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106「女神ヴァルレインと管理神です」①





 ――神界。




 愛情と戦いの女神ヴァルレインは、戦いに備えて英気を養っていた。


 と、言っても寝ているだけだ。


 いくつか消費した力を急速に回復させている。

 完全な力を取り戻した状態であっても、「あちら」の世界に降りるのには大きく消耗するだろう。


 本来ならば、「あちら」の世界の楔を破壊する必要があるのだが、ヴァルレインに動かせる使徒はマニオンしかいない。

 戦神の使徒は、ヴァルレインの動きを静観しているため、動かない。

 つまり、ヴァルレインは神としては不完全な状態でサミュエル・シャイトたちと戦わなければならないのだ。


 しかし、それも一興である。

 ヴァルレインは強い。

 生まれながら神の力を持ち、世界を統べた経験さえあった。


 人であった全盛期の力は、女神になって比べられないほど強くなった。

 たとえ、力を削られた状態で「あちら」の世界に降臨しても、勇者であり女神である日比谷綾音よりもずっとずっと強い。


 負ける要素などないと疑っていない。

 しかし、相手は人間だ。

 人間は恐ろしい。


 人間は時に奇跡を起こす。

 本来ならば勝てない相手に何度も立ち上がり、限界を越え、奇跡を起こして勝利することがある。

 他ならぬヴァルレインが、人の身で神殺しを経験した。限界を越えて、奇跡を起こし、掴んだ勝利だった。

 その功績から、女神として上位の存在となった。


(――不思議なことだ。人としての感情などとっくに消えて無くなってしまったと思っていたが、まだあるのだな)


 戦いに心を躍らせる日が来るとは思わなかった。

 女神となり、暇を持て余し、ヴァルレインは枯れていた。

 しかし、再び潤いを感じているのだ。


(――戦神に煽られたとはいえ、届かぬ世界の人間と無理やり戦おうとするのは私らしくはない。これはこれで楽しみではあるので、よしとするが、おそらく)


 思考を途中でやめた。


 ヴァルレインだけの神域に、当たり前のように入ってくる神がいたからだ。


「お休み中に申し訳ございません」

「申し訳ないと思うのなら、来ないで欲しいのだがな――管理神殿」


 ヴァルレインが「管理神」と呼ぶのは彼女だけ。

 自分を始め、他の神々も管理神ではるが、本当の意味で管理神であるのはあくまでも彼女だけなのだ。


「お前はよく姿を変えるのが好きだな。以前会った時には麗しい美女で、今日は幼い子か。本来の姿はどのような姿をしているのだろうな?」

「ふふふ、秘密です。私の姿を見てもよいのは創造神様だけ。もっとも、私がどのような姿をしていても、創造神様には関係ありませんが」

「左様か。それで、まさかお前が戦いをやめろとくだらぬことを言いにきたわけではあるまい?」

「はい。私は管理神であり、世界を神を管理しますが、それだけです。私の全ての行動理由は創造神様のためです。その邪魔をしなければ、私は何も言いません。止めません」

「なるほど。私がこれから攻める世界には創造神様がおられるようだが?」

「特に問題はありません。創造神様は創造神様であって、ギュンター・イグナーツ様は創造神様ではありません」

「その割には、かの男が神界に戻ってきた時にはひれ伏したようだが?」

「あの時は創造神様でしたので」

「よくわからぬな」

「私だけがわかればよろしいのです」

「やはりわからん」


 ヴァルレインは「彼女」の言葉を昔から理解できないことがある。

 ただ恩義もあった。

 ヴァルレインを女神として拾ってくれたのは、他ならぬ「管理神」である「彼女」だ。

「彼女」の邪魔になることはしたくない。


「参考までに聞いておくが、私は「あちら」の世界に挑む」

「どうぞ」

「サミュエル・シャイトを殺す」

「構いません」

「他の人間も殺す」

「問題ありません」

「その過程で必要があればギュンター・イグナーツも殺す」

「特に問題ありません」

「……ならいい」


 結局、「彼女」が何をしにきたのかわからない。

 ヴァルレインは再び眠りにつこうとする、が、「管理神」が止めた。


「ひとつだけ、お願いがあります」

「聞こう」

「楔を、最低でもひとつだけ楔を破壊してください」

「ほう。なぜだ、と聞いてもよろしいか?」

「はい。戦神ディーオドールは使徒を集めきれませんでした」

「……つまり?」

「彼は、戦は得意ですが、その、コミュニケーションが得意ではないので、言動が少々傲慢のため」

「あー」


 困った顔をする「管理神」に、ヴァルレインも苦笑するしかない。

 ひとりで戦い続けた戦神は、人との接し方がわからないのだ。

 戦う相手に敬意を払い、尊敬さえするが、そうでない相手には雑だ。

 それでも親しくする相手は神にもいるし、気に入った人間には気安いが、そうでない相手には傲慢に振る舞う。

 おそらく本人にはまったく自覚がないだろうが。


「まったく、彼らしいといえばらしいのですけどね」

「戦神の分まで楔を破壊しろと、そういうことか?」

「はい。お願いできますか?」






 戦神さんはコミュニケーション能力に少々の問題ありdeath!


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― 新着の感想 ―
どいつもこいつもあらら(呪)
少々じゃねーだろ?戦神のコミニケーション能力って、要は類人猿が棍棒もってウホウホ言いながら略奪していて、殴り返した相手にだけ目を合わせる程度ってことなのでは?
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