113「覚醒の時間です、か?」⑥
――――声、少し小さくないですか?
「……え?」
全力で叫んだはずの友也に対し、ラッキースケベの意志は辛口だった。
――私、言いましたよね?
――世界が割れるほどの限界を超えて叫ぶようにと。
――それ、限界ですか?
――まだいけるでしょう?
友也は唇を噛む。
耐えろ。
ここまでしたんだ、耐えるんだ。
自分に必死に言い聞かせた。
――私、友也くんの本気見てみたいなぁ。
――ママに見せてほしいなぁ。
落ち着け、ここで怒ってしまうのはよくない。
どうせ夢の中だ。
どれだけ叫んだとしても、誰かに聞かれるはずはない。
「いいでしょう。物足りないというのなら、応じましょう」
――おおっ。
――さすが魔王遠藤友也です。
「よいしょしてもらう必要はありません。僕は僕だけのために、叫ぶのです」
すう。
大きく息を吸う。
それだけでは駄目だ。
足りない。
もっと。
もっと、もっと。
呼吸を繰り返す。
酸素だけではない。
魔力も吸い込むのだ。
身体に、胸に、肺に、すべての魔力を循環させる。
――さあ!
――叫ぶのです!
「――ラッキーしゅけべ大好ちゅきぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
はぁ、はぁ、と荒い呼吸を吐く。
失敗した。
失敗してしまった。
噛んだ。噛んでしまったのだ。
勢い余って、スケベをしゅけべと言ってしまった。
大失態だ。
もう叫びたくない。
心は後少しで折れそうだった。
三度目は無理だ。
ついに膝をついてしまう。
もう立ち上がれそうもない。
――マーベラス。
「はい?」
――ナイスラッキースケベでした。
――魂の籠った叫び、しかと聞かせていただきました。
――噛んでしまったところが、個人的にポイント高いですね。
「…………ラッキースケベさんがそれでいいのなら、はい、ありがとうございます」
――では、遠藤友也。
――転生者にして、魔王にして、ラッキースケベに愛されし者よ。
――あなたは次のステージへ上がります。
――ですが、慢心はいけません。
――ようやくラッキースケベを加護を受けた者として、スタート地点に立っただけです。
――これからも愛のあるラッキースケベによって、修行をなさい。
「…………」
しねえよ、とは突っ込まない。
ここでご機嫌を損ねるのは悪手だとわかっている。
――あなたならラッキースケベを愛し、愛される者として遥かな高みに登り詰めることができるでしょう。
――精進なさい。
「………………はい」
振り絞るような声で、返事をするのが限界だった。
――では、少し説明をしましょう。
「説明、ですか?」
――ラッキースケベの能力についてです。
「能力もなにもラッキースケベをするだけでは?」
――まず、そこから訂正していきましょう。
――ラッキースケベ体質だけであれば、そうでしょう。
――しかし、あなたはラッキースケベに愛されし者です。
――先ほども言ったでしょう?
「そういえば、そんなことを言っていましたね。情報量と、展開についていけず余裕がありませんでした」
――一番は、己の身を持って少しずつ力を得ていくことが大事です。
――しかし、こうしてコンタクトが取れたのであれば、事前に情報を与えておくのができるラッキースケベです。
「できるラッキースケベってなんだよ」
――先ほども言いましたが、あなたはラッキースケベを使いこなせいません。
――そのせいで暴走している結果、アンラッキースケベが起きている。
――ここまではいいですね」
「はい」
――今回、ステージが上がったことで、アンラッキースケベが減るでしょう。
――完全になくなるには、あなたのラッキースケベ力が上昇するしかありません。
「またなんか新しい力出てきちゃった!」
――いずれあなたがラッキースケベを使いこなせるようになれば、ラッキースケベすら起きなくなるでしょう。
「嬉しい! でもそれはそれとしてラッキースケベとしてどうなんでしょうね!?」
――同時に、ラッキースケベを起こすことができます。
「いや、別にもうお腹いっぱいなので、自分からラッキースケベしようとは思わないですけど」
――そうではありません。
――あなたが、ラッキースケベを起こすのです。
「つまり?」
――あなた以外の誰かと誰かをラッキースケベさせることができるようになるのです。
「なんだってぇええええええええええええええええええええええええ!?」
ラッキースケベ強化週間中です!
残念ですが、未来ではまだ友也くんは「至って」いませんのでご安心を。
シリアス先輩「ラッキースケベが本当の意味で能力化ってシリアスすぎだろ!」
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