的にも王家と縁者になることに申し分ないとされた。

 むしろ、エミルが相手で申し訳ない、とクライドでさえ思っている。


 もちろん、エミルには他の想い人がいるので婚約を拒否している最中だ。

 しかし、シューリーはそんなのお構いなしにぐいぐいくる。

 ぐいぐい来た挙句、普段の無表情はどこにと言わんばかりの妖艶な表情をしてエミルから「色々」搾り取るのだ。


 さんなシューリーに、クリー・イグナーツが「わたくしの技術を教えましょう」と何やら恐ろしいことをレクチャーし、通りすがりのメイドが「ぼっちゃまのために鍛えたこのテクを伝授しましょう」とさらに強化してしまった。


 このままでは待っているのは、尊敬する叔父ロイグ・アイル・スカイの二の舞である。

 だが、ロイグは相手が悪すぎた。スカイ王国の女帝と言われるほどのイーディス・ジュラ公爵だ。対して、シューリーは傑物だがイーディスほどではないだろう。


 勝てる、と思った。

 しかし、そんな考えを抱くことすらシューリーの手のひらの上であったと知るのは戦いを挑んでからしばらくたった後だった。


「兄上、ご慈悲を!」

「慈悲も何も、兄として慈悲があるからこそ言わせてもらおう。――これ以上、ウォーカー伯爵家、サム殿、姉上たちに迷惑をかけるな」

「……そんな馬鹿な! 僕は迷惑など!」

「かけまくりだろう! 竜姉妹は気にしないとおっしゃってくださるが……まあ、そもそも彼女たちの視界の中にさえ入れてないからそれ以前の問題なんだろうが、そろそろ温厚な方々にも限界が来るだろう」


 実際、ウォーカー伯爵家から、やんわりとだが「ほどほどに」と書面で抗議がきた。

 途中でペンをへし折った形跡がそのまま残された手紙に、さすがに「あ、これはマジで怒っている!」とクライドすら震えた。

 一時期は、コーデリアがナタを用意し、「王子だからとなんでも許されていると思っている愚息の愚息を切り落としてくれる!」と激昂していたコーデリアを総動員で宥めたのは言うまでもない。

 そんなことが起きているとは知らず、エミルはウォーカー家に潜入する日々だ。


「女神エヴァンジェリン様からも、そろそろいい加減にしないと呪う、と通告が来ている」

「……そ、そんな」

「だが、皆がメルシー殿への執着を捨てれば許してくださると思っている。その一環として、シューレン魔法国で頭を冷やしてこい」

「せ、せめてシューリーをこの国において、僕だけと言う選択肢は」

「――ない」

「おのれぇえええええええええええええええええええ!」


 兄の目が本気であると確信したエミルが、脱走を試みた。

 窓を突き破って逃げようとするが、窓はびくともしなかった。


「残念だが、こんなこともあろうかと父上自ら結界を厳重に張ってくださった。この部屋から出ることはできない」


 セドリックが目を伏せた。

 悲しげであり、どこか怒りも感じられた。


「せめて笑顔で送り出したかったが、仕方がない。――入ってくれ」

「――はい」


 部屋の中に現れたのは、メイドにしてエミルの婚約者のシューリーだった。


「支度はできているか?」

「はい。すでに。いつでも出発できます」

「すまないな、こんな弟で。愛想を尽かさないでやってくれると助かる」

「いいえ、好きでやっていることですので」

「感謝する。私のことは兄と思い、いつでも頼ってくれ」

「ありがとうございます」


 セドリックはシューリーにゆっくり頷くと、エミルに別れの言葉をかけた。


「また一ヶ月後に会おう。エミルが立派になることを祈っている」

「兄上? 兄上? ちょ、兄上?」


 セドリックが部屋から出て行くと、お辞儀をしていたシューリーが顔をあげた。


「……エミル様が抵抗することは事前にわかっていましたので、意識を奪った上でシューレン魔法国に参ります」

「意識を奪う?」

「手荒なことはしません。意識を奪うほど、絞ります」

「ひえっ」

「あちらでの日々が楽しみです。私以外のことは考えられないようにしてげますので、お楽しみに」


 エミルが顔を青ざめたが、もう遅い。

 この日、スカイ王国の空にエミル・アイル・スカイの絶叫と嬌声が響いた。


 そして、彼はスカイ王国を旅立ったのだった。






 シリアス先輩「追放されてるのエミル殿下じゃねーか!」

 シリアス先輩(真)「でもきっとパワーアップもなにもしないで帰ってくるんだろうなぁ」


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 また、ピッコマ様にてコミカライズ『この度、公爵家の令嬢の婚約者となりました。しかし、噂では性格が悪く、十歳も年上です。』の連載が始まりました。

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 そろって何卒よろしくお願いいたします(●´ω`●)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
よし 平和!!(オイ)
うーん、わからせられる可能性もあるが、ビンビンが目覚めてツワモノとして帰還してくる可能性もあるよね?
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