107「女神ヴァルレインと管理神です」②
「楔に関しては承知した」
「ありがとうございます」
「代わりに、というつもりはないのだが、管理神の本音が聞きたい」
「私の、本音ですか?」
「管理神」は不思議そうな顔をした。
いつも通りの「彼女」だ。
ヴァルレインのよく知る、姉のように母のように誰にでも接する「管理神」だ。
――なぜか、そんな「彼女」に違和感を覚える。
「管理神の本音だ。何を思い、何をしたいのか、それを聞かせてほしい」
「面白いことを聞きますね、ヴァルレイン」
「彼女」はやはり困った顔をする。
「私は今までもこれからもすべて創造神様のために想い、動きます。その為ならば、なんだってしまう。私は、かつて創造神様に拾っていただいたあの日から、ずっと創造神様のために存在しているのですから」
「そういえば、管理神殿は創造神様に拾われたのであったな」
「はい。か弱い人間であった私を、助け、力を授けてくださいました。今ある全てが創造神様のおかげです」
創造神は、「管理神」にすべてを託し、転生した。
人を生み出しながら愛せなかった創造神が、人として人生を転々としていくのだ。
ヴァルレインには、なぜ愛せない存在にわざわざ転生したのか理解に苦しむ。同時に、愛を知らぬだけで、人を愛していたのではないかとも思えた。
「神も人も複雑か。いや、そう見えるだけで、単純なのかもしれぬがな」
ヴァルレインは、「管理神」を心内を見極めようとしたがやめた。
する必要がない。
する意味もない。
それに、わざわざ深淵を覗き込む趣味もない。
「さて、話が終わったのであれば、眠りにつかせてくれ」
「はい。ごゆるりと」
「そうだ。管理神殿」
「はい?」
「神になってもコミュニケーション能力がない戦闘馬鹿の戦神に言っておけ、あちらの世界はこのヴァルレインがもらった、とな」
「ふふふ、承知しました」
「管理神」は微笑み、ゆっくりと去っていく。
神域に残ったヴァルレインは、ふん、と鼻を鳴らした。
「ついぞ本音を言うことはない、か。まあいい。管理神が何をしようと構わん。どうせ管理神のすることの意味を私たちでは理解できず、また気付けもしないのだからな」
ヴァルレインと「管理神」とでは神としての格が違う。
創造神がいない今、「管理神」こそが絶対的な神であり、ヴァルレインたちを従えているのだ。
ゆえに、たとえ「管理神」が何かを企もうとも、ヴァルレインには逆らいようがない。
同時に、ヴァルレインが知る限り、「管理神」が存在する世界に対して何かをしたこともない。
干渉する時は、創造神の転生だけ。それも世界と友好的に交渉した上で行なっている。
「面白い。私も慕うはずの管理神に、なぜ疑問を思うのか。なぜ疑念を抱くのか。答えが見つからぬのが残念だが、きっと管理神は何かしているのだろう」
黙々と「管理神」として尽くしてきた「彼女」に何か企みがあるのであれば、それはきっと面白いものだ。
ヴァレレインはそう確信し、目を閉じた。
――戦いまであと少し。




