3「同盟です」
特にパワーアップしなかったサムが戻ってくると、クライドが悩み、「いっそ、王都から、いや国から」と言い出したので、ゾーイが平手打ちして黙らせた。
王に対して問答無用の張り手に、貴族たちが「ぞ、ゾーイ殿! いくら何でも不敬だ! もっとやれ! 拳でいけ!」と抗議したのは言うまでもない。
「……俺の知っている追放系って、王様やこの国が最後にざまあされているので、お勧めしないというか、俺って追放された経験あるのですでに追放系主人公だったりするんですよね」
ぼそっと、サムが呟く。
クライドが、子供のように目を輝かせて「追放でパワーアップだ!」と喜んでいるので言い出せなかった。
同じく、地球出身の友也は「ですよねぇ。追放されるだけでパワーアップするなら苦労しませんよ」とサムと同意見のようだ。
もっとも、友也も急遽追放すると聞かされたので、止める間もなかった。
むしろ、この結果となり反省してくれればいいと思っていた。
「仮に俺が強くなっても、この国にざまぁしたら意味がないですし、ざまぁできる自信もないですって。何が起きてもビンビンである、って感じで乗り切れちゃう気がする」
かつてのクライド・アイル・スカイならいざしらず、現在のクライド・アイル・スカイならばちっとやそっとなことでは挫けない。
スカイ王国もこの一年にも満たない間に逞しくなった。
よほどのことが起きなければ、ざまあ、はできないだろう。
「ごほん。さて、ここ最近、様々なことが起きた。シューレン魔法国、フォーン小国に関してである。すでにそなたたちにも力を借りた者たちもいる。これから力を借りる者もいるだろう」
クライドは、表情を引き締める。
「すでに全員が知っていることであるが、シューレン魔法国を支配する魔法王は倒された」
あえて誰が倒したとは言わない。
それでも、貴族たちはサムが倒したことはわかっている。
「いずれ紹介する日が来るだろうが、彼の国はグライン・シューレンが王となり、復興を目指している。スカイ王国は同盟を結び、協力をしていく。フォーン国も、同じである。これには、オークニー王国、スノーデン王国も同じく同盟として名を連ねる」
「――しかし」
グレン侯爵が声を上げた。
「我が国の負担があまりにも大きい」
「そうであるな。幸いにして、物資に関しては商人オーネィ・ショ・タスキーが投資として扱ってくれる。人材も魔族から、戦力は我が国から、そのようになっている」
「では、魔族の国々とも」
「無論、同盟となる」
以前から、魔族たちとの同盟の話もあった。
魔王ダグラス・エイド、魔王ヴィヴィアン・クラクストンズの国が同盟国となるだろう。
魔族にも大小の国はあるが、一国の王であっても魔王にはひれ伏す。
つまり、魔王こそが魔族では絶対的な「王」なのだ。
そんな魔王が、スカイ王国にいる。
最凶の魔王遠藤友也、獣の王ロボ・スノーデン、フランベルジュ、最古の魔王ヴィヴィアン・クラクストンズ。
そこに、元魔王にして最強の魔王レプシー・ダニエルズ、サミュエル・シャイトがいる。
準魔王ゾーイ・ストックウェル、カルミナ・イーラ。魔族ボーウッド・アットラックもいる。
魔族では無いが、魔王を超えた力を持つ元女神にして元勇者である日比谷綾音。
元神聖ディザイア国枢機卿カリアン・ショーン、モンド・ムンドも魔王級ではないが、魔王と渡り合える力を持つ。
そして、愛の女神エヴァンジェリン・アラヒーもいる。
はっきり言って、スカイ王国の戦力は過剰だ。
大陸東側には、スカイ王国から遠い地にいくつか大小の国がある。
だが、その国々もスカイ王国には関わろうとしない。
自分たちだけで、そっと息をひそめて完結していたいのだ。
スカイ王国も、それらの国を相手にする余裕も暇もない。
「スカイ王国は、現在、大きな節目にいる。我々は、一致団結し、この節目を乗り越えるのである!」
拍手が響く。
「それにより、今回結ばれる同盟を――ビンビン同盟とする!」
貴族たちが、いや、この場にいる全ての者がとりあえず身につけている物や近くにあるものをクライドに向けて全力で投げた。




