115「ラッキースケベです」②
「――はっ」
友也は目を覚ました。
陽の光が差し、眩しさを覚える。
同時に、すぐに顔の上に影が覆った。
「友也! 目覚めたか!」
涙ぐむマクナマラ。
「マクナマラ、さん?」
婚約者であり、サムの叔母でもある彼女が、こんなに不安そうにしている顔を初めてみた気がする。
気配を感じて目だけを動かすと、部屋の中にはマクナマラの父であるカリアン・ショーンもいた。
「みなさん……どうしましたか?」
記憶が確かなら、昨晩はひとりで寝たはずだ。
マクナマラはゾーイとエヴァンジェリンと隠れて一杯やっていたことを知っている。
メリハリは必要であると、苦笑しながら寝たのだ。
「どうかしましたか、じゃない。急にラッキースケベだいしゅきとかふざけた叫び声をあげるから、ついに壊れたのかと思ったぞ!」
「――あ」
「さらにその後に、ラッキーちゅけべだいしゅき! って叫んだんだぞ!? しかも、明け方とは言えシューレン魔法国に轟くような大声で! 襲撃かと思い、誰もが警戒し、クライド・アイル・スカイなどはベッドから落ちて腰を打って、大笑いされていたぞ!」
クライドは、大きな部屋にベッドを運んで、ローガン・イグナーツ、デライト・シナトラ、ジョナサン・ウォーカー、ロイグ・アイル・スカイと男子会を始めたのを覚えている。
学生時代のメンバーで国の外に出たのは久しいようで、若かりし頃を思い出しテンション高めだった。
「今までラッキースケベをしても、ラッキースケベだいしゅきなど叫んだことはなかったので、何かあったのかと思い起こそうと思ったのだが、顔を引っ叩いても、鳩尾に肘を入れてもまるで起きないどころか、ぴくりともしない!」
「……頬と鳩尾が痛いのはそう言う理由なんですね」
「結局、叫んでから三時間目を覚さなかった。何があったと言うんだ?」
友也はマクナマラの手を借りて、上半身を起こす。
カリアンにも目配せをして、夢の中でコンタクトしてきたラッキースケベの意思との話を始めた。
いつもなら、ひとりで抱えてしまうところだが、今回は朗報だ。
喜びを分かち合いたかった。
「驚かずに、聞いてください。――実は、僕にラッキースケベの意思がコンタクトをとってきたのです」
「――は?」
「…………」
マクナマラが変な声を出し、カリアンが口を開く。
「ラッキースケベさんと話をして、知ったのです。本来の一部しかラッキースケベが使えていないせいで、ラッキースケベが暴走していたことを。僕は、ラッキースケベを受け入れ、受け入れたくはありませんでしたけど、受け入れることによってアンラッキースケベが減るのであればと、前向きに進むことにしたんです」
「…………」
「…………」
「僕はラッキースケベを受け入れたことで、ようやくステージに立てました。新しいステージに進むために精進し、ラッキースケベを使いこなせてみせますよ!」
マクナマラの瞳から涙が溢れた。
カリアンもハンカチで目元をそっと拭う。
「あ、あれ?」
マクナマラが嗚咽をこぼす。次第に、鳴き声となった。
しばらくすると、おいおいと泣き始める。
「――私の婚約者の心が死んでしまった! だが、安心しろ。私は見捨てない! 私の寿命が尽きるまで、お前の面倒をみよう!」
「まあ、こんな展開になると思っていましたよ! ちくしょう!」
シリアス先輩「……うん。普通にぶっ壊れたって思うようね! シリアスだ!」




